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鎌田浩毅先生『やり直し高校地学』

鎌田浩毅先生の新著を紹介します。『やり直し高校地学ー地球と宇宙をまるごと理解する』(2019年、ちくま新書)です。ちくま新書には、「やり直し高校××」というシリーズがあるようです。内容は、表題でわかりますよね。

私は高校では理科4科目、物理、化学、生物、地学を履修しましたが、受験科目は物理と化学を選びました。この2つが、理論的だと思ったのです。すみません、当時は、生物は植物の分類、地学は地層と岩石の学問と思っていました。しんきくさいなあ・・・と。
ところがその後、生物は遺伝子の解析や分子生物学が発達して、面白い学問になりました。地学も、プレートテクトニクスや古生物学など、面白い学問になりました。この半世紀で、ガラッと変わりましたね。
最先端の研究が画期的に進んだのとともに、それを一般人に伝える書物が増えたからでしょう。無味乾燥な分類学や岩石学から、わくわくする科学に変わったのです。

鎌田先生は、科学の伝道師を名乗っておられます。最先端の難しい科学を、素人にわかるように伝えてくださっています。新著も早速に重版になったようです。よく売れているということですね。
素人には分厚い学術書や教科書より、新書版がうれしいです。でも、難しいことを短く書くというのは、難しいのですよ。

歴史教育と歴史学3

歴史教育と歴史学2」の続きです。

歴史を学ぶということには、これまでの先達たちの行動を(立派なことも失敗も)学ぶことができます。そして、ものの見方を学ぶことができます。これは、歴史を学ぶことの大きな意義です。
ところが、高校までの歴史教育と大学入試試験は、これを教えたり問うていないと思うのです。それが、この項を書いた理由です。

その点に関して、『現代歴史学の名著』(1989年、中公新書)『新・現代歴史学の名著』(2010年、中公新書)を思い出しました。
当初は「現代歴史学」という文言に、「矛盾しているのではないか?」と、疑問を持ちました。
しかし読んでみると、歴史という一つの事実が、新しいものの見方によって、違って見えることがわかります。それらの見方は、出来事の羅列や政治史ではないのです。

歴史教育と歴史学2

歴史教育と歴史学」の続きです。

多くの学問は、大学での学問や研究者の最先端と、高校までの授業内容・大学入試問題がつながっています。しかし、歴史学は違うと、思います。
その第一の理由が、他の学問では、基礎知識を覚え、それを基に応用があるのに対して、学校の歴史教育には、覚えた事実を基に、何か思考するということがないのです。

それは、これまでの歴史学の内容と方法に問題があったのではないか、というのが私の考えです。
これまでの歴史学が、主に政治史であって、出来事の羅列であったからです。英雄たちや政治家がどのような政治体制をつくって、どこを支配したかを覚えさせられます。しかし、それでは、次につながりません。
民衆が出てくるのは、革命の時くらいです。経済が政治を規定するという、マルクス史学(経済学)も、大きな流れでは真理を含んでいますが、それ以上の展開はないです。

歴史学も、新しい事実(遺跡や古文書)を発見して、新しい知見をもたらしてくれます。しかしそれは、知識が増えただけで、「考える学問」とは違います。
英雄の歴史や戦争、王朝の興廃も、読み物として面白いですが、それは小説の世界です。
社会が、どのような原因でどのように変化したか。そのような「分析」なら、「考える学問」だと思います。
出来事の歴史ではなく、経済の発展、民衆の生活水準の発展、文化の変化など、「原因と結果」を説明するような歴史学なら、「知識の記憶と応用」があると思うのですが。
この項続く