カテゴリー別アーカイブ: 経済

経済

ビッグマック指数2022年、41番目

12月18日の朝日新聞別刷りGLOBEは「物価のなぞ」でした。そこに、ビッグマック指数がグラフになって載っています。イギリスの経済誌「エコノミスト」が1986年から発表しています。
私は日本の現状を話す際に、この指標をその一つとして使っています。

2022年7月の調査では、日本では390円、2.38ドルで、世界53カ国中41番目です。ヨーロッパ各国はもちろん、中国、韓国、タイ、ベトナムより安いのです。
アメリカでは5.15ドル、710円。ロンドンでは4.42ドルです。肉、小麦粉、レタスの原材料費に大きな差がないとすると、労働費が低いのでしょう。
2004年では世界で5番目でした。この10年で急速に貧しくなったようです。

男女賃金格差

12月15日の日経新聞経済教室「ジェンダー格差是正への道筋 上」は、児玉直美・明治学院大学教授の「資本市場の力を生かせ」でした。

・・・日本は経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、職場におけるジェンダー格差が最も大きい国の一つである。労働政策研究・研修機構によると、2020年の女性管理職比率は、米国41%、英国37%、フランス36%、ドイツ28%、デンマーク28%、韓国16%に対し、日本は13%にとどまる。
またOECD統計によると、日本の男女賃金格差は徐々に縮小しているが、21年時点でもフルタイム女性労働者の収入中央値は男性より22%低い。韓国の31%に次ぐ大きさで、デンマーク5%、スウェーデン7%、ドイツ14%、英国14%、米国17%を大きく上回る。
図は筆者が参加する研究グループによる先進15カ国の30~55歳労働者の男女賃金格差を示したものだ。女性の賃金が男性よりどれだけ低いかを示し、マイナス幅が大きいほど男女賃金格差が大きいことを表す・・・
として、2つの図が載っています。図を見てもらうと、日本の男女差が突出していることが一目瞭然です。

・・・左図の横軸は年齢、教育年数、フルタイム・パートタイムを統制した上での男女の年収格差だ。日本の女性労働者の年収は男性より35%低い。基本属性を統制した後でも、男女賃金格差は韓国に次いで大きい。縦軸は基本属性に加え事業所固定効果を統制した後の同一職場内の男女賃金格差だ。日本の同一職場内の女性の年収は男性を33%下回り、突出して低い。国全体としての男女格差が大きいだけでなく、職場内の格差も大きいことを意味する。

右図は時間当たり賃金の男女格差だ。多くの国で女性は男性より労働時間が短いため、時間当たり賃金でみると男女賃金格差は縮小する。だが日本は基本属性を統制した時間当たり賃金でも、女性労働者の賃金は男性より32%ほど低く(横軸)、同一職場内の時間当たりの女性賃金も男性より30%低い(縦軸)。スウェーデン、オランダ、ノルウェーの女性労働者の時給は同一事業所内の男性より8%低い程度にとどまる・・・

黒田日銀10年、低金利なのに伸びない設備投資

12月7日の朝日新聞経済欄「黒田日銀10年 異次元緩和の光と影:下」「低金利なのに、伸び悩む設備投資」から。

・・・日本銀行が金融緩和で狙ったのは、人々が財布のひもを緩めて消費を拡大させることに加え、企業がお金を使って投資を増やすことだった。緩和で企業の行動は変わったのか・・・
・・・緩和前に超円高に見舞われ、低迷していた企業業績は緩和下の円安もあって回復。上場企業全体の2022年3月期決算は、最終的なもうけを示す純利益が過去最高となった。民間企業の国内の設備投資(名目)も、12年の76兆円から20年には86兆円に増えた。
ただ、設備投資は主要先進国より伸び悩む。内閣府の年次経済財政報告によると、各国の設備投資額(00年=100)を比べたところ、日本は12年の100から21年に108・7となったが、米国は131・1から177・5になるなど、他国の伸びはより大きかった。
日本が伸び悩む一因に、投資先が国内より成長が見込める海外に向かっていることがある。

「低金利だからということで、設備投資が増長されることはない」
11月、中間決算を発表した東レの大矢光雄副社長は記者説明会で、緩和が設備投資の判断に影響するか記者に問われ、こう否定した。世界29カ国・地域に拠点があり、売上高の海外比率は56%。22年度までの中期経営計画に盛り込んだ5千億円の設備投資も、6割が海外での投資だ・・・

・・・ 低金利環境で企業が助かった面もある。資金繰りが改善し、倒産件数は抑えられている。
東京商工リサーチによると、21年度の倒産(負債額1千万円以上)は5980件で1964年度以来の少なさだ。12年度に1万1719件だった倒産は緩和下で減少傾向が続き、19年度には8631件まで下がった。コロナ下の政府による金融支援もあり、歴史的な低水準に抑えられている。

一方で業績が悪く、本来なら経営が行き詰まりかねないような企業の延命につながったとの指摘もある。
倒産が抑えられれば雇用などにプラス効果がある半面、新陳代謝が滞れば、経済成長にマイナスの影響も出かねない・・・

北欧の従業員の学び直し

日経新聞が12月5日から「成長の未来図・第3部 北欧の現場から」を連載していました。第1回は「北欧起業圏「自らを再生する街」 救うのは企業でなく人」、第2回は「「古いままが最も怖い」 デンマークの元祖リスキリング」でした。

北欧諸国は、規模も大きくなく、自然環境にも恵まれた方ではありません。しかし、だからこそ、さまざまな挑戦を行ってきました。福祉は有名ですが、経済においてもです。
この二つの記事にあるように、会社が倒産する危機になっても、政府は救いません。生き残ることができない企業に見切りをつけ、新しい企業や事業に従業員が移ることを支援します。そして、国民もそれを受け入れています。
第2回目の記事には、失業対策として、また失業してなくても、学び直しに取り組む姿が描かれています。
4時に仕事を終わらせて、勉強会に参加している人への質問です。・・・ポールセンさんに職歴を聞くと「47歳だけどまだ2社目」という。少し恥ずかしげに答えたのは「よい仕事を得るためなら何度でも転職するのがごく自然」だからだ・・・

そして、国民の幸福度も高いのです。

宇宙への挑戦を支える民間の保険

12月1日の朝日新聞に「民間初の挑戦、支える宇宙保険 三井住友海上、オーダーメイドで設計」が載っていました。

・・・日本の宇宙ベンチャー「ispace(アイスペース)」(東京)が、無人の月着陸船を打ち上げる。無事に月までたどり着けば、民間初の偉業となる可能性がある。その歴史的な挑戦を陰で支えているのは、日本の損害保険会社による宇宙保険だ。
民間初となる月探査計画「HAKUTO―R」で保険を引き受けるのは三井住友海上火災保険。アイスペースと共同で「月保険」を開発した。打ち上げから月面着陸までに起こりうる損害を切れ目なく補償する。月着陸船から発信されるデータによって異常を検知して、保険金を支払う仕組みだという。
三井住友海上は宇宙保険との関わりが古い。宇宙開発事業団(NASDA、現宇宙航空研究開発機構〈JAXA〉)初の人工衛星「きく1号」が打ち上げられた1975年、打ち上げ場所の周辺家屋などへの損害リスクを補償する「宇宙賠償責任保険」を国内で先駆けて開発した。以来、50年近く手がけてきた・・・

保険の起源の一つは、中世欧州での船舶保険です。航海は儲かる代わりに危険も大きく、その危険を分散したのが保険です。現在においても、これまでにない新しい事業に乗り出す場合には同じ問題があります。それを支えるのが、損害保険です。経済発展を支える大きな公共的役割があります。