カテゴリーアーカイブ:社会の見方

経済停滞・高齢化と終身雇用の変貌

2026年7月13日   岡本全勝

かつての日本の雇用慣行は、「年功賃金、終身雇用、企業別組合」と言われていましたが、私は、「新卒一括採用、人事課による配属決定、年功人事管理、終身雇用」が特徴だったと考えています。日本の雇用慣行は、いわゆるジョブ型雇用に対するメンバーシップ型雇用です。もっとも、日本だけだそうですが。

近年、それが代わりつつあります。
早期転職と中途採用の増加は、新卒一括採用をくずし、終身雇用も揺るがしています。
人事課による配属決定は、従業員の不満を招いています。年功人事管理は、実はかつても能力と業績によって差をつけていたのですが、なるべくそれを目立たさないようにしていました。しかし、良くできる社員から管理職を選抜する方法では、真の管理職を養成しないことになり、問題を生じています。「みんな仲良く働きましょう」の班長には向いているのですが、何かを切り捨てる厳しい判断はできないのです。

そして、終身雇用も、不況期にリストラという名の首切りが行われ、崩れてしまいました。そして非正規労働者の増加は、新卒一括採用・終身雇用を一部の人に限定してしまいました。
それに生き残った従業員には、年功人事管理と終身雇用はまだ適用されているようですが、以前とは形が異なっています。
かつては、競争に勝ち残った人が幹部になり、なれなかった人は関係企業や団体に引き取ってもらい、そこでそれなりの処遇を受けました。また、企業が成長している時代は、内部での組織の拡大と関係企業などの増加が、それを引き受けました。しかし成長が止まり、さらに縮小する時代になると、引き受けてもらえなくなりました。
そして、雇用の65歳までの延長は、年長者のみんなを同じような処遇にできなくなりました。「なるべく平等に」が成り立たなくなったのです。また、「経験を積むほど技能が上がり、職位を上げて、報酬も上げるという」年功人事も、できなくなりました。

「年功賃金、終身雇用、企業別組合」と「新卒一括採用、人事課による配属決定、年功人事管理、終身雇用」は、経済成長期に形成されたのですが、その時期にのみ成り立った慣行でしょう。経済成長が止まり、年長者も抱えるには、年功の処遇はできません。組織も生き残りをかけて厳しい競争に生き残るために、管理職や幹部を意識的に養成する必要が出てきました。ここでも、年功処遇は難しくなります。

こうしてみると、かつての企業や役所の職場は「疑似ムラ」であったことがよくわかります。生活共同体です。それは良い働きをしたのですが、企業が経営を維持できなくなると、企業が機能的組織であることが顕現するのです。
それはまた、共同体に面倒を見てもらえる反面、同調を強いられ、共同体を抜けることも難しかった「集団主義」から、個人の才覚で職を代えることができる、しかしそれは自己責任である「個人主義」への転換でもあります。

両論併記は客観的な報道か

2026年7月13日   岡本全勝

6月20日の朝日新聞オピニオン欄「「係争中」がもたらすもの」から。
・・・「係争中」。その一言が、表現や報道の現場に萎縮と自粛をもたらすことがある。提訴が言論を封じる手段になる場合も。裁判で争われているということは、議論を封印する理由になるのか・・・

高田昌幸・専修大特任教授の「後ろから弾、恐れず真相へ」
・・・見解が対立する問題を取り上げる際、双方の言い分を両論併記する。それが「客観的な」報道だと思われています。しかしそれは記者にとって最も安易な道です。場合によっては一方の訴えに明らかに理があるかもしれないし、両者の主張の間に真実があるかもしれない。それを徹底的に調べる作業を怠り、どちらからも距離を置いた記事は公正な報道とは言えません。
特に、一方が政治家や官庁、大企業の場合、両論併記的な報道では、ジャーナリズムの本務である権力監視を果たせません。水俣病をめぐっては、1959年に熊本大研究班が原因を有機水銀と突き止めた後も、在京メディアは根拠薄弱な非水銀説を「中立的に」併記し続け、国とチッソによる原因確定引き延ばしに結果的に加担しました。
圧倒的な力の不均衡がある対立構造の中では、まずは弱き側の声なき声に謙虚に耳を傾け、調査報道によって真相に迫る。それが報道の本来の責務です。

しかし、調査報道はリスクや困難を伴います。権力は組織防衛のためにあらゆる手段を尽くす。そして企業メディアの記者にとって最も怖いのは、後ろから弾が飛んでくることです。
北海道新聞時代、道警の裏金問題を徹底的に報じました。道警側の「反撃」はすさまじいものでした。事件の取材は拒否の連続。道警の元総務部長からは名誉毀損で訴えられました。
その過程で最もこたえたのは、道新幹部らが道警との関係修復のため元総務部長と秘密裏に交渉し、記事について社内調査すると約束していたことです。道新は取材班による一部記事に非があったとして謝罪し、私は処分を受けました・・・

アメリカの郵便事情

2026年7月12日   岡本全勝

先日書いたとおり、アメリカ・バージニア州(首都ワシントンの隣)まで、書留で書類を送りました。郵便局のホームページだと18日で着くと書いてありますが、「去年の例」では1か月かかりました。今年は次のような経過をたどりました。
5月25日、新高円寺駅前郵便局で投函
5月27日、東京国際郵便局を通過
5月28日、アメリカの国際交換局(USJFKA)へ到着、税関へ

ところが、その後、インターネットで状況を確認しても、まったく動きません。
7月7日、ようやく「到着」と出ました。税関で6週間。といっても、まだ配達はされていません。1か月以上が経っています。内容は紙が2枚で、税関で精密に検査するようなものではありません。郵便物が大量に滞留しているのか、ええかげんな作業なのか・・・。
配達されたのは7月10日でした。

再利用市場3

2026年7月12日   岡本全勝

再利用市場2」の続きになります。6月22日の読売新聞には「リユース店 値付けが勝負…買い取り 販売価格から逆算」が載っていました。

・・・リユース取引が身近になったのは、2013年創業のメルカリなどフリマアプリの影響が大きい。スマートフォン一つで自宅から売買でき、中古品の相場も一目で分かるようになった。
ただ、ビジネスモデルには違いがある。メルカリは個人と個人の取引場所を提供する仲介業者であることだ。店舗型の事業者が販売額と買い取り額の差益で稼ぐのに対し、販売手数料が主な収益となる。在庫を抱えるリスクもない・・・国内の累計出品数は40億点を数え、海外との取引も含め、流通総額は年1・1兆円を超える。衣類やゲームなど身近なものから、子供の工作に使うトイレットペーパーの芯や、草木染用のタマネギの皮なども売りに出され、メルカリ社内には「一番の競合はゴミ箱」という言葉もあるほどだ。

新たな収益を求めた海外進出も増えている。ゲオホールディングス(HD)は「セカンドストリート」を米国や台湾など6か国・地域で出店。海外店は20年度の16店から25年度に148店に増えた。現地での買い取り販売が中心で、世界市場を成長の柱に据える。
日本の中古品は、丁寧に使われて保存状態が良く、本物か偽物かの査定能力も高いため訪日客の人気は高い。「ユーズド・イン・ジャパン」とブランド化している。メルカリは18日、日本の中古品を海外から購入できる「グローバルアプリ」の提供を米国で始めたと発表した。台湾、香港に次ぐ3か所目となる・・・

・・・環境省の調査によると、国内のリユース市場は右肩上がりに拡大しており、2024年に3兆4986億円となった。政府は3月に公表したロードマップで、循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行を加速させるため、30年までに4・6兆円に増やす目標を掲げている。
市場拡大の背景には、廃棄物を減らす環境意識の高まりもあり、ブックオフグループHDの長谷川氏は「リユースに関する教育や接点が増え、若年層を中心にリユースへの抵抗感が薄まった」と指摘する。
成長の余地はまだありそうだ。メルカリの試算では、国内の家庭で1年以上使われていない不用品は90兆5352億円。1人あたり約71・5万円の「隠れ資産」が眠っている計算だ。
衣料品や書籍、家具など多岐にわたり、現在は使っていても、今後5年間で使わなくなると推測される不用品も国民平均約27・4万円に上るという・・・

伝統的企業の企業内官僚制の悪弊

2026年7月11日   岡本全勝

6月22日の日経新聞、西條都夫・特別編集委員の「パナソニックに必要な「解体新書」」から。この官僚制(性)には、本家官僚もびっくりです。

・・・パナソニックホールディングス(HD)は今度こそ復活するのだろうか。「ザ・JTC(日本の伝統的大企業)」とも呼ばれる同社は過去40年以上足踏みを続けた。連結営業利益は昭和時代の1984年度に記録した5757億円をいまだに超えられず、ライバルのソニーグループや日立製作所に置いていかれた。成長力不足に悩む日本経済の縮図のような存在である。ところが、どうしたことか最近のパナソニックは調子がいい・・・
・・・株価上昇の要因は相場全体の上げ潮に加え、昨年来の1万人を超える人員削減と、人工知能(AI)用データセンター(DC)向け分散型電源システムの好調だが、底流では企業の体質転換も進んでいるようだ。

一つは過剰な官僚体質の是正だ。OBによると、以前の同社は煩雑なプロトコルに縛られた組織で、「役員に事業計画をプレゼンするときは、事前に課長、部長、事業部長と上げていく。そのたびにあれこれ注文がつくので、プレゼン用のパワポ資料が『ver100』を超えることもザラだった」という。稟議の承認を得るのも面談が原則。上位者が例えば長期出張中だと、ただただ待つしかなかった。
一昔前のJTCなら「あるある」かもしれないが、さすがにこれでは競争できない。ある社員は「こうした弊は改まり、組織の風通しは昔より格段によくなった。幹部の若返りも進んだ」という。
外資の経験が長く、21年にパナソニックに招かれた玉置肇副社長も「もともとセクションごとの縦割りが強く、事業部間の情報共有も不十分だった。この壁を壊すことで経営チームの一体感が生まれた」と指摘する。
ガチガチの官僚体質が普通の組織に一歩近づいた、というところだろうか・・・