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生き様-仕事の仕方

ケアレスミスを防ぐ

1月17日の日経新聞夕刊に、精神科医の和田秀樹さんの「入試本番 ケアレスミスどう防ぐ」が載っていました。これは役に立ちます。原文をお読みください。ケアレスミスとは、不注意による失敗、うっかりミスのことです。すっかり日本語になっていますね。

・・・入学試験でケアレスミスをどうすればなくせるかというのは大切なことだ。経験的に言われるが、ケアレスミスがなくなれば偏差値が10変わるとされる。
実際に十分に合格できる学力がありながら単純な計算ミスや問題文の読み間違いなどで不合格になる受験生は後を絶たない。
原因も不注意によるミスと考えられているようで、対策というと「気をつけろ」「見直しをしっかりやれ」など精神論が多い。
長年、受験生をウオッチしている立場からいうと、少なくとも本命校の入試ではミスしないように受験生たちは気をつけている。だが、それでも注意不足による失点は生じてしまう。
以前、「失敗学」を提唱した東京大名誉教授の畑村洋太郎先生と対談して本を作ったことがある。注目したのは、失敗は成功のもとなどではなく、放っておくと同じ失敗を繰り返すということだ。繰り返さないために、自分や他人の失敗を肝に銘じる必要がある・・・

・・・このような失敗学や企業の失敗対策をテストでのケアレスミス防止に応用できないかを考えてきた。そこで私が監修する通信教育で受験指導をしている10人ほどの東大生に、受験生がしやすいミス事例を50個集めて分析してもらった。
これらを参考に「ケアレスミスをなくす50の方法」という書籍をまとめた。図表で詳しく記したが、ミスが起きる原因は「油断」「思い込み」「焦り」「見切り発車」「集中力の低下」の主に5つに分類できる。
対策で重要なのはケアレスミスを書きだして、それを自覚したり、原因を分析したりして回避できるよう頭にたたき込むこと。そのために常日ごろやってほしい具体策は3つある。
①返却された答案用紙にケアレスミスによる失点数を目立つように赤字で明記する。つまらないミスでどれだけ損をしたか、意識して自戒するためだ。
②ミスした問題は必ず解き直す。ケアレスミスで誤答しても重く受け止めない人が多い。どんなささいなものでも、解き直すと自分が繰り返してしまう過ちのパターンが見えてくる。
③防止のためのノートを作る。「数式で移項する場合は必ず正負の逆転をチェック」などポイントをまとめて見える化する。内容を目に焼き付けておくことで、ケアレスミスを大幅に減らすことができる。
これらの対策を地道に実践することで、試験を受けるたびにミスをしない体質に変えられる。

試験の本番時にできる対策もある。
例えば、指さしをしながら答えを確認する。文字や数字の写し間違いを防げる。また思い込みによるミスをなくすために、違う角度から問題をみることも必要。検算する場合は逆から計算するのも有効だ。
選択問題では、すぐに答えを導き出せたとしても、もう一度、消去法で確認するという方法もある・・・

プロの経営者のいない日本

1月13日の日経新聞経済教室、久保克行・早稲田大学教授の「企業トップのスキルを問う 経営者の市場を確立せよ」から。

・・・まず、当然のことながら上場企業の経営者には、経営陣に参画する時点で実質的な経営スキルを保有していることが求められる。「実質的な経営スキルを保有している」ということの解釈は様々だが、一つの考え方は、過去に企業経営の経験があるかどうかだろう。
現在の大企業トップは、難易度の高い多くの意思決定が求められる。ふさわしい経験や能力を持つ人が経営者に就くことは、その企業だけではなく社会的にも望ましいといえよう。
ここで疑問が浮かぶ。そもそも日本の経営者は就任前に経営者としてのトレーニングをどの程度受けているのか、言い換えると経営スキルをどの程度保有しているのだろうか・・・

・・・図は2つの指標を示している。一つは「資本関係のない他の上場企業で経営の経験がある経営者」の割合、もう一つは、「資本関係の有無を問わず他の上場企業で経営の経験がある経営者」の割合である。前者が真の意味で経営のプロフェッショナルを示す指標と考えられる。なお、ここでは社長・最高経営責任者(CEO)などの肩書を持つ役員を経営者とした。また非上場・海外企業での経営経験は集計から除外した。
結果は驚くべきものだった。一言で言うと、日本では狭い意味での経営のプロ、すなわち資本関係のない他の上場企業で経営の経験をした経営者によって経営される企業は、全くと言っていいほど存在しないということである・・・

・・・現時点で、経営者の労働市場が機能していない理由の一つは、諸外国と比較して日本の経営者が概して高齢であり、退職後も企業や団体の様々な役職に就いていることがある・・・

オンライン会議の機能と限界

先の日曜日の午前中、オンライン会議に参加しました。ある学術出版について、執筆者と編集者による打ち合わせです。私も、そのうちの1章を分担しています。
この企画が昨年春に始まって以来、様々なやりとりは、電子メールでの連絡と、オンライン会議を組み合わせて行われています。執筆の際の形式などそろえるべき要素は編者から指示があり、執筆者はそれに従って分担執筆します。とはいえ、進めていくうちに、相互に調整をとらなければならないこと、統一した方がよいことが出てきます。そのための、オンライン会議でした。
執筆者が20人を超えます。この人たちが集まるのは、かなり難しいことです。各地から集まるとなると、時間もかかります。それを考えると、自宅から参加できるのは、便利なものです。

参加して、便利なものだと思いつつ、違ったことを考えていました。
参加者は、著名な学者さんたちです。久しぶりにお目にかかる方や、初めてお目にかかる方もおられます。会議が始まる前に、簡単な挨拶はできるのですが、それ以上はできません。
集まっての会議の「効用」は、そのような人たちと挨拶を交わすこと、雑談ができることです。そして、気になっていることを相談したり。親しくなるということは、そういうことですよね。場合によっては、会議後に席を移して話すこと、食事に行くこともあります。

毎年秋にニューヨークで国連総会が開かれ、都合がつく限り総理が出席されます。ところで、総会では各国の代表が入れ替わり、それぞれ主張を述べるだけです。他の国の代表はほぼ出席しておらず、各国の外交官が座って聞いています。それはそれなりに意義はあるのですが、これがどれだけの効果があるのか疑問に思うこともあります。それだけなら、ビデオでの出席と同じです。
ところが、国連総会に各国首脳が出席する意義は、本会議だけではなく、その前後に開かれるいくつもの各国首脳同士の1対1の会議が重要です。これを個別に行おうとすると、日程の調整や各国間の移動など、大変な労力が必要になります。会合に集まるというのは、そのような付随機能があるのです。

あうんの呼吸は上司の甘え

1月11日の日経新聞「私の課長時代」は、柘植一郎・伊藤忠テクノソリューションズ社長でした。

・・・「日本だけでの仕事は面白くない」という気持ちになり、商社を志望しました。
配属は紙パルプ事業で、北米やオーストラリア、北欧から原料を輸入する担当でした。93年にニューヨークが拠点の子会社に出向。米国で初めて課長になり、3人の部下を抱えます。
北米や南米から紙の原料となるパルプを調達し、日本や米国の製紙会社に売る役割でした。当時はパルプの引き合いが強く、売上高の目標達成は難しくありません。しかし異文化でのチーム運営に苦労しました。部下の米国人男性は優秀でしたが「あうんの呼吸」が全く通じません。

ある日、日本から製紙会社の経営者が来ることになり、部下に懇談の飲食店の予約を頼みました。大切な顧客で、「予算はいくらでもいい」と依頼。しかし部下は「ノーリミットなんてありえない」と口にし、困った表情を浮かべます。信頼して任せたつもりでしたが、適正な単価や食の好みなど、具体的な指示を求められました。
チームの目標設定も同じです。例えば私が「あの代理店と何が何でも取引しよう」と命じても、部下からは「なぜその企業なのか」「その新規取引でシェアは何%拡大するのか」などと質問攻めにあいます。日本人同士では少ない言葉でも、チーム一丸で目標に向かう経験が多かったです。しかし米国駐在で、それは「上司の甘えだ」と気づきました。世界の誰にでも伝わるように、明確かつ論理的な指示の方法を鍛える場になりました・・・

美人にキスしながら 安全運転ができる人間は、 キスに十分集中していない

「美人にキスしながら 安全運転ができる人間は、 キスに十分集中していない」という言葉を思い出しました。アインシュタインの言葉だそうですが、出典は明確ではないようです。私のホームページを検索したら、この話は「同時に2つのことはできない」で書いていました。
この言葉は、「二兎を追う者は一兎をも得ず」という格言より、情景を思い浮かべながら、頭に入ります。もっとも私は自動車を運転しないので、このような状況にはなり得ないのですが。

私は、音楽を聴きながら勉強することができません。人間の頭は、同時に二つのことを考えることができないように、できているようです。
例えば、同時に二人の人の話を聞いて理解することはできません。あなたはできますか?
そして、気が散る場所では、難しい本も読めません。勉強にしろ仕事にしろ、難しいことを考えるには、一つのことに集中すること、その環境をつくることが必要です。また、勉強や仕事以外に難しい問題を抱えていると、頭がそちらの方に向かって、今の課題に集中できないこともあります。
集中力、その1。邪魔する要素、外部要因