カテゴリーアーカイブ:人生の達人

職員が仕事に頑張っている、けど

2019年11月17日   岡本全勝

後輩職員と話をしていて、思うことがあります。
本人が「××の件で頑張っています。こんな成果を上げました」と報告してくれます。良くやっていることは、私もうれしいです。「よかったね。さらに頑張ってね」と応援します。

ところが、何か変だなと思うことがあります。確かに彼や彼女は良くやっていて、成果を出しているのですが。「その仕事って、能力あるあんたが頑張るような内容かね」と思うことがあるのです。
「そんな仕事は、適当に片付けるか、暇な人に任せて。あんたは、もっと重要な仕事をした方が良いよ」と助言したいです。でも、与えられた仕事を一生懸命やっている彼に、そのようなことを言うのは残酷です。そして、それは彼の責任ではないのです。

問題は、有能な職員にさほど重要でもない仕事をさせている、上司にあります。
職員は、与えられた仕事をきちんとやらないと、評価が低くなります。もし彼が勇気と説得力があるなら、上司に対して「この仕事は止めましょうよ」と意見するでしょう。しかし、多くの職員はそんな勇気はないでしょう。ある仕事を止めるとか手を抜くことの判断ができるのは、上司です。

私が若い頃、ある先輩が「この仕事はさほど重要でないので、私の代で止めましょう」と、上司に意見したことがありました。その話を聞いて、びっくりしました。
当時駆け出しの私は、与えられた仕事はきちんとするもの、前任者より丁寧にやることと考えていました。そして、私が担当している仕事は「重要なのだ」とも。
しかし、先輩の話を聞いてなるほどと思い、私もそのような立場になったら、同じようにしようと肝に銘じました。また、止められない仕事でも、どうしたら手を抜くことができるかを、常に考えていました。早く片付けて、帰りたいですよね。

上司になったときは、部下に「その仕事はもっと手を抜けないのか」と質問するようにしました。
あなたも、前年通りの仕事をする際に一度立ち止まって、それが重要か、もう止めても良いかを考えてみてください。その際に、上司に言わずに1人で手を抜いたら、減点の評価をもらいますよ。気をつけてください。

人は物語を求める

2019年11月17日   岡本全勝

千野帽子著『人はなぜ物語を求めるのか』(2017年、ちくまプリマー新書)を読みました。この新書は中学生向けのようですが、この本はなかなか難しい内容です。

人はある出来事を見て、その事実を理解するだけではなく、なぜそうなったか、あるいはそれはどういうことか、その背景や前後を「想像」して、物語の中に位置づけます。著者の説明は本を読んでいただくとして、読みながら考えたことを整理しておきます。

どうやら人間は、ある出来事について、「その意味」を明らかにしたいようです。そして、「その意味」とは、自然科学的な因果関係だけではありません。また、自然現象でない社会の現象でも、「過去にもこうだった」と物語の中に位置づけ、その先を予測します。

そして、そのような物語やいきさつだけでなく、自分にとってどのような意味があるかを考えます。というか、そのような意味づけをしないと、納得できないのです。
天気は自然現象ですから、季節、気温、大気の動きなどで決まります。気象衛星とアメダスが示すとおりです。
しかし、晴れ男と雨女がいるように、晴れたときは「ぼくは晴れ男だ」と自慢し、雨の時は「この中に誰か雨男がいるだろう」と責任を転嫁します。遠足の日に晴れると、「日頃の行いが良いからだ」と意味をつけます。
血液型による性格の当てはめも、そうでしょう。「あの人はA型だから、几帳面だ」と。科学的には根拠がないと分かっていても、そのように「理解」するのです。
この項続く。

こち亀・秋本さん「会議は終わりを決めて」

2019年11月13日   岡本全勝

11月13日の読売新聞「著名人の経済トーク」は、マンガ家の秋本治さん「定時勤務で「こち亀」200巻」でした。

・・・締め切りに追われ、血眼になって24時間描き続ける。マンガ家はそんなイメージが強いようですが、私は午前9時から午後7時の定時勤務で、睡眠もしっかり取ります。アシスタントはタイムカードで出退勤を記録し、残業はありません・・・

・・・集英社「週刊少年ジャンプ」に連載を始めてからの1年は、仕事がいつ終わるのか、自分でも分からない状態でした。締め切りに追われて常にギリギリ。徐々につらくなり、きちんと休みが欲しくなりました。
そこで2年目からスケジュール管理を徹底しました。作業工程を把握して無駄を省き、少しずつ仕事のスピードを速めていったのです。仕事をしないでコーヒーを飲んだり、部屋の掃除を始めたりと逃げることもやめ、座ったら鉛筆を握って仕事を始めてしまう。
余裕が生まれれば、必要なところに時間をかけられます。作品を充実させるための取材や、読み切りの新作にも取り組めます。
締め切りギリギリまで徹夜して仕上げるのを評価する考え方も、あるとは思います。少年ジャンプのスポ根マンガのような、「あきらめるな。最後の最後にどんでん返しだ」という感じでしょうか。ただ、なかなか現実には起こらない・・・

・・・日本人は開始時刻には厳格なのに、終了時刻はいいかげん。打ち合わせや会議がそうです。私は終わりの時間をあらかじめ決めておき、結論が出なければ「また次回」と、打ち切ります。
人間の集中力は1~2時間が限度でしょう。3時間で何も出なかったら、お互いその3時間を無駄にしてしまうわけです。
そんな時は、次回までに絵や企画など具体的なたたき台を用意します。会話だけでは一歩も進まないからです。意見が割れても、自分の考えを強引に押し通そうとは思いません。とりあえず折衷案を作り、もう一度議論する方が建設的です・・・

ワーク・ライフ・バランスは引き算で

2019年11月5日   岡本全勝

11月2日の朝日新聞オピニオン欄「ワーク・ライフ・・・過労」。渥美由喜さん(東レ経営研究所主任研究員)の発言から。

・・・僕も長男(13)と難病の次男(9)を育てながら、父の介護をしています。AI系の技術者の妻は超多忙。家庭のことは夫婦でほぼ折半していて、僕も何度かぶっ倒れそうになりました。
その経験から言えるのは、ワーク・ライフ・バランスは足し算で考えると破綻するということ。ワークにもライフにも多くの時間と労力をかけるのでなく、「引き算」と「かけ算」の組み合わせで考える必要があるということです・・・
・・・ そしてタスクは引き算しても、自己評価は足し算で。「楽している」と思うと罪悪感に襲われますが、「私(オレ)、よくやっている」と思えば、明日に向かえます・・・

そして企業に対しても、改革を訴えます。
・・・ワークに関しては企業風土を変えることで、もっと引き算できる余地があります。日本企業は「公平の軸」が強く、社員に等しく長時間労働や転勤を求めてきました。応えられない場合は、低い給与や昇進コースからの脱落を覚悟しなければなりません。
僕が推奨したいのは、欧州型の「公正の軸」です。達成すべきタスクと労働時間を切り離し、タスクをこなせば短い勤務でもきちんと評価する。子育てや介護でキャリアに差がつけば、後でフォローするのです。
ある先進企業では、個人の状況でワークとライフの優先順位を付けられるように、一人ひとりに合うコースや評価システムを設けていました。働き方を多様にすれば、そもそも不公平感も出ません・・・

三種の鈍器

2019年11月5日   岡本全勝

11月5日の読売新聞朝刊1面コラム「編集手帳
今年のノーベル賞化学賞を受賞した吉野彰先生は、「三種の鈍器」を考えたそうです。備えておきたい3つの高価なものを、「三種の神器」とたとえます。私が子供の時は、洗濯機、冷蔵庫、テレビでした。

先生の考えた鈍器は、その逆です。既に発明されて古く、いずれ新しい技術に取って代わられると考えられるもの。先生が考えたものは、レコード、銀塩フィルム、ニッケル充電池でした。それぞれ100年使われていました。そこで、新しい充電池を考えました。

良い発想法ですね。私たちの職場でも、適用できます。役所に共通する三種の鈍器は、会議、パソコン、資料作りです。拙著「明るい公務員講座 仕事の達人編
このほかに、あなたの職場の三種の鈍器は、何でしょうか。それを見つけて、変えてください。