カテゴリーアーカイブ:人生の達人

噺家もウケる日とウケない日がある

2026年3月20日   岡本全勝

朝日新聞連載「語る 人生の贈りもの」、3月13日は噺家の桂南光さんの「落語はお客さんと一緒に作るもん」でした。

・・・《入門から56年。同じネタでも、ウケる日もあればウケない日もある》
そら、ウケへんかったら多少は気になります。でも、高座で話しているとき、なんか自分を俯瞰するもう一人の自分がおるんです。「うわ、あれだけ稽古してきたのに、今日のお客さんに全然ウケてないがな」と。
ひねった噺が好きなので、笑う人もいれば、全然笑わない人もいてますからね。落語っていうのは、お客さんと一緒に作るもんですわ。ウケないときは「今日のお客さんとはセンスが合わなんだな。自分のお客さんはどこかにおる」と思うようにしています・・・

私も、講義や講演の際に同じ経験があります。私の場合は笑いを取るのではなく、(少々笑いも取りますが)理解してもらうことです。噺家も同じですが、最初の「つかみ」である程度の反応がわかります。

「ボールにみんなが群がる子どものサッカー」

2026年3月17日   岡本全勝

働き方改革を時間で語るな」の続きになります。安永竜夫・三井物産会長は「働き方改革 時間で語るな」の中で「ボールにみんなが群がる子どものサッカーではダメだ。全体像を把握し、各組織・チームで最適な働き方を考える必要がある」と語っておられます。

思い出しました。高校時代にサッカー部に所属したのですが、いくつか金言を教えてもらいました。
例えば、「後ろの声は神の声」です。ボールを持った選手は、前とボールを見ます。周囲を見ることは難しいのです。その際に、横や後ろの選手が声をかけることは、とても役に立ちます。一番後ろにいるゴールキーパーやバックスが書ける声を「後ろの声」という場合もあるようですが。

この「ボールにみんなが群がる子どものサッカー」は、私の頃は「百姓一揆」と呼びました。みんなが一斉に、同じ所を目指して走って行くのです。
攻撃には、空きスペースを使うことが重要です。左サイドから攻めていて、敵の防御も左に寄っていると、右前に空いたスペースができます。右ウイングの選手は、ボールに近寄ることなく、離れてその空きスペースに動いてボールを待ちます。
野球のテレビ中継とサッカーの中継との違いが、ここにあります。野球の場合はボールを追いかけていたら画面ができます。しかしサッカーの場合は、それでは攻撃の善し悪しがわからないのです。

これらの考え方は、官僚になってからも役に立ちました。本人があることに夢中になって、周囲が見えなくなることがあります。その時に、他者からの助言は役に立ちます。また、みんなが同じ方向を向いているときに、少し離れて見てみる、そして別の方向を考えるのです。すると、違ったことが見えてきます。

職場に残る不思議な習慣

2026年3月17日   岡本全勝

2月28日の日経新聞別刷りに「Z世代が選んだビジネスの謎習慣」が載っていました。
・・・あなたの職場に、なぜあるのか分からない習慣はないだろうか。Z世代の正社員1000人に、時代遅れだと思う「ビジネスの謎習慣」をアンケートした・・・
1位「上司が帰るまで帰れない雰囲気」です。へえ、今時そんな職場があるのですね。
2位、有休申請時に「申し訳ありません」
3位、今もなお残るハンコ必須の紙書類
4位、面識がなくても「お世話になっております」と書くメール
5位、休日の社員旅行や社会イベント
まだ続きますが、これくらいにしておきましょう。

働き方改革を時間で語るな

2026年3月16日   岡本全勝

2月22日の日経新聞「直言×労働臨界」は安永竜夫・三井物産会長の「働き方改革 時間で語るな」でした。ウェッブ版では違う見出しになっています。

・・・高市早苗首相の「働いて、働いて」発言で関心が高まる働き方改革。「企業側が残業を過度に抑制している」(高市首相)という主張に対し、「改革に逆行」(連合の芳野友子会長)と議論が白熱する。日本貿易会の安永竜夫会長(三井物産会長)は外国人材の活用も念頭に「時間基準の働き方改革の議論はもうやめよう」と訴える。

―2015年の電通社員の過労自殺が社会問題となり、日本は19年施行の働き方改革関連法などを通じて、残業規制を厳格化した。どんな影響をもたらしたか。
「長時間労働で起きたひずみを発端に進めてきたが、結果的に海外に比べて生産性は上がっていない。長時間労働に賛成するわけではないが、時間だけに焦点を当てた議論はもうやめるべきだ。海外の働き方を基準に個人に裁量を持たせた働き方を模索すべきだ」
「欧米は月単位ではなく、1年など長期単位で達成すべき仕事を設定する。業務が山場の時期は集中して働き、仕事が達成できた時には『2週間休んでいいよ』という裁量を持たせる世界だ。そんな働き方の海外企業と仕事をする機会が増えるなか、日本の管理規制型の働き方はそぐわない」
「健康管理などバックアップ体制が前提だが、仕事をしたい時は徹底的に仕事をしないと達成感は生まれない。日本はそもそも祝日が多く、みんなが一斉に休む。全員が同じパターンで仕事をするのは変だ。自分の休みは自分で取ればいい」
「日本の経済成長の速度は遅く、どんな業種でも新しい仕事を作るのは海外だ。中堅も海外展開する企業が伸びている。社員の労働生産性を最大化するためにも、海外と同じように働き方を変える必要がある」

―短時間労働に慣れた若い世代には裁量労働への反発が予想される。
「若い人は自分のやりたいことをやるために、早く自分のキャリアパスを達成したいのではないか。社会人としてのベースを広げたいのに『午後5時半で帰りなさいはおかしい』と考える若者が比較的多いと思う」
「裁量労働といっても好きなだけ働くわけではない。導入する上で組織として大事なのは一人ひとりの役割・タスクを明確にすることだ。ボールにみんなが群がる子どものサッカーではダメだ。全体像を把握し、各組織・チームで最適な働き方を考える必要がある」
「大きな組織やプロジェクトであるほど、自分が何をしているのか見えなくなる場合も多い。社員に業務の達成感を感じてもらうため、『君の仕事は全体の中ではこんな大事な業務を担当している』と因数分解して説明し、責任範囲をはっきりさせる必要がある」
「日本は同調圧力が強い国だ。だが『上司がいるから帰れない』といった昭和発想の人はかなり減った。働き方改革を見直す中で『労働時間を増やせ』という圧力も出てくるかもしれないが、昭和に戻ってはいけない。時間軸の発想から脱し、生産性を最大化する働き方は何か企業が考え、変えなければならない」・・・

職場飲み会の是非

2026年3月14日   岡本全勝

2月20日の読売新聞に「職場飲み会って必要?」が載っていました。

・・・忘年会に新年会、花見の後は暑気払い……。職場の上司や同僚と良好な関係を築くために行われてきた飲み会が減っています。コロナ禍に加え、働き方や価値観の多様化が背景にありますが、一体感や団結力の向上に役立つとの意見も。「飲みニケーション」は必要と思いますか。

インターネット広告会社「ユニアド」(東京都渋谷区)は創業5年目の2019年、有志での集まりを除いて会社の飲み会行事を全面禁止しました。「仕事に必要ではなく、社員の負担軽減にもなる」。同社の中釜啓太社長(39)は狙いをそう説明します。
中釜さんは20歳代の頃、当時働いていた会社で、上司からの飲み会の誘いを断れなかったり、酒席でのマナーに欠けていないか気をもんだりした経験があります。若い社員に同じ思いをさせたくなくて、禁止を決めたそうです。
ユニアド社では普段から業務での連絡を密に取っており、社員同士のコミュニケーションは良好といいます。中釜さんは「飲み会が苦手な学生も入社を希望してもらえるし、誰もが働きやすい職場づくりができている」と話します。
不動産大手「オープンハウスグループ」(千代田区)も社内ルールで原則「飲み会禁止」を掲げます。広報担当者によると、戸建て住宅やマンションを売るのに日夜多忙な社員にとって「同僚との酒席は愚痴や不満を言い合う場になりがちで、業務の役に立たない」との考えからで、社員からは「時間やお金を自己成長のために使えるので良い」といった声が出ています・・・
・・・東京大の川口大司教授(経済学)のチームは日本、韓国、台湾で働く計3500人の男性会社員らを対象に、酒が飲めるかどうかと、実際の収入や労働時間の関係を調べました。その結果、酒が飲めるからと言って収入が増えるわけではないとの結論に至りました・・・

・・・「管理職は積極的に部下との飲み会を設けるべきだ」。中小企業向けコンサルティング会社「武蔵野」(東京都小金井市)の小山昇社長(77)はそう持論を語ります。
同社では、年間約3000万円を社内懇親会、つまり飲み会の経費に割いています。日程は余裕を持って約1か月前に設定し、参加者には業務として「残業代」を支給。社員同士の絆が強くなり、おかげで中途退職者が減ったといいます。小山さんは「懇親会で上司と部下の心理的な距離が近づけば、職場の問題点も見えてくる」と強調します。
「深い人間関係を築くのが簡単で、得られるものは大きい」。飲み会への積極的な参加を勧めるのは、営業コンサルタントの菊原智明さん(53)です。ハウスメーカーの営業マンだった20~30歳代の頃、飲み会によく出たという菊原さんは、上司にメンタル面の悩みを聞いてもらったほか、普段は接点のない社員とも交流し、仕事のサポートを受けることができたそうです・・・

・・・会社の飲み会と言えば、居酒屋で夜遅くまで上司に付き合うイメージがあるでしょう。今では、こんな「従来型」を敬遠する人も増えているようです。九州大学都市研究センターが20歳以上の会社員7500人を対象に「好ましい飲み会とは何か」を調べたところ、「参加・不参加の自由度が高い」が最も多く、男性は12%、女性は17%がそう回答。また、「開催時間が適切(早い・短いなど)」も3位に入り、男性は10%、女性は12%が挙げました・・・
・・・明治大の堀田秀吾教授(コミュニケーション論)は、飲み会について〈1〉素の自分を見せ、他人との関係が強固になる〈2〉コミュニケーション力が鍛えられる〈3〉職場の雰囲気や作業効率の向上につながる――と利点を挙げます。堀田さんは「飲み会は日本の企業文化では必要な要素で、各企業は存続に知恵を絞ってほしい」と話しています・・・

図表がついています。2019年に忘年会と新年会を実施したのが78%、しないのが22%でした。コロナの時期は実施せず、2025年では実施するが57%、しないが43%です。