決断が不足した組織

沼上幹『組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために』(2003年、ちくま新書)に、組織が疲労した場合の一つとして「決断不足」が挙げられています。そして決断が不足すると、次のような徴候が現れると指摘されています。
第一は、製品開発プロジェクトなどで、フルライン・フルスペックの仕様書が多数出てくることである。コストは他社より低く、すべての性能に関して他社競合製品を上回るものを、他社よりも早く市場に導入せよ、というような要求が出てきたら要注意である。これは何も考えていないことの証である。問題は、時間や予算の制約があるから、すべての点で競争相手を上回ることは簡単にはできないというところにある。だから、一部については目をつむってもらうといった決断が必要なのである。
二つ目の徴候は、社内で多様な経営改革検討委員会が増えることである。もし本当に必要だと判断したのであれば、検討などさせずに即座に導入すればよい。各部署から人を出させて検討委員会を作るのは、経営者たちに思慮が欠けていて、決断できていないことを疑わせる。あるいは衆知を集めて民主的に経営している見かけを作りすぎなのかもしれない。
三つ目の徴候は、人材育成である。人材育成はどのような時にも必要だから、誰も批判しない。しかし問題は、現在直面している課題の解決には、人材育成が時間的に間に合わない、というところにある。