カテゴリー別アーカイブ: 生き方

生き様-生き方

佐々木雄一著『陸奥宗光』

佐々木雄一著『陸奥宗光』(2018年、中公新書)が、コンパクトで読みやすかったです。
陸奥宗光は、皆さんもご存じでしょう。不平等条約改正を行った、明治期の外務大臣です。とはいえ、学校で習った知識は、そこまでです。一度、勉強しようと、『蹇蹇録』なども買ってはあるのですが、他の本を読むのが忙しくて、本の山の中に埋もれています。

幕末は志士で坂本龍馬の右腕、新政府に仕えつつ西南戦争の時に政府転覆計画に関与して投獄、その後復活して大使や大臣を歴任します。波瀾万丈の人生です。藩閥政府におりながら、議会の力を活用します。彼が生きていたら、政党政治はもっと早く実現したでしょう。

単に「不平等条約を改正する」といった高邁な理想だけで生きた人ではありません。政治上の成果も、権力を求める途中での成果です。もちろん、権力だけではよい成果は残らず、政策志向だけでは権力を持てずに実現できません。
「自他ともに認める才子であり、能吏であり、策士であった」(はじめに)。その権力志向、権力闘争はすさまじいものがあります。権力を目指す政治とはそのようなものだと、改めて思います。
かつて書いた「社会はブラウン運動4 指導者の意図も行き当たりばったり」を思い出しました。

匿名の投稿2

先日の「匿名の投稿」について、知人が教えてくれました。
「このような人たちは、インターネットに載せる際に広告を載せて、広告料収入を得ています。閲覧回数が多いほど、収入が増えるので、なるべく人目を引くような記述をします。すると、まっとうな意見を書くより、極端な意見を書く方が、目立つのです。褒めるよりけなす方が、見てもらえるようです」と。
なるほどね。残念なことですね。

あなたにとってかけがえのないもの、お国柄の違い

10月25日の朝日新聞国際面「サマータイム ドイツの憂鬱」。この記事は、ヨーロッパで実施されていたサマータイムが、来年で終わる見通しになったこと、特にドイツでは嫌われていたことを紹介した記事です。紹介したいのは、その本筋とは異なった部分です。次のような文章がありました。

・・・世論調査会社フォルザが3年前「あなたにとって、かけがえのないものは何か」とドイツ人に複数回答で尋ねた。最も多かったのが「時間厳守」で90%の人が選び、2位以下の「子ども」(73%)、「セックス」(68%)、「クリスマス」(67%)を大きく引き離した・・・

ふ~ん、ドイツ人にとっては、こうなるのですね。夫や妻が上位に出てこないのは良いのでしょうか。
では、日本人ではどうか。国際比較、年齢別比較などを見てみたいですね。そして、私やあなたならどうでしょうか。

また、この質問の興味深いのは、時間厳守、子供、クリスマスなど、信条、行為、ものなど、およそ比較対象としては同一に並べられないものを、比べていることです。
しかし、日常生活そして人生では、比較不可能なものを選択しなければならないことがしばしばあります。「難しい判断、比較不能なものの選択

匿名の投稿

10月31日の読売新聞1面コラム「編集手帳」に、次のような文章が載っていました。本の通販サイトで、一般の人が星の数やコメントで批評を行う、「レビュー」についてです。
・・・短いコメントながら吟味された感想がある一方で、その通りとはうなずけないものも少なくない。いい本(小欄の勝手な評価ではあるが)なのに、面白い、面白くないといった購入者としての感想ならまだしも、本当に読んだのかどうか、的外れで悪口にしか見えないものものまで目立つ位置に掲示されることがある・・・

同感です。匿名の投稿なので、このような「無責任」な発言ができるのでしょうね。実名、写真入りなら、どこまで書けるか。これは、書評に限りません。
匿名なら無責任なことも書ける。逆に、野菜などで、生産者の名前と写真がついているものがあります。これは安心できます。

鎌田浩毅先生『座右の古典』

鎌田浩毅先生の『座右の古典』(2010年、東洋経済新報社)が、文庫本(2018年、ちくま文庫)になりました。

論語、チャーチル「第2次大戦回顧録」、九鬼周造「いきの構造」など、50冊の古典が、次の8つの分野に分けて紹介されています。
私たちはどう生きるか、私たちは何者か、君たちはどう学ぶか、発想法を転換せよ、人間関係のキモ、情熱・ときめき・モチベーション、リーダーの条件、読書が変える人生。

皆さんが「名前は聞いたことがある」という、古典が並んでいます。しかし、たぶんこのほとんどを、読んだことはないでしょう。私もそうです。
この本は、それぞれの古典の概要、社会に与えた影響などが、簡潔にまとめられています。優れた読書案内です。古典そのものに挑戦することも良いことですが、その本か描かれた背景やその本が社会に与えた影響などを知らずに読むと、苦労します。

しかも、何人かの専門家が分担執筆したのではなく、先生が一人で書かれたのです。
それにしても、鎌田先生がこれだけの読書家だとは。改めて、尊敬します。しかも、先生は理科系の研究者で、社会科学や人文科学の専門家ではないのです。
先生が、時間とお金と脳みそを費やして読まれた成果を、840円の文庫本で読むことができるのです。ありがたいことです。
この本を読んで、原本に当たろうという人や、かつて途中で投げ出したけれど再度挑戦しようという人も、出てくるでしょうね。