カテゴリーアーカイブ:人生の達人

人は物語を求める

2019年11月17日   岡本全勝

千野帽子著『人はなぜ物語を求めるのか』(2017年、ちくまプリマー新書)を読みました。この新書は中学生向けのようですが、この本はなかなか難しい内容です。

人はある出来事を見て、その事実を理解するだけではなく、なぜそうなったか、あるいはそれはどういうことか、その背景や前後を「想像」して、物語の中に位置づけます。著者の説明は本を読んでいただくとして、読みながら考えたことを整理しておきます。

どうやら人間は、ある出来事について、「その意味」を明らかにしたいようです。そして、「その意味」とは、自然科学的な因果関係だけではありません。また、自然現象でない社会の現象でも、「過去にもこうだった」と物語の中に位置づけ、その先を予測します。

そして、そのような物語やいきさつだけでなく、自分にとってどのような意味があるかを考えます。というか、そのような意味づけをしないと、納得できないのです。
天気は自然現象ですから、季節、気温、大気の動きなどで決まります。気象衛星とアメダスが示すとおりです。
しかし、晴れ男と雨女がいるように、晴れたときは「ぼくは晴れ男だ」と自慢し、雨の時は「この中に誰か雨男がいるだろう」と責任を転嫁します。遠足の日に晴れると、「日頃の行いが良いからだ」と意味をつけます。
血液型による性格の当てはめも、そうでしょう。「あの人はA型だから、几帳面だ」と。科学的には根拠がないと分かっていても、そのように「理解」するのです。
この項続く。

こち亀・秋本さん「会議は終わりを決めて」

2019年11月13日   岡本全勝

11月13日の読売新聞「著名人の経済トーク」は、マンガ家の秋本治さん「定時勤務で「こち亀」200巻」でした。

・・・締め切りに追われ、血眼になって24時間描き続ける。マンガ家はそんなイメージが強いようですが、私は午前9時から午後7時の定時勤務で、睡眠もしっかり取ります。アシスタントはタイムカードで出退勤を記録し、残業はありません・・・

・・・集英社「週刊少年ジャンプ」に連載を始めてからの1年は、仕事がいつ終わるのか、自分でも分からない状態でした。締め切りに追われて常にギリギリ。徐々につらくなり、きちんと休みが欲しくなりました。
そこで2年目からスケジュール管理を徹底しました。作業工程を把握して無駄を省き、少しずつ仕事のスピードを速めていったのです。仕事をしないでコーヒーを飲んだり、部屋の掃除を始めたりと逃げることもやめ、座ったら鉛筆を握って仕事を始めてしまう。
余裕が生まれれば、必要なところに時間をかけられます。作品を充実させるための取材や、読み切りの新作にも取り組めます。
締め切りギリギリまで徹夜して仕上げるのを評価する考え方も、あるとは思います。少年ジャンプのスポ根マンガのような、「あきらめるな。最後の最後にどんでん返しだ」という感じでしょうか。ただ、なかなか現実には起こらない・・・

・・・日本人は開始時刻には厳格なのに、終了時刻はいいかげん。打ち合わせや会議がそうです。私は終わりの時間をあらかじめ決めておき、結論が出なければ「また次回」と、打ち切ります。
人間の集中力は1~2時間が限度でしょう。3時間で何も出なかったら、お互いその3時間を無駄にしてしまうわけです。
そんな時は、次回までに絵や企画など具体的なたたき台を用意します。会話だけでは一歩も進まないからです。意見が割れても、自分の考えを強引に押し通そうとは思いません。とりあえず折衷案を作り、もう一度議論する方が建設的です・・・

ワーク・ライフ・バランスは引き算で

2019年11月5日   岡本全勝

11月2日の朝日新聞オピニオン欄「ワーク・ライフ・・・過労」。渥美由喜さん(東レ経営研究所主任研究員)の発言から。

・・・僕も長男(13)と難病の次男(9)を育てながら、父の介護をしています。AI系の技術者の妻は超多忙。家庭のことは夫婦でほぼ折半していて、僕も何度かぶっ倒れそうになりました。
その経験から言えるのは、ワーク・ライフ・バランスは足し算で考えると破綻するということ。ワークにもライフにも多くの時間と労力をかけるのでなく、「引き算」と「かけ算」の組み合わせで考える必要があるということです・・・
・・・ そしてタスクは引き算しても、自己評価は足し算で。「楽している」と思うと罪悪感に襲われますが、「私(オレ)、よくやっている」と思えば、明日に向かえます・・・

そして企業に対しても、改革を訴えます。
・・・ワークに関しては企業風土を変えることで、もっと引き算できる余地があります。日本企業は「公平の軸」が強く、社員に等しく長時間労働や転勤を求めてきました。応えられない場合は、低い給与や昇進コースからの脱落を覚悟しなければなりません。
僕が推奨したいのは、欧州型の「公正の軸」です。達成すべきタスクと労働時間を切り離し、タスクをこなせば短い勤務でもきちんと評価する。子育てや介護でキャリアに差がつけば、後でフォローするのです。
ある先進企業では、個人の状況でワークとライフの優先順位を付けられるように、一人ひとりに合うコースや評価システムを設けていました。働き方を多様にすれば、そもそも不公平感も出ません・・・

三種の鈍器

2019年11月5日   岡本全勝

11月5日の読売新聞朝刊1面コラム「編集手帳
今年のノーベル賞化学賞を受賞した吉野彰先生は、「三種の鈍器」を考えたそうです。備えておきたい3つの高価なものを、「三種の神器」とたとえます。私が子供の時は、洗濯機、冷蔵庫、テレビでした。

先生の考えた鈍器は、その逆です。既に発明されて古く、いずれ新しい技術に取って代わられると考えられるもの。先生が考えたものは、レコード、銀塩フィルム、ニッケル充電池でした。それぞれ100年使われていました。そこで、新しい充電池を考えました。

良い発想法ですね。私たちの職場でも、適用できます。役所に共通する三種の鈍器は、会議、パソコン、資料作りです。拙著「明るい公務員講座 仕事の達人編
このほかに、あなたの職場の三種の鈍器は、何でしょうか。それを見つけて、変えてください。

プロの仕事、みんなと一緒につくる

2019年11月1日   岡本全勝

10月28日の朝日新聞夕刊、凄腕しごとにんは、真島悟さんの「プロデュースした通販番組、1万5000本」でした。
・・・ケーブルテレビなどで見られる通販番組「ショップチャンネル」。24時間365日生放送の番組を取り仕切るセールスプロデューサー(SP)を務める。出演者が商品を紹介するスタジオから離れた副調整室から、商品紹介の切り口を臨機応変に変え、指示を出す仕事だ・・・

・・・前職は高級紳士服店の販売員だった。ある日、同僚の代わりに常連客に対応すると「会社に来てくれないか」と名刺を差し出された。当時のジュピターショップチャンネルの社長による一本釣りだった。
「なぜ買うのに迷っているのか」「どんな情報が欲しいのか」を常に想像するのは、前職で培った接客の経験が大きい。
それでも入社当初は苦労の連続だった。生放送中、多くの情報を伝え過ぎ、怒った出演者にインカムを外されたことがある。ベテランの出演者や制作スタッフにあれこれ口を出して煙たがられたこともあった。(インカムとは、ウィキペディアによると、移動しているスタッフへの一斉指令が必要な業務で使用される構内電話。ヘッドセット付きトランシーバーだそうです)

先輩の仕事ぶりを観察し、自宅でも過去の番組を研究した。職場や飲み会の席で積極的に話しかけるうち、徐々に本音を聞けるようになり、番組づくりに対する一人ひとりのこだわりを知った。「自分にできることは限られている。先輩の力を借りていい番組を一緒に作るにはどうしたらいいかと考えるようになって、肩の力が抜けた」・・・