「地方行財政」カテゴリーアーカイブ

地方行財政

2008.05.06

6日の日経新聞社説は、「行財政の効率化へ地方分権の断行を」でした。
・・政府が最重点で取り組むべき課題のひとつは、行財政の効率化である。そのカギを握るのが地方分権だ。中央省庁の抵抗は強いが、福田康夫首相は強い決意で取り組むべきだ。分権は、首相の指導力抜きでは実現しない。官僚任せでは小泉純一郎内閣が取り組んだ、国と地方の税財政に関する三位一体改革の二の舞いになる。民主党も、この問題では政府・与党と一致点が少なくないだろう。

道路特定財源と地方自治

5日の日経新聞は、道路特定財源の一般財源化と地方行政を、大きく取り上げていました。道路特定財源(5.4兆円)が、税収では国3に対し地方が1。ただし、その一部が譲与税として、地方に自動的に配分されるので、実質的な収入は国6に対し地方は4。さらに国から地方に補助金として配られ、最終的な割合は、国35%に対し地方は65%になっています。
谷隆徳編集委員は、次のように指摘しています。
・・国が財布を握って自治体に配分するこの仕組みが、国土交通省や族議員の力の源泉になる。道路中期計画も国交省が策定し、優先的に整備する事業を決めている。高速道路はもちろん、電線の地中化、踏切の安全対策、通学路の歩道整備など全国隅々の道路まで、国が細かく関与する。道路計画を見直して一般財源化するなら、国と地方の役割を明確にして、広域的な道路網を除いて地方に任せるべきだろう。通学路、踏切対策などは、自治体が街づくりの一環として取り組む仕事だ。国がお金を集めて地方に配る仕組みも改め、国から地方へ税源を移した方がいい。全国知事会など地方側も、政府任せにするのはどうか。夏の知事会議で議論し、独自の改革案を提示すべきだ。

2008.05.01

5月1日の日経新聞に、中西晴史編集委員が、今回のガソリン税の暫定税率復活に関して、「地方、受け身に終始。国頼り、民意向き合わず」を書いておられました。
・・最大の理由は、住民と首長、議員との意識のギャップが大きいことだ。各種世論調査でも、ガソリン税復活に賛成する人は半分以下だ。7割以上が反対という結果もあった。国会に復活を求めるだけの自治体関係者は、ガソリン値下げを求める住民に向かって、道路の方が必要だと説得する気迫は感じられなかった
・・本当に危機感があるのなら、地方自ら何ができるのかを真剣に考えるべきだった。国が暫定税率を廃止する場合、例えば47都道府県で一斉に法定外税を設ける手段もあったろう。法定外税に腰が引けるのは、住民の支持を得られぬまま、増税する自信がないということだろう。
ならば、やはり国に悪者になってもらって、一律にという安易な道を選択することになる。住民と向き合わないままでは、いつまでたっても自治・分権の道は開けない。

2008.04.26

矢吹初青山学院大学教授らが、『地域間格差と地方交付税の歪み』(勁草書房、2008年4月)を出版されました。
地方交付税による財政調整の結果を各団体ごとに調べ、通常の値から外れている「外れ値」となっている団体を調べるのです。もちろん、政令市や特別区のように、行財政制度が違う団体は当初から除外しますが、その他の団体は対象とします。小規模団体も豪雪地帯も、貧乏団体も富裕団体もです。すると、「交付税の歪み」が出てくるというのが、先生の主張です。
その際に「遺伝的アルゴリズム」という手法を使って、外れ値を探し出すのです。ここは難しくて、かつて先生に教えてもらった時も、十分理解できませんでした。人為でなく、機械的にシミュレーションするのです。ここが、客観的に「外れ値」を検出する核心です。
ちなみに、交付税の算定には、足し算・引き算・かけ算・割り算しか使っていないので、はるかに簡単な知識で理解できるようになっています。「一般の方でもわかるように」というのが、地方交付税の哲学です。
さて、元交付税課長としては、この外れ値を説明しなければなりません。離島や豪雪地帯では、割高になる行政コストを、算式を使って基準財政需要額に加算します。これが、外れ値になる可能性があります。港湾があるかないかなども、要因となります。
次に、ふるさと創生事業や公共事業促進のため、事業費補正を使って、各団体が発行した地方債の元利償還金の一定割合を算入しました。これは、各団体の発行額という「非客観的数値」を基礎としているので、外れ値になることが多いと思われます。ただし、これについては、2001年以降廃止縮小しました。その後、頑張る地方応援プログラムが始まっており、これは外れ値になる可能性があります。
本には、CDーROMも付いています。各団体でも、調査検証が可能です。ご関心ある方に、お勧めします。

2008.04.23

23日の日経新聞が、山田京都府知事のインタビュー「分権、地方の自己改革から。国民から負託、国は意識欠く」を載せていました。
「国土交通省や社会保険庁を巡る不始末など行政の信頼が揺らいでいる」との問いには、「いずれも国民の負託を受けていない場所で問題が発生している。地方分権とは負託を受けた人に(権限や財源を)任せることだ。以前、全国知事会で国の出先機関の改革案をまとめようとしたとき、各機関の職員数や予算執行などに関する資料が全くなかった。それまで誰もチェックしていなかったということだ」と答えておられます。
「それでも地方分権をめぐる世論はなかなか盛り上がらない」という指摘に対しては、「これまでの分権論議は国民に根ざしていなかった。(1990年代の)第1期地方分権、三位一体改革も単なる国と地方の財源争いとみられてしまった」 と発言しておられます。
「財務省が「国の財政は夕張市よりも厳しい」と主張し、財源移譲を求める地方側をけん制している」との指摘には、「本当に厳しいと考えているなら、国も夕張市のように解体的な出直しをしてはどうか。財務省は『地方の方が財政再建が進んでいる』と主張するが、それこそ地方に(仕事を)任せた方がいいという証左だ」と答えておられます。