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経済

国際金融危機と政府の役割

昨年9月にいわゆるリーマンショックが起き、世界規模の金融危機が発生しました。そしてそれは、世界同時不況を引き起こしました。100年に一度の危機、あるいは戦後最大の不況といわれるほどの激震でした。対応を誤れば、世界恐慌の恐れがありました。いろんな考察がされていますし、これからも出されるでしょう。
私も官邸で、いろんなことを考えました。
まず、政府の責任、日本政府は何をするべきかです。国際金融という世界は、二つの意味で、政府との関係が難しいです。一つは国際的ということで、それを監視する責任ある組織がありません。国内なら、各国政府の仕事です。もう一つは、市場に対し、どこまで政府が関与するかという問題です。日本政府が提案した内容は、官邸ホームページに載っています。また、世界恐慌を避けるため、政府は各国と協調して、内需拡大策を採りました。
国際金融市場の不安定性に対し、早くから警鐘を鳴らした学者に、スーザン・ストレンジがいます。「カジノ資本主義」や「マッド・マネー」などの著者です。彼女は、「カジノ資本主義」の中で、結末(現状)を導く重要な決定について、次のように書いています。
・・外交の場合は、例えば戦争をするかどうかは、国家(政治)が決める。しかし、通貨システムの場合は、国家(政治)と市場の両方がある。そして、国家が決定する場合、規制などで市場に介入するという「積極的に決定」する場合と、市場に介入しないでなりゆきに任せる「消極的な決定(非決定)」とがある。
市場がグローバルであることと、技術の変化によって、非決定の方が一般的である・・
私は連載「行政構造改革」で、官僚の不作為(第3章二1注41)や、政治の決断の先送り(第3章三2)を取り上げました。

利益の源泉、2つの型

18日の日経新聞経済教室「米金融危機」は、池尾和人教授の「裁定型業務の限界超えよ。価値創造支援重要に」でした。要旨は次のようなものです。
金融活動には、利益の源泉をどこに求めるかで、2つのタイプがある。一つは裁定型金融と呼べるもので、流通過程での価格の差異に利益の源泉を求めるもの。安く買って高く売ることで利益を上げるタイプ。金融資本市場の自由化が開始された1980年代以降、資産価格に多くの歪みがあり、裁定型金融で利益を上げることができた。デリバティブのように、従来取引対象になっていなかったリスクを対象とした。しかし、裁定が成功すると、一物一価が成立し、裁定取引では利益は上げられなくなる。
もう一つのタイプは、価値創造支援型で、取引先企業の価値向上に貢献し、利益の一部を受け取る。
わかりやすい、解説です。

消費税引き上げ

18日の東京新聞が、企業に対する景気アンケートを載せていました。そこに、消費税引き上げについての回答があります。歳出の無駄を省いた上で引き上げるが41%、景気回復後に考えるが23%です。引き上げるべきではないは、6%です。引き上げ時期は、2010年度が30%、2011年度が25%です。かなり理解が進みました。
自民党総裁選での議論でも、時期は別にして、その必要性は認識されたと思います。

税より重い保険料

13日の朝日新聞が「税より重い社会負担」を解説しています。サラリーマン世帯の9割以上で、年金・医療保険料が、所得税・住民税・消費税負担より大きいのです。増税は国民の反発を受けやすく、保険料だと抵抗が少ないからです。
これらは、別々に考えられてきたのですが、国民にとっては「同じ負担」です。1997年に、消費税と保険料の増額が別々に決められ、全体像を考えていなかったこともありました。
さて、そこでも触れられていますが、年金は現役世代から高齢者への所得再分配ですが、高齢者ははるかに多く資産を持っているので、年齢軸での負担も図にするとわかりやすいでしょう。

特別会計余剰金

東大出版会PR誌『UP』9月号に、醍醐聡教授が、「増税なき増収財源としての特別会計余剰金」を書いておられます。これまで「埋蔵金」が議論されてきましたが、それは特別会計の積立金です。教授が書いておられるのは、毎年の余剰金=予算計上したけれど使われなかったお金です。
2006年度の特別会計余剰金は51兆円、そのうち翌年度への繰越が42兆円、積立金が7兆円、一般会計繰り入れが2兆円です。翌年への繰越のうち、歳出見合いでの繰越もありますが、それは5兆円、そのうち確定しているのは2兆円です。すると、それを除く繰越金と積立金が、「利用可能」な金額になります。
詳しくは、原文をお読みください。