「教育」カテゴリーアーカイブ

日本衰退の原因、教育

川北英隆・京都大学教授のブログに「高校と大学教育のあり方」(1月31日)が載っていました。

・・・一言で日本の教育制度の問題点を表現するのなら、詰め込み型教育の弊害に直面している。
詰め込むには過去の知識である。江戸時代以前は中国経由で伝わった知識、明治以降は西洋で生まれた知識である。これらに今、日本で生まれた知識が加わっている。
何が問題かといえば、これらの知識の詰め込みに脳みそが疲れてしまう。だから過去の知識を使って新しいものを生み出そうとの働きが弱くなる。典型的には中学、高校、大学と受験に追われた結果、何とか大学に入った瞬間に開放感に浸ってしまい、20歳前後の一番大切な時期に脳みその発達が停止してしまう・・・
・・・だから自分で考えない大人がたくさん輩出されてしまう。指示待ちであり、過去の踏襲へのこだわりである。だから日本からは新しいアイデアやビジネスが生まれにくい。新しいことを生もうにも、「そんなことは聞いたことがない」と否定される。

敗戦後、欧米に追いつけ、追い越せと頑張った時代には、真似だけで十分だった。何かを考える必要性に乏しかった。しかし欧米に追いついた瞬間、考えないことには伸びない。現実には日本政府や企業は考えなかった。だから1980年代後半以降、日本にバブルが生まれ、90年代に崩壊した。
そこから30年以上経ってみれば、経済規模ではアメリカの背中が遠くなり、中国に抜かれ、ドイツには抜き返され、インドの足音が近づいている。それだけではなく、日本から世界に誇れる産業が消失した。それに代わる新たな産業が育っていない。
教育として求められるのは知識の詰め込みではなく、考える力の要請である。今や知識はパソコンやスマホから得られる。AIが代替してくれる。いわば人間にとっての外部記憶装置や補助装置をいかに上手に使うのか、考えるための補助とするのか、その方法の訓練が教育の根幹にある・・・

続きもあります。お読みください。

国際成人力調査、24歳で頭打ち

国際成人力調査、日本は一流」の続きです。喜んでばかりいられない分析もあります。12月11日の日経新聞「日本人の知力、24歳で頭打ち 「学べぬ大人」手薄な支援

・・・数的思考力の平均点を年齢層別でみると、若年層の16〜24歳(298.7点)が最も高かった。文科省担当者は「大学への進学率が上がり、より高度な学びに触れる機会が増えたことが背景にある」と話す。一方で25歳以降は低下の一途をたどった。

OECD平均は25〜34歳の層(272.7点)が最高点で、上位に名を連ねる北欧諸国もピークが日本より遅い。1位のフィンランド、3位のスウェーデンは35〜44歳の平均点が最も高く、同じく3位のノルウェーは25〜34歳がピークだった。
北欧諸国では、大学でのリスキリングへの経済的な支援が手厚く、学び直したい社会人向けに職務経験を評価する入試を行うといった取り組みも進んでおり、再教育を受ける人が多い。
21年発表のOECDの報告書によると、25〜65歳の仕事に関する再教育の参加率がフィンランド(56%)やスウェーデン(同)、ノルウェー(58%)では50%を上回った。OECD諸国の中でトップ層で、労働生産性も高かった。
リスキリングの先進地と呼ばれるスウェーデンは1974年に「教育休暇法」を制定。修学のために休暇を取得した場合、休暇前と同等の労働条件、賃金で復職することを保障する・・・

・・・一方、日本は出遅れが目立つ。再教育の参加率は北欧諸国を約20ポイント下回る37%で、OECD平均より3ポイント少ない。生産性は北欧諸国の半分程度で、37カ国中21位にとどまる。
企業の投資も見劣りする。厚生労働省が18年に公表した資料によると、日本の職場内訓練(OJT)を除く能力開発費は国内総生産(GDP)比で0.1%にとどまる。米国の2.08%、フランスの1.78%、ドイツの1.20%に大きく水をあけられている。
日本能率協会が23年1〜2月に約600社を対象に実施した調査では、リスキリングを「経営課題」と位置づける企業は76%に上ったが、「取り組みを始めている」という社は16%と低水準だ・・・

大学教育、教える教育から育てる教育へ

12月18日の日経新聞大学欄、日色保・経済同友会副代表幹事の「経済界が求める大学教育とは」から。

大学が実学教育を重視するなど、ビジネス界で活躍できる人づくりを進めている。その一方で若手社員の相次ぐ離職など、人材活用が進んでいない面もある。経済界は日本の大学教育に何を求めているのか。日本マクドナルドホールディングス(HD)社長兼最高経営責任者(CEO)で経済同友会副代表幹事を務める日色保氏に聞いた。

――今の大学生をどうみていますか。
「今の学生は昔に比べると、たくさんの情報が外にあることもあり、客観的に自分のことやキャリアについて捉えていると感じる。その一方で、知識に偏りがあり、大学で本来習得するべき深い思考能力を得られていない。そういった能力の開発を企業は大学に期待しているが、大学の教育はやはり『教える教育』であり、『育てる教育』になっていない。そこがやはり一番の問題なのではないか」
「ただ、どういう人材がほしいか、大学側と十分な意思疎通を今までしてこなかったという企業側の反省もある。企業側は特に、人との議論の中で問いを立てて、仮説を検証し、深く学んでいくようなコミュニケーションスキルなどを企業に入る前に身につけてほしいと考えているが、大学側はどういう教育をしたら企業で活躍できるような人材になるか、よくわかっていない状態に陥ってしまっている」

―一部の大学は即戦力の育成との言葉を使っています。
「昨日の即戦力が明日の即戦力になるとは限らない。例えば、プログラミングの知識を持っていて、多少のコードを書けるくらいの人は山ほどいる。変化が激しい中でもフレキシブルに対応できるような学び方や自分のやり方を形成できる。それこそが即戦力なのではないか」

中学教員、部活指導やりがい1割

11月28日の日経新聞夕刊に「部活指導「やりがい」1割 中学教員、負担が要因か」が載っていました。

・・・部活動業務にやりがいを感じている中学教員は1割にとどまることが27日、全日本教職員連盟の勤務環境調査で明らかになった。部活指導が教員の負担になっていることなどが要因とみられる・・・

このうち中学教員約1800人に、部活動業務全般への意欲を複数回答で尋ねたところ、「大いにやりがいを持っている」は12.0%で、「子どもの成長のために取り組んでいる」が30.7%だった。家庭の事情などにより「意欲が低い」とした人は計42.2%・・・

社会科の女性教員は理系科目より少ない

11月23日の日経新聞に「社会科の女性教員、実は理系科目より少ない」が載っていました。

・・・中学・高校の社会科の先生といえば、多くの人は「男の先生」を思い浮かべるだろう。日本では女性の社会科教員が非常に少なく、理系科目の女性教員数すら下回る。背景と影響を探った。

文部科学省の学校基本調査(2024年度速報)によると、教員に占める女性の割合は中学校で44.8%、高等学校で33.8%だった。この数字は過去最高だが、実は経済協力開発機構(OECD)加盟国で最低レベルにある。
とりわけ社会科の女性教員は突出して少ない。文科省の学校教員統計調査(22年度)によると、中学校の男性の社会科教員は男性教員全体の14.6%なのに対し、女性の社会科教員は女性教員全体の4.9%と主要5教科で最低水準だ。高校で公民科を教える女性教員はわずか2.8%で、理科や数学の半分にすら届かない。公民の教員を男女の人数比でみると男性が83%、女性が17%だ。

筑波大学教授で社会科教育学が専門の國分麻里さんは複数の要因を挙げる。まず「社会科、特に公民科の教員免許が取れる学部に進学する女性が少ない」。社会の教員免許は大学の法学部や商学部などでも取れるものの、社会科学系の女子学生の比率は36.7%と、工学系、理学系に次いで低い。欧州やシンガポール、タイでは社会科学系学生の過半数が女子だ・・・