「教育」カテゴリーアーカイブ

学習塾に中国人生徒が増加

10月28日の日経新聞夕刊に「学習塾、中国人集客うつましく 歓迎しつつも「排外」の雰囲気懸念」が載っていました。

・・・「有很多中国人 正在這里学習(たくさんの中国人が、ここで勉強しています)」。学究社が運営する小中学生向け進学塾「ena」の全校舎にこの夏、中国語で書かれた小さな張り紙が一斉に掲示された。「中国人生徒が増加するなか、歓迎の意志を示したかった」。栗崎篤史社長は意図を説明する。

学習塾業界は人口減少に悩まされ、日本人だけを相手にしていてはいずれ商売が成り立たなくなる。その一方で日本に住む若年層の中国人は増え続ける。出入国在留管理庁によると、中長期の在留資格を持つ15歳未満の在留中国人は2024年12月時点に9万人超と、10年間で約7割増えた。

中国では就職で優位に立つべく、日本以上に苛烈な受験競争下にある。長らく続いた「一人っ子政策」のひずみから、親の我が子への教育熱は高まり続ける。そんな空気を反映してか、習近平(シー・ジンピン)指導部は21年から親の経済的負担の軽減を名目に学習塾への規制を強めた。
この結果「自由で快適な教育環境を求め、日本に移住する中国人が増えている」(学習塾関係者)。都内の難関学校ではクラスに1、2人は中国人生徒がいるという。業界では優秀な中国人を集められれば合格実績も上がり、経営にもプラスとの読みもあり、こぞって囲い込みに動く。

ナガセ子会社の進学塾、四谷大塚(東京・中野)執行役員の小川智弘塾長は「少子化で市場が縮小するなか、安定した塾運営には中国人生徒が必要だ」と指摘し、中国語対応のスタッフ配置やウェブサイト開設を検討する方針を示す。
学究社も既に公式サイトの一部を中国語に対応し、中国語を話せる職員を本社に置いた。今後も中国人職員の採用を行う方針だ。
enaは公立校対策に強みを持つ。東京都内にあるenaの一部校舎では、中国人の生徒がすでに4割を占めるようになった。中高一貫の都立校を志望する中国人生徒も増えているとみられる。栗崎社長は「中国には公立こそ至高という考えがある」とみて、受け入れ体制を整える。
これまでも「SAPIX」を中心に、難関校向けの大手進学塾に通う中国人生徒が増えていると話題になっていた。塾の前には子どもの帰りを待つ中国人の母親が目立つ。大手学習塾の関係者は「埼玉県川口市など、中国にルーツを持つ生徒が8割に上る校舎もある」と明かす・・・

小中高生の半数、読書0分

10月26日の日経新聞に「「読書0分」小中高生の半数、スマホ時間長いほど短く」が載っていました。

・・・1日に全く本を読まない子どもは半数超――。ベネッセコーポレーション(岡山市)が2024年に小中高生や保護者に尋ねたところ、読書をしない(0分)との回答が52.7%で、15年調査時の34.3%から約1.5倍に増えた。一方、スマートフォンの使用時間は延びており、長いほど本を読む時間が短くなる傾向がみられた。
同社が25日までに発表した。調査はベネッセ教育総合研究所と東大社会科学研究所の共同実施で、無作為に抽出した同一の親子を対象に15年から継続して調べている。24年は7〜9月にインターネットで行い、約1万2千組から回答を得た。

24年調査で読書をしないとした割合は、小1〜3年33.6%、小4〜6年47.7%、中学生59.8%、高校生69.8%。いずれも15年に比べ14〜22ポイント増えた。1日の読書時間の平均は小4〜6年で15.6分、高校生で10.1分などで、15年に比べ小4以上で約5〜6分減った。
1日のスマホ使用時間(小4以上が回答)は、小4〜6年33.4分、中学生95.7分、高校生138.3分で、それぞれ15年から約22〜52分増えた。スマホの使用時間が0分の小4〜6年の読書時間は17.8分だったのに比べ、3時間以上だと9.5分に落ち込んだ。中学生もスマホが0分の読書時間は21.7分だったが、3時間以上は12.5分だった。
調査を担当した東大の秋田喜代美名誉教授(教育心理学)は「読書と学力は関連しており、授業の中で紙や電子の書籍に触れる機会を増やすことが必要だ」と指摘している・・・

大学への公的支出、国際平均の半分

9月10日の朝日新聞に「大学への公的支出、国際平均の半分 OECDが報告書 「社会格差生む」指摘も」が載っていました。
日本の教育への公的支出が少ないことは、以前から指摘されています。「日本は教育に熱心だ」という通説は変更しなければなりません。「日本では親は教育に熱心だけれど、政府は熱心ではない」とです。政府・与党、文科省、財務省はどう考えているのでしょうか。
緊縮財政を続けた結果です。バラマキと批判される給付金配布には熱心なようですが。「米百俵」を思い出します。予算の問題とともに、その根底にある「社会の意識」「国民の精神」の問題です。

・・・経済協力開発機構(OECD)は9日、大学など高等教育への公財政支出額(在学者1人あたり)が、日本はOECD加盟国の平均の54%にとどまるとする報告書を公表した。小学校~高校は平均より多い。大学に対する、国などの公的支出の少なさが目立つ。
また、高等教育の女性教員の割合は31%にとどまり、比べられる国の中で最低だった。

報告書によると、高等教育の在学者1人あたりの公財政支出(研究開発を含む)は、日本は8184ドル。OECD平均は1万5102ドルだった。最高はルクセンブルクの5万4384ドル、最低はメキシコの4430ドル。比べられる37カ国の中で、日本は10番目に低かった。
一方、高等教育を卒業した人の割合(25~34歳)は66%で、OECD平均(48%)より多い。少ない公的支出にもかかわらず、大学などを卒業する人が多い形だ。
日本は、幼稚園など就学前教育の公的財源の割合も低く、OECD平均(85・6%)を下回る78・2%だった。教育への投資額全体をGDP比でみても、日本は3・9%で、OECD平均(4・7%)より低かった・・・

高校では地学を学ばない

9月4日の読売新聞夕刊に「理科4分野を高校必修に 科学者が提案 非科学的なデマ拡散防止へ」が載っていました。
高校生のほとんどが、地学を学ばないのですね。東日本大震災の話をする際に、地表のプレートが衝突する仕組みから始めることにしています。投影する図は、鎌田浩毅先生に作ってもらいました。先生に「大学生でも、知らないのですね」と尋ねたら、「高校で学んでいないから」との答えでした。この図は、外国政府幹部への講義でも、活躍しています。

・・・災害や感染症を巡るデマ拡散を念頭に、科学者から「高校で理科4分野を全て学ぶようにするべきだ」との声が上がっている。大学の研究者や高校理科教員などの研究グループは4月、各分野を横断的に学ぶ新科目の創設を文部科学省などに提案した。2030年度から順次実施される次期学習指導要領での導入を求めている。

現在の高校理科の学習指導要領では、物理、化学、生物、地学の基礎のうち3科目(計6単位)か、いずれか1科目と「科学と人間生活」の計2科目(計4単位)が必修だ。4科目(計12単位)が必修だった1960年代などと比較すると、理科を学ぶ機会は減っている。
文科省によると、地震などのメカニズムも学ぶ「地学基礎」の授業を1年次に開設した普通科の公立高校は7・1%(2023年度)にとどまった。生物基礎(59・2%)や化学基礎(48・8%)とは大きな開きがある・・・

・・・非科学的なデマ拡散は相次いでおり、SNSでは「7月に日本で大地震が起こる」といううわさが広まった。気象庁の野村竜一長官は6月の記者会見で、地震の日時や場所を予測することはできないとして、「デマと考えられるので、心配する必要は一切ない」と述べた。
国立青少年教育振興機構が7月に発表した調査結果では、日米中韓の高校生に「社会に出たら理科は必要なくなる」と思うか尋ねたところ、日本は「そう思う」が45・9%に達した。2位の韓国(33・5%)を大幅に上回っており、学習指導要領を担当する文科省教育課程課は「どうすれば理科への関心を持ってもらえるかも、議論の大きなテーマだ」とする・・・

学校現場、昭和のまま

8月3日の朝日新聞に「子育て教員のリアル4」「管理職 代替見つからず現場頼み「昭和のよう」」が載っていました。
現場での変化・人不足を、個人の頑張りに頼って乗り越えようとするのは、旧軍隊や昭和の職場の特徴でした。そこにあるのは、現場任せ、現場の問題に気づかない、知らないふりを決め込む、管理者と中央機関の怠慢です。この現場任せ・精神力頼みは、一定の成果を上げますが、一時しのぎはできても、限界があり、永続はしません。

・・・子育てとの両立に悩む教員がいる一方で、校長ら管理職や教育委員会の職員も悩んでいる。
「内心は困る」。東京都内の公立中学校長の男性(53)は、教員の育児休業などで欠員が生じる事態をこう話す。
区の教育委員会に勤務していた2年前、ある小学校で、同じ時期に5人の教員が育休の取得を希望した。男性は、代理の講師を探したが、5人分を埋めることはできなかった。結局、時期がかぶらないよう順番に育休を取ることになった。男性は「余っている先生なんていない。誰かが欠けると回らない状況だ」。
校長となった今は、他校の代替の教員らの情報を仕入れ、任期が切れる前に水面下で声をかける。今年も冬ごろに産休に入る教員がいるため、代理の教員を探しているが、すでに1人には断られた。
男性は「人材を増やして『誰が抜けても大丈夫』という状況にしないといけない」と話す。ただ、教員を目指す学生は多くないし、学校に求められる仕事は減らない。学校内で欠員が出れば、ほかの教員で補うのが現状だ。「教員の熱量に頼った仕組みで、学校だけまだ昭和にいるようだ」・・・

・・・状況を変えようと働き方改革に取り組んできた人もいる。東京都内の小学校で校長を11年務め、今は再任用の教員として練馬区の小学校で働く吉川文章さん(63)だ。
20年以上教員として働いてきた。「(学校に)残ってなんぼの世界だった」。働き方を変えようと思ったのは、校長になってから。2018年ごろ、労働時間の長さから教員の「ブラックぶり」が話題となる一方で、仕事と私生活の両立を進める管理職であることを誓う「イクボス宣言」が自治体や企業などで出されていたのが、目にとまった。練馬区立北町西小の校長だった19年、「イクボス宣言」を出した。
宣言の内容はこうだ。「育児をしながら仕事をする職員を応援します」「病気でなければ休暇が取りにくい雰囲気を変えるよう努力します」「仕事を効率的に終わらせ早く帰る部下を評価します」
まず、自身が率先して早く帰るようにした。職員室全体に「早く帰ってもいい」という空気が生まれた・・・