カテゴリーアーカイブ:人生の達人

書類がどこにどれだけあるかわからない

2026年6月26日   岡本全勝

文書事務が電子化され、便利になりました。作成や加筆作業とともに、保管と取り出しです。かつて紙だった時代は、机の上や周囲に山積みになり、書棚も満杯になりました。
しかし、二つの利点がありました。一つは、どこに何があるかが見えたことです。山積みの資料の下の方は「化石」になって、存在を忘れることもありましたが。書棚の背表紙を見ると、どこに何があるかわかりました。もう一つは、分量が一目でわかったことです。分厚い資料なのか、薄い資料なのかが、即座にわかりました。
もう一つ加えるなら、書棚に入りきらなくなったり机に積めなくなったりしたら、やむを得ず不要な書類を捨てました。書類整理と破棄を強制されたのです。

文書の電子化は、このような「利点」をなくしてしまいます。するとどうなるのか。仕事の書類と、個人の書類(作成途上の文書や勉強のための資料)で異なります。
1 仕事の書類
これは、職場の共有フォルダーに置かれ、関係者が見ることができます。そして完結したら、重要度に応じて、保存ファイルに移されるのでしょう。
問題は、誰も責任を持たないまま保管された書類です。共有フォルダーでは、しばしば起きます。担当者が異動したり、古くなったまま放置される書類です。書棚にあった時代は、入りきらなくなると、古いものは捨てましたが、電子書類は場所を取らないので、いつまでも放置されます。毎年、時期を決めて大掃除をする必要があります。
2 個人の書類
これは、各自の責任です。個人フォルダーに入っているなら、移動しても持って行きます。職場によっては、容量に上限を決めてあって、たくさんの書類を保管できないようにしているところもあります。

大学の先生に聞くと、学生も困っているようです。科目ごとに、教科書や配付資料、レポート課題などが配られます。電子資料は場所を取らず、重くもないので便利ですが、どこに何があるかがわからなくなります。紙の教科書や資料を見ていた時代は、「これから、これだけ読まなければならない」とわかったのですが、それが把握できなくなったのです。
仕事を進める方法として「見える化」「可視化」が教えられます。書類の電子保存は、この逆で「見えない化」「隠す化」ですね。

私は紙の本しか読まないのですが、電子書籍だと、全体のうちのどれくらいを読んだのかわからないのが嫌です。また、書棚にあふれ、書斎の床に積み上げなくてもよくなるでしょうが、パソコンのどこに何がどれくらいあるかわからなくなり「行方不明」になったのと同じでしょうね。まあ、書棚の本を把握できていないから、実態は同じかもしれませんが・・・。

人工知能で見えてくる仕事の意義

2026年6月24日   岡本全勝

人工知能、私は使っていないのですが、使っている人の話を聞くと、便利なようです。「××のような文章を作ってくれ」と入力すると、それなりの文章を作ってくれます。不足している部分について、再度指示を出すとよくなります。数回繰り返すとよい文章になります。「壁打ちを繰り返す」と表現するそうです。
本人の頭にはぼやっとした考えしかないのですが、機械と対話することでよい文章ができます。もちろん、機械が作った文章を見て、欠けている点を見つけ、追加の指示を出すことと、最後にこれでよいと判断する能力は必要です。

過去の資料や文章を踏まえて文章を作成するのには、人工知能は向いているようです。過去の文章をたくさん読み込ませ、そこから文章を作る(抽出する)機能を発達させたのですから。

では、人工知能は社員や職員に入れ替わるのか。私は、あくまで補助道具だと考えています。その理由は次の通り。
1 先に書いたように、人工知能が作った文章や資料を見て、欠けている点を指摘し、完成かどうかを判断しなければなりません。それは、人間がするのでしょう。
2 まず、作業を機械に発注する人が必要です。それは、人がするのでしょう。完成品を検査するのは、発注者である人です。
3 採用されたばかりの社員が、文章を発注し完成品を検査することができるか。できません。私たちは、職場で経験を積んで、良い内容の良い文章をつくることを覚えます。
4 すると、駆け出しの社員がやっている仕事は、上司に指示された内容のものを作る(成果を出す)こととともに、自らの技能を磨いているのです。オンザジョブトレーニングです。一定の能力を備えた社員でないと、人工知能は使えないのです。
5 もう一つ、人工知能の弱点は、新しい政策の検討、これまでにない問題への対応でしょう。機械は、定例的なもの、前例があるものについては強いのですが、新しい発想は組み込まれていないようです。ただし、人工知能は嘘もつくので、適当な案は出すのでしょう。

通勤時間の長さ

2026年6月20日   岡本全勝

6月6日の日経新聞に「通勤時間、最適な長さはどれくらい? 米研究では「44分」が分岐点」が載っていました。
長時間通勤や通勤地獄は、昭和の働き方そのものです。「企業戦士」なら耐えたのでしょうが、子育て中の人にとってはまさに地獄です。この状況を、企業幹部はおかしいと思わないのでしょうか。

・・・近年、通勤時間が個人にもたらす様々な影響が明らかになってきた。長いほど負担感が増すが、短ければよいとも言い切れない。適正な時間はどれくらいなのか。

通勤時間を快適に過ごせる人ばかりではない。パーソルキャリア(東京・港)が運営する「Job総研」が3月に実施した調査によると、通勤にストレスを「感じる」人は75.8%だった。仕事への影響では「生産性が落ちる」などの声が目立った。

通勤時間はどの程度が適切なのかについて、米ウェイン州立大学などの研究がある。それによると男女を問わず、仕事上の要求が高い場合や家事労働(の負担)が中程度か高い場合に、通勤はリラックスや回復といったリフレッシュ時間として機能する。一定の時間(44分)までは、通勤が長いほどストレスを減らせるという。
一方、通勤時間が44分を超えるような長時間になると、仕事も家事も進められないという重圧感を感じてしまい、負の効果に転じることが分かった。長いほどストレス増につながってしまう。

通勤時間の長さだけでなく、質の面も見逃せない。国土交通省が25年にまとめた鉄道利用者アンケートでは、鉄道内の「混雑」を不快と感じる人の割合がコロナ禍前より大きくなった。特に「着席またはつり革・ドア付近の柱につかまれる程度」の100%前後の混雑率への不快感が高まった。
負担感から病気になる人もいる。清水建設技術研究所の依田柊さんの研究によると、1日120分以上の長時間通勤は、毎月40時間以上の時間外労働と同様に精神障害のリスク上昇と関連していた。両者を比べると「労働からは達成感や成長感などを得られることで負担感を減らせるのに対し、通勤には混雑などコントロールできない要因が多い」と指摘する・・・

インターネットを予想できなかった人たち2

2026年6月17日   岡本全勝

「インターネットを予想できなかった人たち」の続きになります。鈴木幸一・IIJ会長、6月10日の「優秀な技術者結集」から。これまでにないことに挑戦する際には、「尖った人」、それまでの常識に合わない人が必要なのでしょう。

・・・創業4年目の頃、事業の拡大で営業職も必要になり、初めて新卒の学部採用に乗り出しました。コンサルティング会社に委託し、適性検査を行ったのですが、我が社に欲しいと思った人材がことごとく「不適性」となったのです。
そこで、一度、採用に当たる役職付きの幹部すべてが検査を受けてみたところ、私以外の全員が「不適性」と判定されました。性格が偏っていて協調性やバランス感覚に欠けるという判定でした。皆で大笑いした記憶があります・・・

超人は、主体的に考え練習する

2026年6月6日   岡本全勝

5月23日の朝日新聞オピニオン欄、吉井理人・千葉ロッテマリーンズ前監督へのインタビュー「勝手に育った」超人たち」から。

・・・メジャーリーグで活躍する佐々木朗希、大谷翔平、ダルビッシュ有。3投手がアメリカに渡るとき、指導者として携わったプロ野球・千葉ロッテマリーンズ前監督の吉井理人さんは「勝手に育った」と評する。超人に共通する言動とは。その礎となる思考を鍛えるために、周りはどうサポートしたらいいのか。

―「勝手に育った」3投手の共通するものはなんですか。
「好奇心、向上心が強く、自分の頭で考えて工夫して練習する。主体性をもって、自分の意思や判断で物事に向き合うとも言えます。主体性は、言われたままを積極的に取り組む自主性とは明確に異なります」

―とはいえ、主体性は個人の資質によるような……。
「主体的な思考は鍛えられます。ああしろこうしろと他人に指示されるのではなく、自分で考えて取り組むことで、モチベーションが高まる。活躍する選手は自分を客観視できるから、やるべきことがわかるのです」
「まずは自分を知ることが一番のポイントです。三人称で日記を付けてみたり、脳内で自分がコーチになったつもりで自分をインタビューしてみたりすることをお薦めします。『私は』ではなく『吉井は』と俯瞰した視点で振り返る。できたこと、できなかったことが言語化できるようになれば、自ら解決策を見いだせるようになります」

―結果に至ったプロセスに加えて、そのときの感情も振り返ることが大事だそうですね。
「感情によって行動は変わります。気合が入りすぎると力んでしまう。実は家族とケンカしていたという私生活が影響することもある。メンタルをコントロールすることは重要です」
「大谷のすごさは、いつも機嫌良く見えることです。楽しくない日もあると思うんですけど、自分で自分の機嫌をとれる。力を発揮できる精神状態を作れるのです。小さいときから訓練してきたのでしょう。大谷が一人いるだけで、周りの雰囲気がぐっと良くなります。日本が優勝した2023年のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)がいい例です」

―主体的な思考を育むために、指導者や保護者ができるサポートはありますか。
「気づきを与えることが全てだと思っています。まずは相手に話してもらう。安心して話してもらう関係を作るために、相手の主張は全肯定します。そのなかで『なぜ』『どうすればよかった』『どうしたい』と質問攻めにします。最初は上辺だけのことしか話せなくても、質問を繰り返すことで一歩ずつ思考が深くなっていきます」
「答えは与えられません。その人のなかにしかないのです。困ったときにヒントを与えたり、提案したりするなかで、自分に合うと思う解決策を選んでもらいます。自己決定を尊重し、成功体験を積み重ねた先に、主体性は養われていきます。もちろん年単位の時間がかかることもあります」

―勉強などでもそうですが、指導者は「答え」をアドバイスしたくなります。
「一時的には効果が出ますが、やらされてもうまくいかないとやる気がなくなり、やめてしまいます。長い目で見るとマイナスです。サポートする側は我慢が必要です。私も駆け出しの頃は、最初は選手に質問していても、最後は自分で答えをまとめていました。その会話を録音して、見直しました」

「32歳でメジャー移籍し、投手コーチから『自分のことを一番知っているのは自分自身だから、君のことを教えてくれ』と言われたのが印象的でした」