カテゴリー別アーカイブ: 仕事の仕方

生き様-仕事の仕方

責任者は何と戦うか。その1、事態の把握と戦う

先日から、「責任者は何と戦うか」というテーマを考えていたので、その件について書きます。抽象的な話で、理解しにくいでしょうが、お許しください。
第一の事例は、危機が起きたときです。自然災害(例えば地震や津波)、大事故(原発事故、工場の爆発)、事件(組織内の不祥事)などが起きた場合です。
戦わなければならない「敵」の第一は、「事態」です。今起きている事態を把握できているか、そして掌握できているか。それとも、できていないか。これが、「勝てるか、負けるか」の分かれ道になります。把握は全体の情報を持っていること、掌握はコントロールできていることと、しておきましょう。
事態を把握・掌握できておれば、対応は容易です。しかし、大きな危機の場合は、全体像を把握することは困難です。その場合は、情報不足を想像力で補う必要があります。そして、この先どのような事態になるかという「予想」も必要です。相手が自然やモノなので、人を相手にするよりは、予想は楽な面もあります。相手が人だと、次にどんな手を打ってくるか、可能性が広がり、予測が大変です。
その情報や予測を基に、先手を打つことができるか、後手に回るか。攻めて行くか、受け身に回るか。これで、事態が収束できるかどうかが、決まります。さらに、周囲の人・マスコミ・国民が、責任者を見る目が違ってきます。
すなわち、同じ大きな被害であっても、「責任者が把握し対策を打っている(それでもこれだけの被害になっている)」と皆が思うか、「責任者が事態を掌握できていない(だから被害がこんなに広がっている)」と思われるかの違いです。「後手に回っている」という、新聞記事の見出しを想像してください。この項、続く。

日本料理職人の養成

読売新聞「時代の証言者」は、美濃吉の佐竹力総(さたけ りきふさ)社長です。8月27日に、調理人の養成について書かれています。
和食店では、厳しい徒弟制度のイメージがあります。また、何年修行して、どのくらいの技術を身につけたら一人前になるのかわからないことも、不安材料です。美濃吉では、独自のカリキュラム制度を設けて、従来の約半分の8年間で、調理長を育てるのだそうです。
・・調理人を目指して入社した社員にはまず、「調理社員課業一覧表」というノートが渡されます。衛生管理、漬物の処理、炊飯、魚の下準備、揚げ物、焼き物、煮物、食器の盛りつけ、原価計算、献立の作成、部下の管理・指導など、簡単なものから順に17項目の課題と、課題を何年目に習得すればいいかの目安が記されています。
1人で悩まないように、新入社員には、料理長による個別カウンセリングや集合研修の場を作ったので、退職者が減りました。
すべて終了すれば、晴れて美濃吉の料理長に。高級業態の本店竹茂楼と東京の新宿店は別格ですが、その他18店舗のどこかを任されます。20代で抜擢された社員もおります・・

この世界にも、このような「近代化」「見える化」を、導入しておられるのですね。しかも、調理の各分野だけでなく、衛生管理や原価計算、さらに献立の作成、部下の管理・指導まで。確かに、料理長になるには、それらも必要ですね。調理の腕が良いだけでは、良い料理長になれません。私は別の世界にいますが、勉強になります(参照『明るい係長講座』中級編p20「口伝よりマニュアル」)。
「企業秘密」でしょうが、一度そのノートを、見せてもらいたいものです。もちろん、もっとも肝心な「調理の腕前」は、マニュアルだけでは教えられない、身につかないのでしょうが。
また、料亭では、派遣業者から職人を派遣してもらう形態が多いと、かつて聞いたことがあります。その点については、次のように話しておられます。
・・調理人の自社育成を始めたのは父です。1960年代後半、京料理界では前代未聞の大改革でした。
といいますのも、当時、「入れ方」という調理人派遣業者から、2、3年単位で派遣してもらうのが一般的でした。「包丁一本さらに巻いて」を地でいく職人の頭が、弟子数人を率いてチームでやって来ます。宴会の途中でお客様から料理に文句がついて、調理場に伝えたとしましょう。腹を立てて、「なら、上がらせてもらいます」と、仕事を放棄し、チームごと引き揚げてしまうことがありました。「総上がり」といって、本当に困りものでした・・

職員を育てる、会社の方針の違い

読売新聞インターネット記事「人の育て方が全く違った。JR北海道、JR東と意見交換」(8月23日)から。JR北海道では、列車の出火や発煙事故が相次いでいて、国土交通省の指導を受け、JR東日本に技術支援を求めています。
・・23日の意見交換会には、両社の車両部長ら計9人が出席し、車両の検査態勢や技術者の育成方法などを、非公開で話し合った。JR東からは、技術者のリーダーを育成するために2年間の専門教育を行っていることが紹介された。JR北海道では、数日間の短期教育が中心だという。
会合終了後、JR北海道の難波寿雄車両部長は「人の育て方が全く違った。長期の教育を考えなければならないと感じた」と話した・・

立ち止まって考える

また、あっという間に1週間が終わり、7月も終わって、今日は8月3日。毎日、昼も夜も忙しく、仕事も進んでいるのですが。立ち止まって振り返ると、「はて、今月は何をしたっけ」と、直ちには成果が頭に浮かびません。
私は、しばしば部下に、「長い説明は不要なので、3つだけ言ってくれ」と、要点だけを求めます。他人にはそれを求めておきながら、我が身を振り返ると、整理できていません。
さらに、部下には、「3か月、6か月、1年という期間で、仕事の計画を立て、成果を計ってくれ」と言っているのに・・。
今日は土曜日。職場でゆっくりと、たまった書類の片付けをしつつ、手帳を見ながら、1か月を振り返りました。ところが、毎日の仕事をいくら細かく見ても、1か月間の成果は出てきません。手帳では、1か月や半年の仕事について、計画を立て、結果を評価することはできないのです。
拙著『新地方自治入門-行政の現在と未来』で、フランスの歴史学者フェルナン・ブローデルの考えを借りて、私たちの生活時間を、「短い時間」「中くらいの時間」「長い時間」の3つの次元で考えるべきだと、述べました(p254)。毎日忙しくしている仕事と、1か月で行った主な仕事と、半年間の成果は、別の次元・別の種類のものなのです。
復興庁では、7月は、2日に官邸で復興推進会議を開きました。その場で、与党から追加提言をもらい、他方で「新しい東北の創造」の方針を説明しました。今月は、この2つの課題を進めました
住宅やインフラの復旧は、着実に進んでいます。担当班が、工程表を見直してくれました。29日には、総理に、石巻市で完成し入居したばかりの住宅を見てもらいました。
とは言いつつ、復旧は被災現場で行われ、それぞれの課題については各参事官ががんばってくれています。私の仕事は、彼らの相談に乗ることと、全体の段取りを考えることです。「これだけのことを達成した」とは、言いにくい職務です。
庁内では、霞ヶ関での人事異動とともに、たくさんの職員の異動がありました。新しく来た職員には、オリエンテーションが必要です。また、昨今のソーシャルメディアの利用方法や情報管理については、全職員に注意喚起や研修も必要です。復興庁は出先を入れて450人の組織ですが、組織となると、このような「職員管理」も必要になります。
他方で、各省の幹部の知人が、おおぜい退職し、挨拶に来てくださいました。寂しいことです。

夜の残業から早朝勤務への転換

2日の日経新聞が、伊藤忠商事が、社員の労働時間を朝方にシフトさせ、残業を減らすための賃金制度を導入すると、伝えていました。時間外手当の割増率を、夕方以降の残業より、早朝勤務の方が高くなるように、見なおすのだそうです。
公務員もそうですが、夜に残業したら残業手当が付くのですが(管理職はつきません)、早朝に時間外勤務をしても、手当は付きません。伊藤忠の新しい制度は、よい試みですね。さらに、夜10時以降の深夜残業を禁止し、完全消灯するのだそうです。
課題は、社員が自宅に仕事を持ち帰る「サービス残業」への対応だとも、書かれています。
霞が関の公務員の場合は、仕事量の多さの他に、国会待機という「退庁できない仕組み(慣習)」があるので、これが大きな課題です。