カテゴリー別アーカイブ: 明るい課長講座

生き様-明るい課長講座

デジタル化の壁、中間管理職

1月19日の日経新聞に「DXの壁は中間管理職? 40代「関わりたくない」4割」という調査結果が載っていました。
・・・大企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)は中堅社員がボトルネックとなっている可能性がある。DXに関する意識調査で40代の4割が「関わりたくない」と回答し、世代別で最多だった。中間管理職は短期で成果を求められることに加え、失敗しても挑戦を評価する人事制度がないことが少なくない。前向きにDXに取り組む動機づけが課題となる。

「上から『とにかくやれ』と言われても何から手を付けていいか分からない」。大手製造業で働く40代社員はこぼす。40代は自ら業務をこなしながら、部下の育成や労務管理をするプレイングマネジャーは多い。子育てや介護もある。デジタルを使った新規事業の開発など成果が出るまで時間のかかるDXに時間を割く余裕はない・・・

・・・日本の中堅社員のDXに対する後ろ向きな意見は世界でも突出している。米IT(情報技術)企業のABBYYが実施した調査で自社のデジタル化について聞いたところ、「十分に準備している」との回答は日本の中間管理職(マネジャー)が37%と、米国(75%)やドイツ(61%)を大きく下回った。パナソニックの玉置肇最高情報責任者(CIO)は「欧米企業は意思決定がトップダウンなのに対し、日本はボトムアップも重視するからだ」と説明する。
経営者の決めた方向性に向かってベクトルを合わせて一気に走る欧米企業と比べると日本は合意形成に時間をかけ、スピードが遅い。経験豊かな中堅社員は仕事のやり方を変えるのが簡単ではないことを熟知しているからこそ、後ろ向きな声が多いという見立てだ・・・

桜宮高、不祥事からの再生

1月15日の朝日新聞スポーツ欄に「9年前の激震地で進む改革 大阪・桜宮高校長「変わった姿をみて」」が載っていました。
・・・9年前のあの痛ましい出来事の舞台が、部活動改革の最前線を歩んでいる。
大阪市立桜宮高。
男子バスケットボール部主将が、顧問から受けた暴力などを理由に自死したことが明らかになったのが、2013年1月。スポーツ界で暴力撲滅への本格的な努力が始まるターニングポイントとなる激震だった。
以来、二度と同じことが起きない学校づくりを進めてきた。
生徒の約4割が人間スポーツ科学科。15の運動部活動は今も盛んで、全国大会や近畿大会に出る部も珍しくない。
「勝つことは目指します。でも、それ以上に、生徒が自分たちで考えられる力をつけることを、各部の顧問が意識しています」と森口愛太郎校長。勝利至上主義ではなく、生徒主体のプロセスを重視することで、暴力との決別を図ってきた・・・

・・・そんな中、桜宮高では昨年11月から休日に都島区の中学生を対象としたスポーツ体験会を始めた。バスケットボール、サッカー、バレーボール、陸上、ボートの五つ。各部の顧問と部員たちが手本を見せ、アドバイスなどをする。11月は93人、12月は52人の中学生が参加した。
これは中学の部活動を地域に委ねる実践研究の一環だ・・・
・・・桜宮高も歓迎する。「授業の一環でもあるコーチングの実践になる」という同校の指導者の声が、今月13日に開かれた市の有識者会議でも報告された。高校生が下の世代の指導に携わり、その難しさと面白さを知る。勝つことだけでない、スポーツを通じた視野が広がる。
森口校長は言う。
「どこかで体罰事案があれば、今もうちの名前が出る。それは仕方ない。だからこそ、ありのままを見ていただきたいのです。これだけ変わってきたということを」・・・

自治体職員の心の不調

12月27日の日経新聞が「心の不調で休職2.1万人 全国の自治体職員「職場の人間関係」60%」を伝えていました。
・・・総務省は26日までに、全国の自治体職員のメンタルヘルス(心の健康)に関する初の大規模調査の結果を公表した。2020年度に精神疾患などで1週間以上休んだ職員は、全体(約96万人)の2.3%に当たる2万1676人。休職の理由は「職場の人間関係」が60%を超えた。結果を踏まえ、同省などが21年度中に対応策を取りまとめる・・・

・・・休職者がいた1562自治体に主な休職理由を3つ尋ねたところ、上司や部下との「人間関係」を挙げたのが60.7%と最多で、「業務内容の難しさ」が42.8%、「本人の性格」が30.9%だった。住民の苦情対応を含む「職場外の人との関係」も7.8%あった。
休職者を役職別に見ると、管理職ではない「係員」が1万5724人(72.5%)に上った。主に若手職員が、上司とのやりとりでストレスを感じたり、業務に不慣れなことで負荷が高まったりしたとみられる。
休職者が増加傾向だと回答した1399自治体に対し、その理由を複数回答で聞いたところ「業務の複雑化」「1人当たり業務量の増加」が60%を超えた。新型コロナウイルス感染症への対応に追われた都道府県や政令市などでは「新型コロナに伴う業務が増えた」との回答も目立った・・・

調査結果は「地方公務員のメンタルヘルス対策の現況-令和2年度メンタルヘルス対策に係るアンケート調査の概要-」(12月24日発表)です。
統計にも表れていますが、私の体験でも、心の不調の職員が増えています。
アンケートにも出ていますが、管理職の悩みは、そのような職員の増加とともに、どのように対応して良いか分からないことです。心の健康のための研修は受けているのですが、病人が発生した場合にどのように対応したら良いかは、研修で教えてもらうことが少なく、経験もありません。管理職が悩む事項の一つです。
私の推量では、組織には約3%程度、そのような病人が発生します。この調査では1週間以上休んだ職員が2.3%ですから、病人全体ではもっと多いのかもしれません。その人たちへの対応は、管理職にとって必須科目になりました。
人事当局にとっても、そのような職員が生じた場合の対応に多くの労力が取られ、欠員補充をどうするかも大きな仕事です。

講義や講演後の質問

講義や講演の際に思うことです。
終わりに、質問の時間を取ります。そのときに、適確な質問が出るとうれしいです。「おお、よく聞いてくれて、理解しているなあ」とです。時に、私が直ちに答えられないような質問もあります。これは、私にとっても勉強になります。
時間を超過して、いったん閉講して質問者に残ってもらう場合もあります。これは(後の予定がないなら)うれしいことです。
逆に、何も質問が出ないと、がっかりします。「この人たちは、私の話を理解してくれたのだろうか」とです。

座席の埋まり方も、気になります。広い会場で後ろの席から埋まっていて、前の席に人が座っていないことがあります。
「こんなよい話を聞きに来たのに、なんで後ろに座るのか」と、腹立たしくなります。

学校の授業にあっては、先生が指導してはどうでしょうか。
・講義や講演について、質疑応答の時間があれば、質問するべき、あるいは感想を述べるべきであること。
・講義中には、「もし指名されたらどのような質問をするか、意見を述べるか」を考えながら聞くこと。
・講師は、講義中も、どの聴衆が良く効いているか、顔と表情を見ていること。適確な質問をした学生には、良い評価を与えること。
・採用面接なら、うつむいている学生や何も質問しない学生より、しっかり聞いて質問する学生を採用すること。

新しい試みに反対する人、後押しする人、実現する人4

新しい試みに反対する人、後押しする人、実現する人3」の続きです。
不思議なのは、明治の官僚、終戦直後から経済発展期の官僚は、進取の気風を持っていたことです。先進国に遅れた日本が追いつくために、敗戦で荒廃した日本を立て直すために、新しいことに次々と挑戦しました。それが、いつの間にか現状維持派に変質したのです。
たぶん、先進国に追いついたと思ったときから、制度を輸入し完成させたと思ったときから、この変質が進んだのだと思います。この問題を「制度を所管するのか、問題を所管するのか。」で解説したことがあります。

官僚志望者が減っていること、東大卒業生の優秀な人たちが官僚を選ばなくなっているとのことです。それは官庁にとっては困ったことですが、日本社会にとって喜ばしいことかもしれません。
現状維持だけなら、優秀な職員は不要です。新しいことに挑戦したい若者は、それが活かせる職場に行くべきです。他方で、優秀な職員を採用したいなら、官庁も彼らが能力を発揮できる職場に変える必要があります。

さて、どのようにしたら、改革派(変えてみよう派)を主流にすることができるか。
一つには、政治主導がその役割を果たすことでしょう。改革の方向を示し、官僚に案を考えさせ、一緒にそれを実現させる子とっです。
もう一つは、役所の上司たちが、改革の気風への転換を進めることでしょう。「このままでは、国民に評価されない」という危機意識を持つことです。改革案の問題点を指摘するのは必要ですが、そこで終わるのではなく、どうしたら改革案が実現するか、一緒になって考えてください。

マスメディアには、「日本は一流国でなくなった。官僚や公務員も改革を進めるべきだ」と、改革をあおってほしいです。
そして、少々の失敗にも、温かい目で見守ってください。新しい挑戦で問題が出ても、それを批判するのではなく、「その問題点を解決して、改革を実現せよ」と応援してください。最初から完璧な改革案はありません。それを求めていると、先送りになって、改革は進みません。
戦後日本の革新勢力と呼ばれた人や言論人は、「憲法を守れ」から始まって、現状維持派が多かったようです。このねじれも、現状維持を支援しています。そこから脱皮してほしいです。

もちろん、何でも改革すればよいという訳ではありません。すると、霞が関にとっても、日本社会にとっても、何を誰がどのように変えていくか。それを提示し議論する必要があるのでしょう。
しかし何にもまして、役所の前例踏襲の気風と先送りする体質は変えないと、官僚機構は社会の変化に遅れ、国民からの評価はさらに下がるでしょう。
この項、ひとまず終わり。