非営利組織評価センターという組織があります。公益法人の制度改革が行われ、またNPO法人制度が普及したことで、NPO法人や一般財団法人、一般社団法人の設立が簡単になりました。かつては、役所の許可が必要だったのです。ところが、誰でも簡単に設立できるようになると、玉石混淆になります。しっかりした法人なのか、そうでないのか。外部の人にはわからないのです。それでは信用も築かれず、法人にとっても困ったことになります。株式会社なら、株が市場で評価されます。そこで、NPO法人を評価する仕組みが作られました。「非営利組織評価センター」です。笹川陽平・日本財団会長のブログをお読みください。
国による許可制が自由化されると、このように第三者評価が必要になります。
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社会
文化の違いによる経済発展の差
ピーター・バーガー著『退屈させずに世界を説明する方法―バーガー社会学自伝』(邦訳2015年、新曜社)。この本は、山本泰先生の最終講義(3月21日)で、教えてもらいました。p274~
・・・われわれは政治文化という一般的な言葉とのアナロジーを意図して、経済文化という言葉を用いた(というか、たぶん作った)。われわれはめざましい現象になりつつあるものにまず注目することによって、この問題に取り組もうと決めた―東アジアの偉大な経済的サクセスストーリーがそれである。
この研究を始めた1980年代中葉、大陸中国はまだ毛沢東主義の経済的失敗による苦しみの最中にあった。サクセスストーリーはもちろんまず日本に、次いで「四小龍」―韓国、台湾、香港、シンガポール―にやってきたわけだが、おそらくいちばん興味深いのは海外へ渡った中国人たちであって、彼らは間違いなく世界で最も経済的に成功した民族集団である。この成功を説明してくれる文化的要因とはなんであろうか・・・
・・・この最初のプロジェクトに関するレディングの著書『中国資本主義の精神』は1990年に出た・・・彼はまた一つの最優先理由―家族のメンバーだけが信頼できる唯一の人間だという―のために家族を中心にすえざるを得ない価値観を描いた。このため、同族会社が中国の理想的ビジネスだということになる。ほとんど定義上、それは相対的に小規模にならざるを得ない―過度に大規模になれば、それはひとが信頼しうる同族の範囲からはみ出してしまうからだ。大規模な中国企業もあるにはあるが、そうした企業もその中心的オフィスは小さなまま維持される傾向が強い―たとえば海運会社がそうである。
日本の経済文化との対比は衝撃的である。日本人は大規模な組織を構築するのが非常に得意だからだ。これとは対照的に、いちばん成功した中国ビジネスは小規模で、家族を基盤にしており、組織がインフォーマルであり、したがってまた非常に柔軟性に富む・・・
社会を変えるには
4月10日の朝日新聞が、「3・11後、私は変わったか」というインターネットによるアンケート結果を載せていました。詳しくは記事を読んでいただくとして。気になったのは、「何も変わらない。ただむなしさだけを感じています・・」といった意見があることです。
私は拙著『復興が日本を変える』の「はじめに」で、次のように書きました。
・・・「東日本大震災が大きな被害をもたらしたのに、日本社会は変わっていない」という人もいます。しかし、私は、この言い方について、次の2つの面から疑問があります。
まず、大災害が起きたら、社会は変わるものでしょうか・・・社会に大きな衝撃を与え、国民の意識を変えたとしても、それだけでは社会は変わりません。その衝撃をきっかけに、国民が行動を起こし仕組みを変えなければ、日本社会は変わりません・・・
・・・次に、東日本大震災によって、日本社会は実際に変わったのかどうか。私は、日本社会は変わったし、変わりつつあると考えています。その中で、私たちには今、何をどのように変えようとしているのかが、問われているのです。「大災害が起きたら社会は変わる」というだけでは、何がどう変わるかがわかりません・・・
この投書の方が、どのように社会や自らを変えようとされたのか、またそのためにどのような努力をなさったのか、わかりませんが。待っているだけでは、社会も個人も変わりません。社会や政治は、私たち個人の「敵」でもなく、誰か別の人たちが作っているものでのありません。私たちが作るものです。「何をしても変わらない」というのは、無常観の表れでしょうか。「何も変わらない」というのは、誰かが変えてくれるのを待っているのでしょうか。
若者の見方、将来は明るい
朝日新聞4月8日朝刊1面の世論調査結果から。今回の調査18歳、19歳の人3千人を対象にして、回収率は70%です。
収入などの格差については、「行き過ぎている」と考える人が59%、収入などの格差があるのは「社会のしくみによる面が大きい」とした人も59%です。いまの日本は、努力しても「報われない社会だ」と考える人も56%。収入や就職の面で、若い人たちが「自立しにくい社会だ」とした人は82%にもなります。他方で、 自分の将来について尋ねた質問では、「明るい」とみる人59%が「明るくない」30%を上回っています。これはよい結果ですね。
建築の職人さん
富山県建築士会が、『建築職人アーカイブ―富山の住まいと街並みを造った職人たち』(2016年、桂書房)を出版しました。
家を建てる際にお世話になる職人さんたちの紹介、聞き語りです。木挽、製材、大工、左官、瓦葺き、畳、造園などなど。聞けば、知っている職人さんたちです。大阪城を建てたのは誰か、というなぞなぞがあります。答は豊臣秀吉ではなく、大工さんです。でも、大工さんだけでは家はできないのですよね。建築士会は、建築士=設計者の団体です。社会的地位も高く、有名な建築家や事務所は知られています。それに比べて、職人さんたちは身近な存在であり、「高名」ではありません。しかし、職人さんがいなければ、家は建ちません。
私も読み始めましたが、なるほどと勉強になります。私の家も、この人たちにお世話になって、できたんですよね。
畏友の小林英俊さんから、「宣伝せよ」との指示が来たので、紹介します。小林さん自身が建築士で、この本の編集を担当しました。私にとっては、富山県庁時代のバンドマスターです。当時は、県庁職員でした。ほかにも専門家的趣味があり、異能の人です。睡眠時間を削って、頼まれた仕事や頼まれもしない仕事をする、「偉大な世話役」です。