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地方行財政-地方行政

市民の協力によるコスト削減

大学院の公共経営論で、「大きな政府・小さな政府」を話しました。論点はいくつもあるのですが、今日紹介するのは、市役所の窓口サービスについてです。これまで私たちは、より手厚いサービスを、そして最近ではより安いコストで提供することを目指してきました。
数年前、ある議員にお叱りを受けました。次のような話しです。
議員:岡本さん、市役所に行ったら、朝の忙しい時間だったけど、待たずに窓口で対応してもらったよ。
全:それは、サービスが良かったですね。褒めてやってください。
議員:違う。あれではダメだよ。
全:???
議員:今どき、銀行でも番号札を取って待つ。待たなくても良い窓口は、職員が多すぎるということだ。少しくらい待ってもらって、良いじゃないか。
全:おっしゃる通りです。

このような意識が広がってくれると、行政もやり易く、コスト削減もできます。市民が行政コストを意識し、それは自分の税金で行われているのだと考えてくれれば。
市民による行政への協力の例に、ごみ出しがあります。毎日、分別せずにごみを出すと、便利でしょう。しかし、毎日集めるコストや、集めてから分別するコストを考えると、市民の協力は大きな費用削減になっています。一方で、急ぎでないのに、救急車を呼ぶ人がいます。それは、市民の負担になっています。余計な負担をさせられる人からは、批判が出るでしょう。
道路を清掃したり、花壇を手入れする例を取り上げましょう。市役所が直営する場合、民間委託をして経費削減する場合。さらに、町内会にお願いする場合、住民がそれぞれ家の前をきれいにする場合があります。不満を言っておればよい立場から、自ら汗を流す立場へです。

公共サービスと料金

全国市長会の機関誌『市政』2010年12月号に、中邨章明治大学教授の「自治体の信頼と危機管理」が載っています。その中で、アメリカでの消防・救急の費用負担が、紹介されています。
救急車を呼んだら、「料金を支払えるか」と聞かれた例や、あらかじめ75ドルの税金を払っておかないと消防車が来てくれない例が、出ています。後者の場合は、火事になったが事前に75ドルを支払っていなかったので、消防車が来てくれない。しかし、隣の家は支払っていたので、消防車が来てくれた。ただし、規則に忠実な消防隊は、現場に到着しても、出火元が全焼しても活動せず、隣家に延焼始めたら消火活動を始めたという話です。以前、中邨先生にこの話を教えてもらった時には、「忠実な消防隊」を笑うとともに(失礼)、なるほどと感心しました。

私は、消防は地域全体への危険を防止するために、無料でよいと考えます。しかし、救急の場合は、特定個人が利益を受けます。そして、緊急度の低い人が、救急車を呼ぶ例も報道されています。だから、有料にして良いと考えます。
その時は急いでいるので、後払い。または、健康保険の対象にするのも、一つの方法です。往診の場合は、往診料を払います。それとよく似た行為だと、位置づけるのです。医者が来てくれるのか、医者のところに運ぶのかの違いです。もちろん、料金設定をいくらにするのか、少々難しい問題もあります。
無料と言っても、その費用は住民が負担しているのです。その点、山岳救助の費用も、遭難者が負担すべきです。通常の生活ではなく、危険を伴うことを承知で出かけているのですから。「高額だから無理だ」とおっしゃる人もおられますが、保険に入ればよいのです。スポーツ少年団なども、保険に入っています。

アメリカ、住民投票ビジネス

10月30日の朝日新聞国際面は、アメリカの中間選挙を伝える記事で、住民投票の署名集めを請け負うビジネスを紹介していました。カリフォルニア州では、9件が住民投票にかけられます。カリフォルニア州では、住民投票のためには、43.4万人の署名を150日間で集める必要があります。州憲法改正の住民投票には、69.4万人の署名が必要です。
一見、高いハードルですが、ある案件は2か月足らずで、必要数の署名を集めたそうです。夫婦二人の会社が請け負い、1,500人のスタッフで集めました。署名1人当たり1.55ドルの出来高払いです。提案者はそのために、103万ドルを使ったそうです。
その他、投票の文言を書く弁護士、運動を仕切るコンサルタントなどのプロが介在し、テレビのコマーシャルにも巨費が投じられます。ときに、1千万ドルにもなるとのこと。企業や労組などのスポンサーがついた投票も多くなります。住民投票もビジネスになる。アメリカらしいですね。

地方政府の不執行に対するアメリカ州政府の是正

住民基本台帳ネットワークが、2002年から動き出しました。しかし、法律の期待に反して、このシステムに参加しない市町村が出てきました。杉並区は、参加を希望する住民のみを参加させようとして、東京都と国を相手取って訴訟を起こしました。地方分権改革によって、国の関与に関する係争処理手続が導入されましたが、国の側からは利用できなかったのです。そのため、国からの是正要求に対して、地方自治体が応じない場合は、国はどのような手段を取ることができるのか。今回の事例が、それを顕在化させました。
月刊誌『地方自治』2010年10月号(ぎょうせい)に、柴田直子神奈川大学准教授の「アメリカの地方政府による州政府の不執行と州政府による是正」が載っています。分権の国アメリカで、どのように解決しているのか。ご関心のある方は、お読みください。

地域の問題、人と人とのルールづくり

9月25日の朝日新聞オピニオン欄は、「バーベキューは迷惑か」でした。川崎市の多摩川河川敷での問題です。春から秋にかけて、土曜日曜は大勢のバーベキュー客で、「花見の公園」状態だそうです。楽しんでいる人はよいのですが、問題は大量のごみと騒音。音響機器とロケット花火もすごいそうです。花火は朝まで鳴っていることも。夕方からは、お酒が入って、物を壊す、吐く、便をする・・、地元民にとっては、たまったものではありません。そこで、有料化への社会実験を始めました。
このような地域の問題を、どう解決するか。地域コミュニティと自治体の力が、試されます。3人の方の意見が、紹介されています。ご覧下さい。
地域の課題は、国から来るのではなく、地域から発生する。そしてそれは、お金をかければ解決できるものではない。コンクリートやモノの問題ではなく、人と人との関係である。私が長年主張していることの、一例です。