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社会

かつて街にも列車にもゴミがあふれていた

5月2日の朝日新聞「写真館 since1904」は「あふれるごみ ポイ捨て、今は昔」でした。
・・・日本はかつて「ごみの国」だった。
そう書きたくなるような写真の数々だ。海水浴場や動物園、観光地に向かう列車内はごみであふれ、東京の川はごみ捨て場と化した。
今ではポイ捨てを禁止する条例が各地にでき、道端のごみにも目を光らせる。時代は変わり、清潔が正義になった。5月3日は「ごみの日」・・・

そして、1969(昭和44年)の神奈川県鎌倉市の材木座海岸、1952(昭和27年)文化の日の東京・上野動物園、1968(昭和43年)の国鉄房総東線急行列車車内、1965(昭和40年)の東京・目黒川、1950(昭和25年)の東京・銀座の風景写真が載っています。
いずれも、ゴミであふれています。
日本人が公共の場でゴミを捨てなくなったのは、まだ最近のことなのです。

発展途上国政府幹部に日本の成功(行政の役割)を話す際に、日本人の清潔さ、決まりを守ること、社会的つながり(社会関係資本)が、その基礎にあったことを説明します。すると、多くの参加者から、「我が国は無理だ」との反応があります。
その際に、「いえいえ、社会の規律はつくるものです。明治初年に来た外国人は、日本人が時刻を守らずだらしない、と嘆いています。なのに、今では電車が1分遅れただけで、車掌はお詫びします。またかつては、電車の中もゴミだらけだったんですよ」と話すと、皆さん驚きます。

数十年後には、「かつて日本人は歩くときに、スマホを見ずに、背筋を伸ばして歩いていた」と写真が載るのでしょうか。

日本語の表記1

日本語を表記するのに、何種類の文字と記号を使うと思いますか。通常は、ひらがな、カタカナ、漢字ですよね。NHK(日本放送協会)サイトの「やさしい日本語 日本語の文字」にも、次のように書かれています。
「日本語には3種類(type)の文字があります。ひらがなとカタカナと漢字です。」

しかし、違います。この文中にもtypeとあり、NHKも通常は日本放送協会とは言いません。アルファベットなしでは、日本語は書くことができません。日常の文章、例えば新聞ではNHKと表記します。日本放送協会自体が、そのように書いています。国語辞典では「エヌ・エイチ・ケー」と書いて、検索します。
巻末にアルファベット単語が並んでいる辞書も多いです。かつては、英単語をカタカナにして文章に入れたのですが、最近はアルファベットのままで文章に入れることが増えています。例えば、SNSとか。一度その視点で、新聞を読んでみてください。

「日本語は、漢字仮名交じり文で書く」と教えられましたが、変更する必要があるでしょう。「漢字仮名アルファベット交じり文で書く」と。
携帯電話で文章を打ち込む際に、わかります。文字の変換で、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベット、アラビア数字を選択します。このほかに記号や符号、ローマ数字もあります。

ところで、JRも悩む単語です。JR東、JR東海など個別の会社は、東日本旅客鉄道株式会社、東海旅客鉄道株式会社という漢字表記があるのですが、JRは漢字と仮名に置き換えることができないのです。
ウィキペディアには、「日本国有鉄道(国鉄)の分割民営化により1987年に発足した鉄道事業者の統一的総称。6つの旅客鉄道会社と1つの貨物鉄道会社などから構成される。全体としてJRグループ(JR-GROUP)とも呼ばれる」とあります。もう38年も前の話で、若い人は国鉄を知りません。このような説明で通じますかね。
変な日本語、カタカナ語」「カタカナ語乱造者

日産社外取締役、全員留任

4月4日の朝日新聞「日産社外取締役「全員留任」の波紋 業績不振で社長交代、監督役に「何してきたのか」」から。

・・・日産自動車は、1日にイバン・エスピノーサ新社長が就任し、新体制に移った。同社では今春、前任の内田誠社長や3人の副社長らがそろって退任した。一方、「内田体制」を支えてきた社外取締役は全員が留任の方向だ。経営の監督役である社外取締役のあり方を巡り、議論を呼んでいる・・・

・・・ 一方、取締役会の監督責任については「責任の重大さは理解しているが、新体制を構築して皆さんに判断してもらうことを選択した」と説明。12人の取締役のうち、日産と筆頭株主の仏自動車大手ルノー出身者を除いた8人の社外取締役の全員が留任する方針を明らかにした。
この方針について、企業統治に詳しい牛島信弁護士は「内田社長ひとりに責任を押しつけているように見える。一人も辞めずにどうして改革ができるのか」と批判する。さらに、「業績は一日二日で悪くなったわけではない。社長を代えることもできたのにしなかった」として、取締役会の3分の2を占める社外取締役が監督責任を果たさず、機能していなかったと分析した・・・

・・・一方、社外取締役全員の留任が「ベストではないがベターな判断」とするのは、早稲田大学ビジネススクールの池上重輔教授だ。日産のような世界的企業の取締役に適した人材が見つけにくいことや、経営再建の重責を担わなければいけないことなどから、「辞めたところで人が見つからず、これまでより悪化する可能性もある」と話す。
近年の金融庁などの指針改定で、東証プライム上場企業は独立社外取締役が取締役会の3分の1以上を占めるようにすることが求めらている。そのため、社外取締役の要件を満たす人材が不足しているという・・・

過疎化と東京集中

4月5日の日経新聞夕刊が、「地域おこし協力隊、最多7910人」を伝えていました。総務省の発表で、2024年度の地域おこし協力隊隊員数が7910人で過去最多になったとのことです。2023年度までの5年間に任期を終えた隊員のうち、定住したのは69%だそうです。

他方で、同じ夕刊で、「東京一極集中なぜ止まらない?」も載っていました。
東京への転入超過は、2019年には8万人を超えていました。コロナの影響で2021年には5400人まで減ったのですが、2024年には8万人近くまで増えました。

東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)への転入超過は、男性が6万3千人、女性が7万2千人です。転居理由は「希望する大学や仕事がある」が5割です。女性は、医療福祉、小売業、飲食店などのサービス業を希望するとのこと。
女性が減る地方では、結婚しにくくなります。20~34歳の未婚者の男女比は、福島、茨城、富山、栃木、福井、静岡、山形県で30%以上の「男性余り」になっています。

書店減少対策

4月1日の読売新聞「LEADERS」は、近藤敏貴・トーハン会長の「本屋にチャンス届ける」でした。

出版取次大手トーハンが小型書店の開業をサポートするサービス「HONYAL」(ホンヤル)を始めた。出版物の卸売りを担う取次会社が書店の振興に取り組むのはなぜか。近藤敏貴会長に聞いた。

今、全国の28%の自治体に書店がありません。いろいろな手を打っているのですが、まだ減っています。
でも世界を見ると、韓国やフランスなどでは書店は減っていない。むしろ独立系の個性的な書店が増えています。日本でも同様に、小型でも特色のある書店が増える可能性はあると考えたことがスタートです。調べてみると、実際に増えつつあることもわかりました。
これまで日本で小型書店が作りにくかった責任の一端は我々にもあって、少額取引は採算が合わず、辞退せざるを得なかったのです。ホンヤルではその採算モデルを見直しました。

<ホンヤルは連帯保証人や信認金(取引保証金)は原則不要。取り扱いは注文品のみで配送は週1回。小型書店が参入しやすく、取次会社の配送コストも抑える仕組みとし、2024年10月にサービスを始めた>
最初の導入事例は、10年前から町に本屋がなかった北海道南幌町の「はれっぱえほん館」です。
「はれっぱ」は、子どもの室内遊戯施設がメインで、開設後の1年間で来館者数が21万人を超えました。ファミリー層に認知された場所で、新たに絵本の売り場づくりをお手伝いできてよかったと思います。

<紙の出版物の市場規模は1996年をピークに減少に転じ、書店数も20年間で半減した。経営環境が厳しさを増す中、2019年に中期経営計画を策定。本業改革と事業領域の拡大に乗り出した>
取次事業が赤字になる一番の理由は、配送運賃の高騰を経費削減や売り上げでカバーできていないことです。
その中で本業改革をどうやろうかと、ドイツへ視察に行きました。ドイツは日本と同じように本は定価販売で返品もできるのですが、返品率は10%くらいです。日本は30~40%もあります。
何が違うのかというと、日本では出版社が決めた製作部数があり、それを取次会社が書店に配本しています。
ドイツでは発刊の半年から1年前にカタログを作り、書店はそれを見て発注し、出版社はそれをもとに製作部数を決めます。だから返品率が低いんですよ。
こうしたマーケットイン型に全部するのは無理だとしても、少しずつでも変えるべきじゃないかと。日本の出版流通における「川上思考」を、刊行予定をもとに書店が発注する「川下思考」に変えようというのが本業改革の基本的な考え方です。