異動して、約1か月がたちました。いやー、あわただしかったです。勉強しなければならないことが多くて。未だに、引っ越し荷物の箱を、開けていません。
ようやく、局内の課題の全体像を、ほぼ把握できました。私は、先行きの予想が立たないことが嫌で、予定表がないと、仕事ができないのです。どの案件を優先すべきか、どの案件に力を注ぐべきか、全体を見渡して自分の時間と労力を配分したいのです。持ち込まれる案件を順次処理していては、他の重要な案件をおろそかにしている、あるいは見逃している可能性があるのです。
もちろん、予定を立てても、その通りには行きませんし、突発事項も生じます。でも、いつまでに、これだけはしなければならないとわかっていると、業務の管理(早め早めに相談に乗ること)と、自分の労力管理ができるのです。
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生き様-仕事の仕方
想定問答の罪
「官僚とは、『できません』と言う動物である」、という批判があります。私も、そのような場面に、何度も出くわしました。「めんどうだ」というのが、その原因のようですが、優秀で仕事熱心な若手公務員も「できません」と言うことがあるので、それだけでは説明できません。最近、別の原因を発見しました。
それは、「想定問答」です。国会審議や、地方団体・マスコミなどから問い合わせに備えて、想定問答を作ります。それは、現在の制度を前提にしてつくっているので、「現行制度で対応できます」か、「○○の理由で、できません」という答になります。これはこれで、正しいのです。
しかし、「このような制度改正をしてはどうか」という質問が出た時は、この答では答になっていないのです。求められているのは、現行制度でできない理由でなく、どうしたらできるか、あるいは代案はどのような問題があるかです。
ところが、このような場合にも、先に作った想定問答を、そのまま繰り返してしまうのです。現行制度の解説と、制度改革の議論は別なのです。
部下の指導
今週も、金曜日を迎えることができました。先週に引き続き、あわただしい1週間でした。次々と仕事が舞い込み、自分の時間が取れないのです。訪ねてきてくださる方も多いですが、十分にお構いできず、失礼をしています。申し訳ありません。
でも、部下が次々と相談に来てくれることを、喜びましょう。事故が起きてから報告されるより、ずっと良いことですから。
その際に、部下の説明を聞いて、「それで良いよ」と言っておれば、こんなに忙しくないのでしょうが。部下の何人かは、私の「傾向と対策」を知りません。こちらも、部下職員それぞれの、仕事の「癖」を知りません。その距離感をつくるのに、時間がかかっているのです。
いろんな角度から質問をすると、補佐たちの考えた結論は、良い結論になっているのです。ところが、その説明たるや、自分が理解したところで終わり、相手にわかってもらおうという、「サービス精神」が欠けています。
1 早く報告と相談をせよ。
2 つばを飛ばして説明せず、紙に書け。
3 経緯はよいから、結論を先に書け。1枚にまとめよ。
4 一目でわかる標題にせよ。日付と発信者を明記せよ。
「明るい係長講座」と同じことを、繰り返し言っていますね。
「全勝審議官の傾向と対策」を知らない若手補佐からは、「うるさいやつだ」と言われているでしょうね。もっとも、これは今に始まったことではありませんから、部屋に戻って「やっぱり、今度の審議官は、うるさいわ」と言っているのでしょう(笑い)。
某局長からも、部下指導の悩みを言われ、「早く『明るい課長講座』を書け」と、催促されました。そろそろ、着手しますかね。
異動
7月4日付けで、総務省大臣官房審議官に異動しました。担当は、財政制度・財務です。自治財政局の審議官(除く公営企業)といった方が、わかりやすいですかね。
内閣府大臣官房審議官(経済社会システム担当)は、ほぼ2年間の在籍でした。経済財政諮問会議の事務方として、いろんな勉強をさせてもらいました。4人の民間委員の方にも、様々なご指導をいただきました。貴重な経験をさせてもらったことに、感謝しています。少しでもお役に立てておれば、うれしいのですが。支えてくれた同僚や部下職員にも、感謝します。
内閣官房内閣審議官の兼務で、再チャレンジ室長も務めました。これもまた、得難い経験でした。この肩書きは、引き続き付いています。
一流の官庁エコノミストに囲まれて仕事ができたので、経済でわからないことがあると、すぐに教えてもらえました。役得ですね。各省からもエースが来ているので、社会保障・公共事業など、何を聞いてもすぐに教えてもらえるのです。
この2年間は、日本の経済財政や社会と政治を勉強する、良い機会になりました。このホームページでも、違った分野の記事が増えました。現在連載中の「行政構造改革-日本の行政と官僚の未来」月刊『地方財務』(ぎょうせい)などにも、その見聞を反映させています。再チャレンジから見た行政のあり方は、文章にしました。「再チャレンジ支援施策に見る行政の変化」月刊『地方財務』(ぎょうせい)2007年8月号。
また、諮問会議の事務局であることと、官邸に近いことで、トップダウン型で仕事が進みます。各省の伝統的な、ボトムアップ型・定型的仕事の進め方ではないのです。今後、霞ヶ関でも、このような仕事の進め方が、増えるでしょう。
私のホームグラウンドは地方行政ですが、こうして離れた立場で、総務省や地方行財政を見ると、全体像がよく見えます。また、世間の人が、地方財政や総務省をどのように見ているかも、わかります。
私は、公務員は専門分野を持ちつつ、広く経験を積むべきだと考えています。その点で、「異業種交流」は、勉強になります。もちろん、親元で気心の知れた人と付き合っている方が、はるかに気が楽ですが。後輩たちも、このような経験を積んで欲しいです。省内で異動するのではなく、違った分野の行政を経験すること。そしてできれば、内閣官房や内閣府を経験することです。
さて、自治財政局には、4年半ぶりの復帰です。浦島太郎なので、勉強します。自分では、専門は地方財政と思っていたのですが、また周りの人もそう見てくれるのですが、実はそうでもないのです。富山県総務部長から戻って、これで10年になります。その間、内閣(省庁改革本部)が2年半、自治財政局(交付税課長)が3年、官房総務課長が2年半、内閣府・内閣官房が2年です。このうち地方財政は3年で、官房や内閣の方が、はるかに長いのです。
さらに副業が、東大2年、一橋大学2年、慶応大学1年半。これらも、地方財政ではないのです。最近執筆する原稿も地方財政を離れ、日本の行政になっています。仕事がそちらになったから私の問題関心が移ったのか、それとも神様が私の問題関心に沿って仕事を与えてくださっているのか。いずれにしろ、ありがたいことです。
最先端情報の入手・会うことの重要性
今日も、平野雅章『IT投資で伸びる会社、沈む会社』から。
・・技術動向に関する理解の必要性は、企業の属する産業によって違います。ハイテク企業であれば、研究所や駐在員をシリコンバレーにおき、技術者・科学者などとフォーマル・インフォーマルな情報交換を続けていくことが絶対的に重要でしょう。
通常、技術の先端的情報の微妙な部分は、学会・フォーラムやインフォーマルなミーティングなどでの技術者・科学者同士の直接接触を通じて、暗黙情報として交換されるので、これを得るためには先端技術開発の行われている地域に物理的に身を置くことが不可欠です・・(p89)。
そうなんですよね。大概の情報が、インターネットで手に入る時代になりました。ところが、人と会う重要性は、いっこうに減りません。最先端の情報で公開情報はインターネットで手に入ります。しかし、まだ公開されていない情報、それは不確定な、ものになるかどうかもわからない情報ですが、それらはインフォーマルな情報交換でしか手に入りません。これは、科学技術に限りません。
またこれとは違った場面でも、例えば人物評価が必要な場合は、会ってみないとわかりません。多くの場合、採用面接なしでは、人を採用できないのです。