数学をめぐる議論が、社会を変える。2

この本の第1部は、昨日書いた、イタリアでのカトリックとイエズス会が、自由な研究を押さえ込み、秩序を維持することに成功します。しかしその代償に、研究が進まなくなります。第2部は、舞台をイギリスに移し、ホッブスが敵役になります。ホッブスは、政治学を勉強した人なら知っている「リヴァイアサン」の著者です。彼が、その思想の延長で、数学を勉強したとは、知りませんでした。彼の主張では、絶対君主がこの世を治めます。それは、教皇に代わる統治者であり、唯一の秩序を維持する者です。それに対し、まだ誕生したばかりの、ロイヤルアカデミーが対抗します。
17世紀のイギリスの政治混乱、2度の市民革命が、この唯一の秩序派と自由な研究派との対立に重なるのです。そして、ホッブスは負け、自由な研究派が勝ちます。それから、イギリスの発展が始まります。
イタリアの自由な思想が終わり、イギリスで自由な思想が始まる。その象徴が、数学をめぐる議論として描かれています。なるほどと思います。もっとも、教皇派・王党派対自由な研究派・市民派を、すべて数学の対立で説明するのは、いささか無理があるようです。しかし、一つの象徴としては、理解できます。マックス・ウエーバーの、プロテスタントが資本主義を発達させた論より、面白いです。
とはいえ、この本は、上下2段組、300ページあります。「挑戦してやろう」という人に、お勧めです。たくさんの知らない人が出てきて、寝ながら読むには少々大変です。