カテゴリー別アーカイブ: 仕事の仕方

生き様-仕事の仕方

1、2、3の次は、0

説明メモを作る際のコツを、「明るい係長講座」に書きました。ツバを飛ばしてしゃべるよりメモにせよ、メモは1枚にまとめよ、結論から書け、一目でわかる標題にせよ・・・。
最近気づいて、職員に指示していることがあります。
それは、「内容は箇条書きにせよ。3つ以上は書くな」です。箇条書きの方が、長い文章より、読んで(一目で見て)わかりやすいことは、説明しなくてもわかるでしょう。
「3つ以上は書くな」は、説明が必要ですね。理由は簡単。私は、3つを越えると、覚えられないのです。
職員は、1度にたくさんのことを説明しようとするのですが、私の頭の中のカウンターは、1、2の次は3ですが、3の次は4でなく、0です。振り出しに戻ります。2にも、戻りません。すなわち、3つ以上のことを聞くと、頭の中が混乱して、全部忘れてしまうのです。
「聞いている時はわかっているが、聞き終わると何も頭に残らない」というのが、正確でしょう。たくさん書いてあると、最初から読む気もしない、という場合もあります。「お前が、頭が悪いのだ」と言われれば、そうです。

数詞が、1、2、3の次は「たくさん」、という文明もあるとのことですが、私の頭の中もこれと同じです。漢字だって、一、二、三の次は、横棒が4本ではなくなります。ローマ数字も、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの次は、縦棒が4本ではありません。
手の指は5本あるのですが、人間の頭の中での数の基本形は、3までのようです。3を越えると、あとは、「たくさん」なのです。
かつて、私がお仕えした上司にも、同じ考えの方がおられました。政治家に説明に行く際、持っていく資料です。その作成を指示されれる時は、「1枚の紙に、3つ」。しかも、「それぞれ1行で、合計3行まで」でした。
「それじゃあ、説明できません。もう少し書かせてください」と申し上げても、「だめ。それ以上書くと、相手の頭に入らないから」と、認めてくださいません。
当時は「理不尽な」と思いましたが、自分が説明を受ける立場になると、よ~くわかります。しかも、大臣や政治家は、今の私より、はるかに忙しいのです。
4つ以上になる時は、どうするか。その時は、大きな見出しを3つにし、その中に小見出しをつくるしかないですね。そして、別紙にする。
繰り返します。上司の頭のカウンターは、1、2、3の次は、0です。4つ以上書くと、1つも2つも残らず、0に戻ります。あなたの苦労と上司の理解は、比例しません。それどころか、全く無駄になります。(2008年8月16日、17日)

「上司の頭、3の次は0」についての反響。
Aさんほか多数:おっしゃるとおりです。
Bさんほか何人か:そんなに、覚えられないのですか?
Cさん:私の上司は、3つくらいの案ではダメで、100くらい用意していかないと、納得してもらえません。

今日、言いそびれた回答です(お笑い的回答なので、まじめに受け取らないでください)。
Bさんへ:これは、私の場合を書いたので、一般的ではないかも知れません。でも、ニコニコしている上司が、あなたの言ったことをすべて納得し、覚えているとは、限りません。
もし、あなたに勇気があるのなら、たくさん説明してわかってもらえたと思った翌日に、その上司に、「昨日ご説明したあの件の4番目ですが・・」と聞いて、上司が覚えているか、試してみましょう。ただし、私は、このような実験を、お勧めしません。もちろん、結果について、責任は持ちません。
Cさんへ:私が書いているのは、「明るい係長講座」であって、「とても素晴らしい上司講座」でも、「とんでもない上司講座」でもありません。申し訳ありません。
さて、蛇足のアドバイスですが、そのような立派な上司に出会ったら、2度は反論しても良いですが、それ以上は辛抱するか、辞表を書くか、いずれかを選択してください。あなたは、上司を変えることはできないのです。もしあなたに、住宅ローンが残っているのなら、我慢することをお勧めします。
愚痴を言っても、状況は変わりません。将来、あなたが上司になった時に、あるいは現在の部下に対して、同じようなことをしないように、心がけましょう。今日も、あなたの部下は、あなたの悪口を言っているかも知れません。
ところで、あなたには信じがたいでしょうが、その「優秀な」上司は、あなたのことを、「なんで、できが悪いのだろう」と、思っているはずです。人間は、すべからく天動説ですから。
もっとも、あなただけでなく、部下全員がそう思われているので、心配はありません。

続上司の仕事:新しい価値の創造

上司の仕事として、戦略を立てることを説明しています。今日は、少し違う角度から説明しましょう。それは、仕事の「効率化」と、新しい「価値の創造」とは別だということです。
民間企業を例にすると、わかりやすいでしょう。効率化は、現在与えられた仕事と組織を前提にして、どうしたら「少ない労力」で「良い結果」を出すことができるかです。民間企業で「コストカッター」と呼ばれる人が、象徴です。
行政組織の効率化も、ここに入ります。やっている仕事をより少ない人数と予算で行うこと、さらには、時代遅れになった仕事をやめることです。民間企業と比べ、官庁の場合は、売り上げ・利益・他社との競争がないため、効率化は進まないことが多いです。組織にとっても、上司にとっても、効率化のインセンティブが働かないのです。予算や定数を増やした方が、高く評価されることすらあります。

官庁の管理職にとって、効率化は重要な任務です。しかし、それだけでは、管理職として不十分です。
企業の場合、新しい製品や新しいサービスを提供しないと、企業は生き残れません。コストカッターだけでは、企業は成功しないのです。
官庁の場合、任務は法律で決まり、内閣や大臣から与えられます。しかし、官僚は与えられた仕事を執行するだけが、任務ではありません。環境の変化を読み、新しい課題にどう対応するかを、考える必要があります。
社会の環境は、どんどん変わっていきます。公務員が担っている仕事の重要性は変わらなくても、新しいより重要な課題が出てくると、その仕事の相対的重要性は低くなります。
各課長はそれぞれの仕事を、「世の中で最も重要な仕事」と考えて、取り組んでいます。それは、尊重しましょう。しかし、局の任務が変化している時、従来通りの仕事をしていては、国民の期待に応えることはできません。これまでにない課題を発見し、部下に指示する。これも、上司の重要な役割です。
その際に、予算や人員には限りがあるのですから、古い仕事で優先順位の下がったものは、切り捨てる必要があります。課長が自分で、自分の仕事を切り捨てることは、できません。上司が、指示をする必要があるのです。

続上司の仕事:状況対応型と予測準備型・戦略実行型

昨日に続き、上司の仕事(戦略を立てること)を、書きます。
問題が起きたり指摘を受けてから、考えて対応するのが、「状況対応型」です。受け身の姿勢、待ちの姿勢です。追い込まれてから、あわてて動きます。しばしば、その場しのぎの対応になります。「状況対応型」などと、きれいな名前をつけましたが、簡単に言うと、「な~んも考えていない上司」「出たとこ勝負の組織」です。
これと反対なのが、「予測準備型」です。事前に、これからどのようなことが起きるか、どのように行動すると良いかを予測し、対応方針を決めておきます。達成するべき目標に向かって準備する場合は、「戦略実行型」になります。
予測準備型と戦略実行型において、上司の能力が問われます。どのような事態を予測するか、どのような目標を立てるかは、上司の責任です。これは、部下に任すことはできないのです。

さて、各課の目標による管理は、多くの場合、毎年の定例業務であり、すでに方針の決まった仕事です。これは、部下の行動を管理しておればすみます。ボトム・アップで、定期的に報告を求めればよいのです。
予測準備と戦略実行は、上司が考え、部下に指示を出す必要があります。これは、トップ・ダウンで行う必要があります。
なお、想定問答を用意することは、形式的には「予測準備型」に分類されます。しかし、必ずしもそうとは言えません。結論が「できません」というような想定問答は、意味をなしません。また、答えにくい問いを作っていない場合も、無意味です。さらに、360度にわたって、考え得る限りの想定をして答を作らせると、部下が過労死します。
予測準備型でも、的確な予測を立て、無駄な作業をさせずに目標を達成するのが、良い上司です。起こりそうにもないケースまで考え、部下に「完璧な」準備をさせるのが、悪い上司です。
打球が右寄りに来ることを予測して構え、なんなくさばくのが、良い野手。予測してなくて飛びつくのが、次によい野手。な~んにも考えずに構え、球が飛んできてから、あわてて球をそらすのが下手な野手。

業務の管理=予定表

異動して、約1か月がたちました。いやー、あわただしかったです。勉強しなければならないことが多くて。未だに、引っ越し荷物の箱を、開けていません。
ようやく、局内の課題の全体像を、ほぼ把握できました。私は、先行きの予想が立たないことが嫌で、予定表がないと、仕事ができないのです。どの案件を優先すべきか、どの案件に力を注ぐべきか、全体を見渡して自分の時間と労力を配分したいのです。持ち込まれる案件を順次処理していては、他の重要な案件をおろそかにしている、あるいは見逃している可能性があるのです。
もちろん、予定を立てても、その通りには行きませんし、突発事項も生じます。でも、いつまでに、これだけはしなければならないとわかっていると、業務の管理(早め早めに相談に乗ること)と、自分の労力管理ができるのです。

想定問答の罪

「官僚とは、『できません』と言う動物である」、という批判があります。私も、そのような場面に、何度も出くわしました。「めんどうだ」というのが、その原因のようですが、優秀で仕事熱心な若手公務員も「できません」と言うことがあるので、それだけでは説明できません。最近、別の原因を発見しました。
それは、「想定問答」です。国会審議や、地方団体・マスコミなどから問い合わせに備えて、想定問答を作ります。それは、現在の制度を前提にしてつくっているので、「現行制度で対応できます」か、「○○の理由で、できません」という答になります。これはこれで、正しいのです。
しかし、「このような制度改正をしてはどうか」という質問が出た時は、この答では答になっていないのです。求められているのは、現行制度でできない理由でなく、どうしたらできるか、あるいは代案はどのような問題があるかです。
ところが、このような場合にも、先に作った想定問答を、そのまま繰り返してしまうのです。現行制度の解説と、制度改革の議論は別なのです。