カテゴリーアーカイブ:人生の達人

企業の不祥事、第三者委員会

2017年10月30日   岡本全勝

日経新聞10月25日のオピニオン欄、中山淳史記者の「不正の芽摘む「失敗の科学」」でした。
かつては大事故があった飛行機ですが、世界の民間旅客機による死亡事故発生率は、830万フライトに1回まで低下しています。失敗に学んだ結果です。「失敗をさせない」ではなく、「失敗を事故に結びつけない」との発想だそうです。この記事ではそれに引き続き、企業の不祥事について書いています。

・・・東京都内にある公認会計士事務所が運営するウェブサイト「第三者委員会ドットコム」によると、存続が危ぶまれるような不祥事が起きた日本企業が有識者を入れて設置する「第三者委員会」や「特別調査委員会」の数は2015年以降、年間50件前後に増えている。それまでの2倍以上だ。
確率論的には株式上場企業(3572社)の重大不祥事発生率は毎年1%を超す。ガバナンス(企業統治)改革が進み、不祥事に社会全般の関心が強まっているせいもあろう。今年もすでに31の委員会ができた。アルミ、鉄鋼製品などのデータ改ざんがあった神戸製鋼所も含まれている・・・

・・・一方、慶大の菊沢研宗教授は「日本の組織は合理的に失敗に向かう傾向がある」と言う。例えば、東芝は原子力事業から撤退したら「政府からしかられ、従業員の雇用も不安になる」。神戸製鋼は「納期やコストを守らないと取引先から契約を打ち切られる」などの懸念を抱いた。
「経営陣、管理職は下に向かって『何とかしろ』と命令を下すが、何ともならないとわかっている部下たちは袋小路に嵌まり、不正行為を考え始める。不正が起きても周囲は目をつぶり、何も言わないことがその組織にとっての『合理性』になっていく」(菊沢氏)という・・・

第三者委員会ドットコム」のサイトを見ると、「こんなにもあるのか」と驚くくらい事案が載っています。管理職に参考になる分析です。原文をお読みください。

商工中金事件、奇妙な論理

2017年10月23日   岡本全勝

商工中金事件の続きです。社長が命じた特別調査の際に、コンプライアンス担当は奇妙な論理で、隠蔽してしまいます(要約版p16以下)。はしょって紹介しますので、原文をお読みください。

不正融資をするために、貸出先の数字を改ざんしました。その際に、決裁に付け判断の材料とする「顧客名義の試算表」を、担当者が自作したり改ざんしたことが、私文書偽造罪に当たるかが問題になりました。弁護士に相談して、次のような回答を得ます。
①顧客名義の試算表について、「商工中金作成(名義)資料」(=商工中金内部資料)と認識して作成していた場合、故意がないため、私文書偽造罪は成立しない。
②試算表の自作について「顧客の承諾を得ていたと思っている場合」や「顧客の承諾を得られると思っている場合」には、故意がないため、私文書偽造罪は成立しない。

簡単にいうと、「顧客の資料を改ざんしたのではない、会社の内部資料なので」という理屈のようです。これで、不正ではないと結論づけるのです。
問題は、事実に反した顧客の経営状況(数字)に基づいて融資をしたかどうかです。しかし、それを私文書偽造罪に矮小化して、それには当たらないと判断します。
う~ん、知恵者なのか・・・。

商工中金事件、職場の空気の支配と「性弱説」

2017年10月22日   岡本全勝

商工組合中央金庫での不正融資が、大きな問題になっています。4月25日に、第三者委員会が調査結果を公表しています。興味深いことが載っているので、紹介します。引用には「要約版」を使います。

今回問題になっている不正融資は、リーマン・ショックや大震災の際に、一時的に経営危機に陥った中小企業に、特別な融資をするものです。国費による利子補給があり、倒産した場合も国費で補償(穴埋め)します。ところが、要件に該当しない事業者にも貸し出したことが問題になっています。その際に、担当者が貸出先の試算表を自作し、数字を改ざんしたのです。

その背景として、「過大なノルマ」が指摘されています(p30)。そして、声を上げない現場という企業風土が指摘されています(p32)。改ざん行為に手を染めなかった担当者について、次のように記述されています。
「○○さんは、“自分はそういうのは嫌いだから”といって改ざんをしなかった。でも割当がこなせずに上長から“話が違うだろ”“ふざけんな”と怒鳴られ、干されていた。
自分たちは“改ざんすれば怒られなくて済むのに”“正直者がバカを見る”“要領が悪い”という見方をしていた」

そして、不正を疑った社長が、特別調査を命じます。ところが、奇妙な論理と職場ぐるみで、隠蔽してしまいます。これについては、別に書きましょう。
職場ぐるみでの隠蔽にあたっては、「空気の支配」「決断なき実行」も指摘されています(p38)。
「上から、“不祥事にするな”とは言われていない。ただ“不祥事にしたくないよね”という雰囲気は組織全体にあった。“不祥事にならないといいよね”“できればしたくないよね”“そのためには努力もする(試算表を客先から新たにもらう)”という空気感はあった」
「はっきり誰かと話したのではないが、資料のやり取りも、要件確認にあたるのも同じ空気。上から(もみ消せと)言われて、もみ消さねば、となったのではなく、空気で“これはまずいよね”とみんなが感じた。なんとなくそうなっていた」

「空気の支配」「決断なき実行」は、旧日本軍の太平洋戦争開戦を思い出させる言葉です。
報告書は、また、「性弱説」という言葉を作っています(p46)。
・・・商工中金の内部統制は、不正リスクの存在を前提とせず、「性善説」に立った内部統制であったということができる。その背景には、やはり過度の「同質性」があり、同じ組織の中で生きていく身内に疑いを抱くようなことはできないというメンタリティが垣間見える。
しかし、「性善説」に立った内部統制の失敗が今回の事態を招いたことは明らかである。とはいえ、「性悪説」に立つことが商工中金に相応しいとも思えない。
そこで、「性弱説」、つまり職員は元来弱い存在であり、不正のトライアングル(①動機ないしプレッシャー、②機会、③正当化理由)が揃うと弱い社員は不正に走ってしまうので、不正のトライアングルが揃うのを阻止し、弱い社員を不正に走らせない施策を講じることが必要である、という考えに立脚した内部統制を確立すべきである。
これなら、商工中金の役職員のメンタリティにもマッチし、身内から不幸な職員を出さないための施策として納得しながら進められることが期待される・・・
「性弱説」という言葉とこの指摘は、多くの職場で活用できるでしょう。

永守社長、続き

2017年10月21日   岡本全勝

10月18日の読売新聞経済面、永守社長のインタビューの続きです。
・・・一時期、「灘高ー東大ーハーバード大」に象徴される「きら星」のような人材を採った。残念ながら幻想だったね。創業以来6000人を採用してきたが、学歴と仕事の成果に相関関係はない。だから教育だ。教育で人はガラッと変わる。
ただね、時間で働く方が楽だと思う。残業ゼロは楽をさせるためじゃない。あくまで飛躍への手段です。
これまでは能力が劣る人も長い時間働けば戦えた。しかし、もう延長戦(残業)はない。世の中の受けはいいけれど、社員は生産性を倍にする方がきついよ・・・
原文をお読みください。

次のようなことも。
・・・倒産しそうな会社は原因がある。職場が汚いとか、社員同士あいさつしないとか、資材を高く買っているとか、役員が平日にゴルフしているとか、共通点がある。それを改善することが大事です・・・

永守・日本電産会長、「朝まで働け」から「残業ゼロ」への転換

2017年10月21日   岡本全勝

10月18日の読売新聞経済面「経営者に聞く」は、永守重信・日本電産会長です。「日本の働き方は根本から間違っている」と主張されます。

永守社長は、起業するときに、母親に「人の倍働けるか」と言われます。
・・・だから、僕は1日16時間働くことにした。小さな会社は大企業に比べヒトもモノもカネも劣る。でも1日の持ち時間は24時間で互角です。僕の経営者としてのベースは母にある・・・

その永守社長が、2015年に突然「残業ゼロ」を打ち出します。会社が成長し、連結売上高1兆円を達成した直後です。
・・・「朝まで働け」とかいっていたのに、全く逆の「残業ゼロ」を言い出すんだから、戸惑った社員もいたかもしれない。でも、7年ほど前から、1兆円企業になったらやろうと決めていた。
2000年代に入って、海外企業の買収を進めてきた。欧米の社員は残業しない。ドイツ企業なんて1か月も夏休みを取る。それでもしっかり利益を出す。
生産性が違うんだね。日本の働き方は根本から間違っていると思い知った。時間ではない、中身が濃くないとダメだと。
10兆円企業を目指しています。だから、今の働き方だと1兆円レベルで行き詰まると思った。1日は24時間しかないんだから。そこで残業ゼロ。最初は上司による定時退社の声かけから始めたら、あっという間に残業が3割減り、今は半分くらいになった・・・