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経済

日本経済の構造変化

今日(2月8日)の夕刊各紙は、2011年の国際収支速報を取り上げていました。経常黒字が前年比44%減で、9.6兆円です。2007年には24兆円の黒字でしたから、この数年で、急激に減少しています。
貿易収支が48年ぶりに赤字になることは、すでにこのホームページでも、解説しました(31年ぶりと書きましたが、48年ぶりだそうです)。
また、朝日新聞朝刊の経済面「経済気象台」は、「日本の優良企業とは」でした。それによると、ソニーの従業員数は17万人。うち日本人は6万人で、海外での雇用者は11万人です。他方、保険会社のアフラックは、本社がアメリカですが、従業員の半分が日本人で、保険料総額の4分の3が日本だそうです。

続・世界で稼ぐ日本企業、日本企業の生き残り策

今日のニュースで、日本の昨年の貿易収支が、31年ぶりに赤字になったことを伝えていました。この件については、1月10日に書きました。
さて、昨日の続きです。入交さんは、「日本の製造業は、次の5つの選択肢のどれかを選ばなければならないだろう」と言っておられます。
・・まず、ある分野に特化して、国内で徹底的にお客さんに奉仕して今ある顧客を離さない。京都のお茶屋さんのような堅実なビジネスです。
第二は、やはり国内で狭い分野に特化すると同時に、高い技術力でグローバルな競争力をもつ。小金井精機という会社が典型で、F1のエンジンの特殊な部品を超高精度で仕上げる技術があるので、海外からどんどん注文が来る・・この項、続く。(2012年1月25日)

入交さんの指摘「日本の製造業は、次の5つの選択肢のどれかを選ばなければならないだろう」の続きです。
・・3番目は一番、典型的なもの。国内に製造拠点は残しながら、培った技術を持って海外へ出てビジネスを広げていく。旭テックはこれです。
第4はユニクロのように、国内はマーケティングや開発に特化し、生産はすべて海外でやる。これはこれで大変です。
最後は、世界のどこにもない新しいものを作り出す。これは天才が出てこないとできない。どれもやさしいことではありませんが、どれか一つに決めないと・・

世界で稼ぐ日本企業、日本企業の生き残り策

古くなりましたが、12月24日の朝日新聞オピニオン欄で、入交昭一郎さんが、次のようなことを発言しておられました。
・・「日本の製造業」「日本のものづくり」と言っていますが、その定義を考える必要があると思うのです・・生産している場所が重要なのか、それをコントロールしている場所が重要なのか・・(ドイツの自動車メーカーが国内ではなく海外工場で伸びていること、それでもドイツの製造業であることを指摘して)
・・地域の経済と企業の発展は、別のものになっている。海外で車を作るホンダやトヨタも「日本の製造業」ですよ。私は、21世紀の日本人は工場も働き手も海外に出て出稼ぎすべきだと言っているんです。海外で生産した製品を海外の市場で売って、その利益を日本に持ってくる。国内の生産が難しくなっても、日本の製造業が世界各地に根を下ろして頑張れば、世界中から日本におカネが集まってくる。企業はその装置になればよい・・・この項、続く。

日本、貿易赤字に転落

1月9日の日経新聞が、「貿易赤字転落、日本岐路に。31年ぶり、円高・燃料費増加で」を伝えていました。2011年に、日本が貿易赤字国になったという予想です。歴史的な円高で、輸出が伸びなかった一方、原発の停止で火力発電に使うLNGの輸入が膨らんだためと、解説しています。
問題は、この貿易赤字が、構造的に定着するとの見方があることです。これが一時的なら、そんなに問題ではありません。また、貿易赤字になっても、所得収支(海外からの配当や利子)などが黒字で、合計の経常収支が黒字なら、問題は少ないです。
「日本は資源が少ないので、石油や原材料を輸入してそれを加工し、工業製品を輸出して、栄えている」というのが、かつて教えられたことです。もっとも、経済に占める輸出入の割合は、諸外国に比べて日本はそれほど大きくないのですが。それでも、貿易で稼ぐというのが、一つの日本モデルであり、私たちが信じた神話でした。それが崩れるのは、いささかショックです。
成熟国になると、貿易ではなく、海外投資による所得収支で黒字になるのが、先進国の道筋です。しかし日本の場合は、この「成熟」が早くやってきているので、海外投資の蓄積が大きくありません。
安価で良質な工業製品では、後発国に追いつかれました。今後、何を「売って」日本は稼ぐのか。何で世界に貢献し、諸外国から尊敬されるのか。その岐路に立っています。

経済の金融化

ロナルド・ドーア著『金融が乗っ取る世界経済―21世紀の憂鬱』(2011年、中公新書)がわかりやすかったです。金融業が実体経済を上回って拡大し、経済活動の中で大きな比重を占めるようになったこと、金融が実体経済と遊離して動き、時には金融市場と世界経済を危機に陥らせることを、分析しています。
この20年間の世界経済の変化を大まかに言えば、国際化と金融化と言えるでしょう。この本は、後者の金融化について書いたものです。

そして経済と政治との関係は、その変化に対応するための自由主義的改革と、金融・経済危機対策であったと言えるでしょう。しかし、日本はまだ十分な経済産業構造の改革を見いだせず、世界各国政府は十分な金融危機対策を打てていません。
何度もこのホームページで書いているように、国際化によるアジア各国の追い上げで、日本のひとり勝ちは許されなくなりました。加工組立型工場とコメの保護によって成り立っていた地方経済は、成り立たなくなりました。これが、失われた20年の原因の一つです。
金融危機に対しては、2008年のリーマン・ショックには、世界各国が協調してひとまずの対応ができましたが、今年のユーロ危機は、まだ続いています。そして、制度的押さえ込みは、まだできていないでしょう。

ところで、ドーア先生には、かつてコラムで私のホームページの記事を引用してもらったことがあります(2007年10月22日の記事)。お礼のメールを打ったら、イタリアから返事を頂きました(10月23日の記事)。