私が大学生の頃は、日本人論・日本社会特殊論が、一つのはやりでした。ルース・ベネディクト、土井健郎、山本七平、ポール・ボネ・・・。学術的なものから小説、エッセイまで。私も、結構読みました。現在でも、日本人による、あるいは外国人から見た「日本特殊論」「日本優秀論」が、次々に出版されています。「日本人論を論じる」(日本人論論)が、一つの分野になります。
主流は、日本社会が、西欧先進国に比べ遅れているという、学者先生の指摘です。それも理解できますが、日本が遅れているのではなく、別の道を歩んでいるのだという分析、しかもより優れた道を歩んでいるのだという評価は、日本人にとってうれしいですよね。 日本が特殊であり、日本人が優秀だという指摘は、自尊心をくすぐります。そこで、日本社会論・日本人論は、一方で社会学であるとともに、「売れる」読み物になります。他方、日本の失敗、例えば日本軍の失敗や官僚の失敗は、これまた一つのジャンルになります。
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日本人論、日本社会論
1月13日の読売新聞「戦後70年想う」は、中根千枝先生でした。『タテ社会の人間関係』(1967年、講談社現代新書)は、出版以来半世紀。累計116万部で、今も年に1万部が売れるのだそうです。日本の総人口が1億人ですから、100人に一人は読んでいることになります(50年間という時間を無視しています)。
私も、大学時代に読んで、なるほどと思った記憶があります。ところで、私が大学生の頃は、日本人論・日本社会特殊論が、一つのはやりでした。
現在の日本を分析する
昨日、月刊『中央公論』1月号を紹介しましたが、同号には、次のような論考も載っています。
山崎正和「知識社会論的観点から戦後70年をみる」
猪木武徳「悲観論を裏切り続けた日本経済の人材力」
鼎談、竹内洋、佐藤卓己、佐藤信「論壇は何を論じてきたか」
それぞれに、鋭い日本社会分析です。学校では教えてくれない、また新聞を読んでいるだけではわからないことです。これらも、併せてお読みください。
各国の国民性、問題が起きたら
孫引きで申し訳ありません。笹川陽平・日本財団会長のブログ(1月16日)に、石弘之さんの年賀状が紹介されていました。石先生は、先日紹介した『感染症の世界史』の著者です。実はこの本も、このブログで知ったのです。
・・昨年も世界ではさまざまな問題がありました。問題が発生したら、各国はどんな対処をしたでしょうか?
アメリカ コンサルタントと弁護士を雇う
フランス 大議論のあげく問題がさらに深刻化する
ドイツ すべてオッシー(旧東ドイツ人)のせいにする
ロシア 関係者全員を逮捕する
スイス 国民投票にかける
スウェーデン イケアのサポートデスクに電話する
ギリシャ 政府も企業も商店も全部閉鎖する
中国 わが国にはそのような問題は存在しないと声明を発表する
韓国 日本に抗議する
日本 第三者委員会を組織する
さて、ことしはどんな「第三者委員会」ができるのでしょうか・・
これには、笑いました。この手の笑い話は、いくつかあります。有名なのは、あることを調べる場合とか、船が遭難した際に救命ボートが不足した時の対処の仕方とか。各国の国民性を端的にとらえて、クスッとさせます。前者の場合、日本人は「他国の研究を調べる」であり、後者は「皆さん飛び込んでいますと呼びかけると、日本人は海に飛び込む」というのがオチです。
ところで、今回の問題発生時の対処についてですが、なかなか的を射ていますね。このホームページでも、先日、朝日新聞の第三者委員会を批判しました。すると、あまり笑えない小話です。
サッカークラブは、観客の行為にどこまで責任を持つのか
NHKが、「Jリーグ サポーターの応援規制に苦慮」を紹介しています(12月13日)。
・・サッカーJリーグで今シーズン、サポーターの応援を巡る問題が相次いだなか、NHKが各クラブを対象に行ったアンケートで、クラブ側はサポーターを統制する難しさや応援の規制に悩んでいる実態が分かりました・・
この記事に書かれているように、特に今年問題になったのは、サポーターが差別的な横断幕を掲げたり、外国人選手にバナナを振りかざすなどの、「差別的行為」をしたことです。これまでも応援団の問題はありましたが、それは熱くなった応援団が、他の観客や相手方の応援団ともめ事を起こしたり、物を投げたりといった、「暴行的逸脱」でした。その点で、少し違った行為が問題になっています。人権意識の高まりでしょう。
サポーターや観客は、サッカークラブにとって重要なお客であり支援者です。その人たちを、どこまで規制するのか。さらには、クラブにはどこまで規制する義務があるのか。難しい問題です。試行錯誤を重ねて、解決していくしかありません。「スタジアムで考える正義とは」(マイケル・サンデル教授のもじりです)ですね。