カテゴリーアーカイブ:社会の見方

中学生の英語力が低下

2026年4月5日   岡本全勝

3月22日の読売新聞言論欄に、古沢由紀子・編集委員の「中学英語 基礎定着に課題」が載っていました。
・・・ 小学校で英語を教科化したにもかかわらず、中学校段階の英語力が低下したという調査結果が波紋を広げている。授業で会話などの活動が増えた一方で、文法や語彙の基礎知識が定着していないとの指摘もある。文部科学省はコミュニケーション重視の方向性は維持しつつ、小中高校の次期学習指導要領で英語教育の内容を見直す方針だ。今の時代に求められる「使える英語」の習得に何が必要なのか。

昨年7月に公表された学力調査の結果を受け、文科省や教育関係者に衝撃が走った。全国の小学6年と中学3年計約10万人を抽出して2024年に行われた「経年変化分析調査」。小学校の国語と算数、中学校の国語、数学、英語を対象に3年に1回程度実施されており、前回(21年)に比べて全教科の成績(スコア)が低下した。その中で最も低下幅が大きいのが中学の英語だった。
同調査は毎回大半が同じ問題(非公表)で、学力の変化を把握しやすい。16年に実施されなかった英語は2回目の調査で、文科省の担当者は20年以降の新型コロナウイルスの流行が「話す活動などに影響した可能性がある」とみる。

英語教育に詳しい斉田智里・横浜国立大教授は「話すことだけでなく、『聞く』『読む』『書く』力を問う問題でも全体的に正答率が低下し、英文を正確に書く問題で顕著に下がった」と分析。「コミュニケーションを重視する英語教育の方向性は間違っていないが、授業での文法指導や反復練習の時間が不足している可能性があり、基礎が定着していない生徒の支援が必要だ」と指摘する。
同様の傾向は23年度に行われた全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)からもうかがえる。過去の調査と出題は異なるが、4年ぶりに行われた中3の英語の平均正答率は前回から大きく低下し、デジタル端末を使い「話す」力を測る問題では1問もできない生徒が6割を超えた。

その一方で、一定水準の英語力を持つ生徒の増加を示す調査結果もある。文科省の24年度の「英語教育実施状況調査」では、中3で実用英語技能検定(英検)3級以上、高3で同準2級以上の英語力を持つ公立校の生徒はいずれも増加傾向だ。入試で英検などが重視される影響も大きいとみられ、学校現場には「塾で対策をする生徒が上位の級を取得し、二極化している」との見方がある・・・

高等教育の問題

2026年4月4日   岡本全勝

3月11日の日経新聞経済教室は、本田由紀・東京大学教授の「高等教育予算と採用形態を見直せ」でした。 高等教育と人材育成について、2つの問題を指摘しています。

一つは、高等教育への公的資金の少なさです。
経済協力開発機構が2025年9月に公表した、国別の教育段階別公財政支出に関する図の解説に、次のように書かれています。
「他のほとんどの国とは対照的に、日本の高等教育段階(研究開発を含む)への公財政支出は、初等教育から高等教育以外の中等教育段階よりも低い。日本の高等教育の在学者1人当たりの公財政教育支出は8184米ドルであるのに比べ、OECD平均は15102米ドルである」
高等教育は内容の水準が高度であるため、必要となる教員や費用は他の教育段階よりも高くなるのは当然です。なぜ日本は逆転しているか。それは私立大学生の割合が大きく、公的補助も少ないからです。そして私立大学では国立大学に比べ、理科系が極端に少なく、学生100人当たりの教員数も半分です。大教室での講義で、経営を維持しています。
これを見ると、日本は決して教育に熱心な国ではありません。

もう一つは、大学で学んだことと関係なく、企業が選考採用することです。
かつての就職協定が廃止されて以降、大学3年生、場合によっては2年生からインターンシップで「内定」が出る例があるなど、採用活動の早期化が進んでいます。それは、高い学費を払って大学で学んだ成果とは関係なく、人柄などで採用が決まるということです。
その結果、2024年12月に公表された、第2回OECDの国際成人力調査結果では、日本は学歴・資格に関する「オーバークオリフィケーション」(取得している学歴・資格よりも低い水準の仕事をしている者)、スキルに関する「アンダースキル」(担当している仕事に必要なスキルが不足していること)、専攻に関する「ミスマッチ」(教育機関で学んだ専攻分野とは異なる仕事をしていること)のいずれも、OECD平均の比較して著しく多いのだそうです。

さらに、欧州のビジネススクールIMDの「世界競争力年鑑2025」によれば、日本の経済界は、管理職の国際経験、迅速な意思決定、機会と脅威対応力など複数の点で、69か国中69位、すなわち最下位です。日本経済の再活性化には、高等教育に責任を転嫁するのではなく、企業内部の変革が不可欠であると、本田さんは指摘しています。

福井ひとし氏の公文書徘徊11

2026年4月2日   岡本全勝

アジア時報』4月号に、福井ひとし氏の連載「一片の冰心、玉壺にありや?―公文書界隈を徘徊する」第11回「雪のむら消え(下)―文官たちの「二・二六」」が載りました。詳しくは、記事を読んでいただくとして。

二・二六事件の裁判記録。松本清張さんも、もう現存していないと考えていた資料が、国立公文書館に残っているのです。GHQに接収された後、厚生省を経て、法務省に渡され、それが後に発見されます。
裁判といっても通常の裁判所ではなく、陸軍の軍法会議です。なるほど、陸軍内に検事役や裁判官役がいたのですね。今回の記事は、それを丹念に追っています。

今回は、民間人が対象です。北一輝と西田税は思想的主導者として死刑になりますが、それ以外にも関わった民間人がいたのです。特に、亀川哲也さん。聞いたことのない名前ですが、暗躍しています。ほかに、日立創業者・久原房之助、明治大学総長・鵜澤総明、共産党書記長・徳田球一、柳家小さん師匠、津雲国利さんなどが出てきます。
25ページにわたる力作です。

20代と50代、賃金上昇に世代間格差

2026年4月1日   岡本全勝

3月15日の朝日新聞に「20代と50代、賃金上昇に世代間格差」が載っていました。

・・・若手の賃金が大きく伸びる一方で、中高年は伸び悩んでいます。賃上げの動きが広がるなか、世代間の賃金上昇のばらつきが新たな課題です。その傾向は20代と50代に象徴的に表れています。
厚生労働省「賃金構造基本統計調査(速報)」によると、2025年の大卒20代(20~24歳と25~29歳)は前年比4~5%台の伸び。一方で、大卒50代(50~54歳と55~59歳)は1%未満だった。
大卒の男女別もわかる24年の値で20年と比べると、就職期にあたる20~24歳の賃金は男性9・8%増、女性10・5%増。一方で、50~54歳は男性0・9%減、女性0・2%減だった。近年の賃上げ局面では年代による賃金上昇のばらつきが鮮明になっている。

第一生命経済研究所の熊野英生氏は「若手は転職が活発で、労働需給の逼迫(人手不足)が賃金上昇に反映されやすい。一方で50~54歳の就職氷河期世代は転職が少なく、世代間格差が生じている。氷河期世代の労働移動がもっと活発になるような環境整備が必要だ」と指摘する・・・

・・・賃金アップは、年齢などによる定期昇給と全体水準を底上げするベースアップ(ベア)に大きく分かれる。企業にとって悩ましいのは賃上げの原資の振り向け方だ。
人材採用のため、初任給は同業他社と比べて見劣りさせられない。初任給を上げれば若手の賃金も上げないと、既存社員と新入社員で逆転しかねない。賃上げ原資は若年層へまわりやすい構図にあるが、中高年層にも目配りしないと数多い社員の士気にかかわる。
経団連が労務担当役員らに聞いた「2025年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」でみると、ベアの配分方法(複数回答)は「一律定額」55%、「職務・資格別」24%に続き、「若年層(30歳程度まで)」への重点配分が23%と多い。「中堅層(30~45歳程度)」は9%、「ベテラン層(45歳程度以上)」は1%だった・・・

・・・職場では管理職と若手、家庭では親と子。その象徴的な年代の50代と20代を比べると、労働市場での違いが浮かび上がる。
人口は20代が1272万(26年2月)と50代より3割少なく、働き手として希少な存在。就職期の環境は50代後半がバブル経済末期、50代前半が就職氷河期と、同じ年代でも差が大きい。20代は学生時代や就職期にコロナ禍を経験し、デフレからインフレへの転換期を若手社員として過ごしている。
お金に対する意識はどのように違うか。金融経済教育推進機構(J―FLEC〈ジェイフレック〉)の「家計の金融行動に関する世論調査2025年」によると、経済的な豊かさを「実感」「ある程度実感」している世帯の合計は20代58%、50代35%と開きがある・・・

美術館、日本の特徴

2026年3月28日   岡本全勝

3月9日の日経新聞に「「日本のモナリザ」どこ? 名品乏しい常設展、国は文化財通年公開へ」が載っていました。

・・・ルーヴル美術館の「モナリザ」鑑賞はパリ観光の王道ルートだが、日本では観光客にとっての「定番」が乏しい。目玉となる作品が短期間しか公開されていないのが一因だ。文化庁は2027年度までに国立美術館の所蔵品を原則通年展示にする方針だ。ただ日本の文化財は傷みやすい素材も多く、保存と活用のバランスが課題となる・・・

記事では、アムステルダム国立美術館の「夜警」、ワシントンナショナルギャラリーの「散歩、日傘をさす女性」などが常設展示され観光資源となっているのに対し、日本では、俵屋宗達「風神雷神図屏風」(京都国立博物館)、草間彌生さんの作品群(国立国際美術館)など海外の愛好家も多い作品が通年展示されていないことが指摘されています。

記事にも書かれているように、これには次のような背景もあります。すなわち、日本の博物館や美術館では目玉の作品を常設展示するのではなく、海外の著名な作品を呼んできたり、ある芸術家の作品を集めた企画展が多いのです。これは、日本に居ながらにして世界の名品を見ることができるという利点がありますが、海外からの訪問客には受けませんね。

ここにも、明治以来、海外の文物を輸入してきた日本の姿が見えます。博物館はそれを紹介する機能・場だったのです。
先日、東京国立近代美術館の下村観山展に行きましたが、良かったです。そして、外国からのお客さんも多かったです。
もっと自信を持って、日本の作品を海外客に見てもらいましょう。日本の美術品を海外の人に見てもらうのは、立派な「輸出産業」であり、日本の地位を引き上げるもの(ソフトパワー)です。フランスなどに負けない文化立国を目指したいものです。
他方で、過去の日本文化を誇るだけでなく、未来に何を残すかも課題です。