カテゴリー別アーカイブ: 社会の見方

フランスワインと日本酒の輸出額

コンテンツ産業輸出額4.7兆円」の続きにもなります。

お酒の輸出額を、調べてみました。1ユーロを150円とすると(最近は160円程度ですが)。
フランスのワインとスピリッツの輸出総額162億ユーロ(2023年)、2兆4300億円
イタリアワインの輸出金額は63億ユーロ(2020年)、9450億円。
日本酒の輸出総額は411億円(2023年)。
・日本のワイン輸入額は、2476億円程度(私の計算が正しければ)。

頑張れ、日本酒。私が飲んでいる分には、輸出額は増えませんが。

近代文学の終焉

朝日新聞「柄谷行人回想録」、12月11日と18日は「近代文学の終焉」でした。小説は、読者とは違う世界を見せてくれるものです。すると、社会に差異がなくなり、また理想がなくなると、小説の出番はなくなるのでしょうか。

柄谷さんが、2003年に近畿大で行った講演で、翌年「早稲田文学」に掲載された「近代文学の終り」が説明されています。
「近代的な国民国家の成立には、文学、とりわけ近代小説が重要な役割を果たしたことを確認しつつ、その役割は終えたと指摘した。社会階層などでバラバラだった人々を、“想像の共同体”としての国民(ネーション)としてつなぎ合わせる過程で、共感を生み出す小説が基盤となった。娯楽として軽視されていた小説の地位は向上し、より真実らしさを表現するため、リアリズムが課題となった。しかし、国民国家が世界各地に広がったこと、さらに映画などよりリアリティーを喚起しやすい形式が発達したことなどが重なって、小説は特権的な地位を失っていった、とみる。」

――柄谷さんは、70年代には中上健次や村上春樹といった作家が登場し、リアリズム中心の近代文学が抑圧した言葉遊びやパロディー、物語といった要素を持つ文学が復活してきたと見ていました。しかし、90年代にはそうした文学も急速に力を失った、とも。なぜでしょう。
「複雑な要因がありますが、一つの理由としてあげられるのは、近代小説が、“差異”から出てきた、ということでしょうか。例えば、ゴーゴリ独特のリアリズムは、先進国では失われた濃密な共同体がロシアに残っていたことから生まれた。
日本の夏目漱石も、コロンビアのガルシア・マルケスも、それぞれの社会独特の背景から生まれた。当たり前のようだけど、重要です」

――国による発展の違いが文学の源になったわけですか。
「米国国内での不均衡が背景にあるフォークナーも、同じです。都市と農村、先進国と後進国、男性と女性のような差異が一つの大きな動力になった。こうした差異は高度成長とグローバリゼーションによって、消滅の方向に向かいました」

――社会や人々の均質化で描くことが減った、と。しかし、差別や理不尽は残っています。
「格差がなくなること自体は、当然望ましい。その上で、ひどくなっている問題も多い。だけど、漱石やフォークナー、戦後文学の頃までは、差異をあぶり出すことによって新たな共同性を築くことができた。今は、サルトルのような世界的な連帯を牽引できる作家もいません。文学だけではなく、思想にも宗教にも求心力がない」

景気予測

経済紙などが、今年の景気予測を書いています。財界人や専門家に、今年の株価、円ドル相場、経済成長率、インフレ率などを予測してもらっているのです。これはこれで興味深く、参考になります。
ところで、この人たちが去年の同時期に予測した数値は、どの程度あたったのでしょうか、外れたのでしょうか。たぶん、株価がここまで上がると予測した人は少なかったと思います。
今年の予測を書くなら、昨年の予測と実績の比較も載せてほしいですね。どこかに載っているのかな。

経済予測は、難しいものです。それが1年分であっても、10年分であっても。と改めて思います。

消費電力の半分はモーター

12月15日の日経新聞「エネルギーの新秩序・国富を考える」は「1%改善モーターに脚光」でした。

国際エネルギー機関(IEA)によると、21年の世界の消費電力量は24兆700億キロワット時で、この半分はモーターが消費する電力だそうです。
モーターの性能を1%上げれば(消費電力を1%減らせば)、1200億キロワット時の省エネになり、それは原発13.5基分になるのだそうです。

モーターは、電車、エレベーター、冷暖房機など様々な場面で使われていることは知っていましたが、電力消費の半分とは、知りませんでした。

新しい英単語「脳の腐敗(brain rot)」

12月16日の朝日新聞1面コラム「天声人語」は「「森の生活」から170年」でした。
・・・オックスフォード英語辞典の出版社が、今年の単語に「脳の腐敗(brain rot)」を選んだと発表した。最初に使ったのはソローだが、現在は10~20代のデジタル世代の間に広がっているという▼「取るに足らない、特にオンラインコンテンツの過剰消費による精神状態や知的能力の低下」と定義されている。昨年から使用頻度が230%も増えたとか・・・

うまく表現した、わかりやすい英語ですね。日本語にしたら、何でしょうか。「腐敗脳」「脳腐れ」ではどうでしょうか。
天声人語の書き出しは、次のような文章です。
・・・19世紀の米作家で思想家のヘンリー・D・ソローは20代の末にボストン郊外の湖畔に小屋を建て、2年余りを過ごした。自然のなかで自給自足の生活をしつつ、思索を重ねた日々の記録『ウォールデン 森の生活』は、今でも世界中の自然愛好家らに読み継がれている▼ソローは結びで、複雑な考え方や多様な解釈を軽視する社会の傾向を批判した。精神と知性の衰退につながると警告し、こう問いかけた。「英国がジャガイモの腐敗を治す努力をする一方で、より広く致命的に蔓延する脳の腐敗を治す努力はしないのか?」・・・

Oxford University Press のページ
当時はジャガイモの疫病で食糧難にあったことが、この背景にあります。4年ほどで収束したとありますが、良い対処法が見つかったのでしょうか。現在では、予防対策が採られているようです。

では、今回のオンラインによる「脳腐れ」を防ぐ薬は何でしょうか。オックスフォード大学出版局の説明には、アメリカの精神衛生センターの処方箋もリンクされています(機械に翻訳してもらいます)。
・脳の衰えは、スクリーンを見る時間が長すぎることが原因で、精神的な混乱、無気力、注意力の低下、認知力の低下などの症状が現れる状態です。
・脳を衰弱させる行動の 1 つにドゥームスクロールがあります。これは、長時間にわたってインターネット上で否定的で悲惨なニュースを検索する行為です。
・脳の衰えの結果、情報の整理、問題の解決、意思決定、情報の想起が困難になります。
・脳の衰えを防ぐ、または軽減するには、画面を見る時間を制限し、気を散らすアプリを携帯電話から削除し、不要な通知をオフにしてみてください。

ドゥームスクロールについては、ウィキペディアは次のように説明しています。
ドゥームスクロールまたはドゥームサーフィンとは、ウェブやソーシャルメディア上で大量のニュース、特にネガティブなニュースを読むことに過度の時間を費やす行為である。ドゥームスクロールは、短編動画やソーシャルメディアのコンテンツを長時間にわたって止まることなく過度に消費することとも定義される。この概念は、特にCOVID-19パンデミックの文脈で、2020年頃に造られた。
調査や研究によると、ドゥームスクロールは若者の間で主流である。これはインターネット依存症の一種と考えることができる。2019年、米国科学アカデミーの研究では、ドゥームスクロールが精神的および身体的健康の低下に関連している可能性があることが判明した。ドゥームスクロールの理由は、ネガティブバイアス、取り残されることへの恐怖、不確実性をコントロールしようとする試みなど、数多く挙げられている。