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社会

匿名投稿の危なさ

匿名の発信が、あふれています。すべてとは言いませんが、無責任、読むにたえないものも多いです。私はソーシャルメディア(SNS)を使いません。
アマゾンで本を買うときに「評価」の欄を見ることがあります。低い評価(星が一つとか)は気になるので、見てしまいます。正当な意見ではなく、感情にまかせたような罵詈雑言もあります。「実名ならこんなことは書かないよな」と思います。

私のホームページは、このように実名です。発言には責任を持たなければならないと考えているからです。
それに対し、「みんなが、あなたのように強くはないのです」と言う人もいます。いえ、実名なら言えないような内容は、書かなければよいのです。そのような内容なら、知人と喫茶店か飲み屋で他人に聞かれないようにして、思いっきりしゃべってください。
読んだ相手がどのような気持ちになるか。それを考えない発言は、危ないです。批判をするなとは言いません。するにも、礼儀があるということです。あなたが逆の立場になった場合を考えてください。

2月14日の読売新聞に「SNS投稿 実名?匿名?」が載っていました。
・・・SNSは情報の発信・収集の手段として欠かせないツールとなっています。実名でも匿名でも利用できますが、匿名には「言いたいことが言える」といった利点がある一方、「実名にして発言に責任を持つべきだ」との声も上がります。あなたはどう考えますか?・・・
双方の言い分は、記事を読んでください。

日本独自のメンタルクリニック

東京大学出版会の宣伝誌『UP』2月号に、下山晴彦・東大名誉教授の「”変なタイトル”の本の出版と、その背景―「心理職」国家資格化の顛末」が載っています。心理職が、相応の評価と待遇を受けていないことを紹介しておられます。

・・・皆様は、1990年代以降、都市部を中心に「メンタルクリニック」(精神科や心療内科)が急増していることにお気づきだろうか。「メンタルクリニック」は和製英語であり、精神科診療所としては世界でも類を見ない形態の、日本独特の医療機関である。心身の不調から日常的な悩みまで「メンタル」を巡るさまざまな問題が持ち込まれ、診断や治療がなされ、患者はメンタルクリニックへの接近と離反を繰り返す。
米国では、心の悩みの相談に行く専門機関は、通常、専門の「サイコロジスト」である心理職のオフィスである。それに対して日本では、「生きづらさ」を抱えた人びとが、コンビニのように街角にある「メンタルクリニック」、つまり医療機関に吸い寄せられていく。そのような人びとの中には、薬物療法が必要でない「悩みごと」を持った人たちもいる。そのような人にも診断名がつき、「患者」となり、薬物療法がされることもある。「メンタルクリニック」に勤務する心理職は、”医師の指示の下で”そのような「患者」を担当になることが多い。

全てがそうというわけではないが、多くの「メンタルクリニック」では、「生きづらさ」や「悩みごと」を病気(疾患)として治療する「医療化」が起きている。これは、日々の生活の中で生じる苦悩や困り事といった個人的問題に対して誰が相談に乗るのか、つまりどのような職業が管轄するかといういわば”管轄権”の問題と関わっている。
19世紀半ばまでは聖職者が”管轄権”を有していたが、近代化とともに相談による需要が高まったことで聖職者に代わる職業が求められることなった。米国などの欧米諸国では、心理的苦悩の相談を担当する管轄権を有しているのが心理職である。それに対して日本ではそれが「メンタルクリニック」、つまり医療になっているということである。日本では、他国とことなり、苦悩についての相談までもが「医療職」が管轄権を持つようになっている・・・

社会の変化に追いつかない意識

先日「増えた大卒、希望する職とのずれ」を紹介しました。ここ30年で高卒就職者は7割減ったのに対し、大卒就職者が4割近く増え、製造や建設などの現場が人手不足に苦しむ一方、事務職は求職者が求人を17万人上回っています。

2月18日の日経新聞夕刊、曽和利光さんの「就活のリアル」に「新卒の3年内離職率35%」が載っていました。
・・・大学の新卒入社の3年以内離職率は高まり、直近のデータでは約35%となっている。学生側が優位の売り手市場とあって、企業側のみならず、学生の側にも原因があると専門家は考えている。
大学の新卒入社(2021年)の34.9%が3年以内に離職していることが厚生労働省の調査でわかった。これは直近15年間で最大だ。企業は離職防止努力はしている。採用基準を精査し、面接担当者にトレーニングを施し、管理職にマネジメント力向上研修を実施している。しかし、残念ながら数値が改善される様子はない。

ただ、離職の増加は企業だけのせいではない。学生の側が自分に合う会社を見誤っているという側面もある。自己分析や企業研究が曖昧であれば、「なんとなく」合っていると思う会社を受け、深い吟味をせず入社する。当然ミスマッチとなりやすい。売り手市場で内定が取りやすいので、そんなことも起こりうる・・・

詳しくは記事を読んでいただくとして。
多くの人が高卒で就職し、大卒が少なかった時代の意識が、まだ続いているのではないでしょうか。
そのような時代だと、大卒は「選ばれた社員」で、幹部候補として育てられました。しかし、大卒が増えると、増えた分は、それまで高卒の社員が従事していた仕事に就くことになります。みんながみんな、かつての大卒のようには出世できません。
また、農業や自営業が多かった時代は、企業、それも大企業に就職することは、憧れでした。そして、テレビなどでは現場の作業員ではなく、事務職がきれいな職場で働く姿が描かれます。会社も募集活動の際に、「うまくいった先輩」の例を示し、そうでなかった先輩の事例は説明しないでしょう。学生は、職場の実態を知らずに就職し、描いていた理想像と異なることに悩むのでしょう。
しかし、大卒の新卒入社の35%が3年以内に離職するとは、驚きです。

「高卒男子を囲い込む」政策の失敗」も、社会の変化に追いつかない意識の一例でしょう。「30年という時間、体感と社会の変化」で、この30年間の日本社会の変化は少なかったと書いたのですが、この点では違っています。

ヨーロッパ、校内スマホ禁止

1月29日の朝日新聞に「欧州、苦肉の校内スマホ禁止 中高で広がる、法制化も議論」が載っていました。
私も、最後に引用した「たばこが特定の年齢や特定の場所でしか喫煙ができないように、スマホについても検討すべき時が来た」との意見に賛成です。お酒、賭博、有害図書などと同様に、未成年の発育を妨げるものは規制すべきです。

・・・ベルギーでは、日本の中学・高校にあたる多くの学校で、スマートフォンを禁止する動きが出ている。欧州各国にも広がり、それに反対するデモまで起きる事態になった。

11~18歳が在籍する、首都ブリュッセルから南西へ約30キロにあるこの学校では、約10年前から先駆的な取り組みとして、学校にいる間のスマホの使用を禁止している。ニコラ・スピルスティンズ校長(48)は「生徒同士の会話の時間が増え、SNSによるトラブルも起きにくい」と説明する。
スピルスティンズ校長ら教師の悩みの種になっているのがSNSだ。
利用者の好みに合わせて投稿が表示される「おすすめ」を見続けることで依存的になったり、同級生らの顔写真を使った「なりすまし画像」の投稿がいじめにつながったりするのだという。「スマホに依存すると、子どもは『孤立』する。校内だけでも使わせないのが一番の解決策だ」とスピルスティンズ校長は指摘する。
校内でのスマホ使用を禁止するとともに、SNSの危険性や影響、なぜ他人の写真を勝手に投稿してはいけないのか、といったことを教える授業も始めた。

一方、スマホの校内での使用を禁止する動きは、各国にも広がっている。ユネスコが2023年に発表した報告書によると、世界の4カ国に1カ国が、学校でのスマホの禁止を法律やガイドラインで定めている。
フランスもその一つで、18年に幼稚園から中学校までを対象に、校内でのスマホの使用を全面的に禁止する法律を定めた。オランダでは「勉強の邪魔になる」として昨年から、小学校から高校を対象に、スマホだけでなく、タブレット端末やスマートウォッチも禁止に。イタリアは昨秋から中学校までを対象に、デジタル教育などの教育目的も含めてスマホを全面的に禁止した。

世界保健機関(WHO)は、若年層のSNS依存を防ぐために、学校でのスマホ禁止は有効との見方を示している。
昨年9月に発表した欧州、中央アジア、カナダの11歳から15歳の約28万人を対象にした調査の報告書によると、全体の11%がSNSの使用を自ら止められない「依存状態」であることがわかった。男子の9%に比べて女子は13%と割合が高かった。
WHO欧州地域事務局のナターシャ・アゾパルディ・ムスカット国別保健政策・システム部長は、「たばこが特定の年齢や特定の場所でしか喫煙ができないように、スマホについても検討すべき時が来た」と指摘し、規制が必要との考えを示した・・・

増えた大卒、希望する職とのずれ

1月20日の日経新聞に「増えた大卒、職とミスマッチ 「事務希望」は17万人過剰」が載っていました。

・・・製造や建設などの現場が人手不足に苦しむ一方、”人手過多”となる職種が生まれるミスマッチが起きている。特に事務職は求職者が求人を17万人上回る。ここ30年で高卒就職者は7割減ったのに対し、大卒就職者が4割近く増えたことが一因だ。成長に必要な労働力を確保するには、働き手を増やすだけでなく求人と求職者のズレを埋める必要がある。

厚生労働省がハローワークの状況をまとめた一般職業紹介状況(24年11月、パートを除く)によると、「建設・採掘」は求人が11万2千人で求職者(1万8千人)の6.2倍、ドライバーなど「輸送・機械運転」は2.4倍、製造などの「生産工程」は1.7倍に上る。情報・通信技術者や看護師など「専門的・技術的職業」も2.1倍だ。
対照的に大卒文系の多い「事務」は求職者が30万5千人と求人(13万3千人)を大きく上回る。

背景には過去30年で新卒就職者の学歴構成が大きく変わったことがある。
学校基本調査によると、24年に就職した高校(全日・定時制)新卒者は12万9千人で1994年の45万9千人から7割減った。高卒は製造・建設業などの人材供給源だったが、同分野への就職者は直近で6万人程度と30年前に比べて6割減った。団塊の世代が2010年代に65歳以上となって退職が相次いだ影響もあり、人手不足が深刻化した。
大学新卒者は45万2千人で30年前(32万5千人)より4割近く増えた。以前から多かった専門職や事務職に加え、販売職やサービス職も増え進路が広がったものの、製造業や建設の現場を選ぶ人は少ないままだ。
きついイメージのある職が敬遠されやすいほか、賃金面の要因もあるとみられる。賃金構造基本統計によると、専門職の39万1千円、事務職の33万円に対し製造現場など「生産工程」は30万2千円となっている。

・・・労働需給のギャップは一段と開く。リクルートワークス研究所の推計で、ドライバー(輸送・機械運転・運搬)は40年に99万8千人が不足。413万2千人の必要人数に対し不足率が24%に達する。建設は65万7千人で不足率は22%。生産工程は112万4千人で同13%だ。

・・・相次ぐ大学や学部の新設もズレを広げた。大学数は1974年度の410校から2024年度は813校になり、学部数も2倍以上になった。
金子元久・筑波大特命教授(高等教育論)は「1960年代以降、法学や経済学、商学など比較的に低コストの分野の学部が増えた。企業側は採用後に自ら訓練するのが前提だったので大学での教育内容を問わなかった」と説明する。
少子化による生産年齢人口の縮小が進むなか、個々人の知識や技能、能力などを最大限引き出す「人的資本経営」の考え方が広がる。社会・経済に必要とされるのはどんな人材で、どう育てるのか。限られた働き手を生かすには、教育界と企業が向き合い”昭和型”の人材育成から脱却することが求められている・・・