教員の長時間労働の是正

6月13日の日経新聞教育欄に、青木栄一・東北大学教授の「教員の長時間労働の是正 首長・教育長、役割大きく」が載っていました。青木先生は、教育行政学の第一人者です。『文部科学省-揺らぐ日本の教育と学術』(2021年、中公新書)、「福島市いじめ問題対応改善有識者会議

・・・文部科学省による公立小中学校教員などの勤務実態調査は2006、16、22の各年度に行われた。筆者は研究者チームの一員として調査の企画や結果の分析に関わった。
2年度の調査は携わって3回目にして初めて長時間労働の改善が強く推測できる結果となった。1日の勤務時間に当たる在校等時間(速報値)は16年度比で校長、副校長・教頭、教諭の全職種で減少。教諭では平日は小中ともに約30分、休日は小学校で約30分、中学校では約1時間減った。
平均でこれだけ減ったのは大きな改善である。特に部活動休養日を設定した効果は如実に表れた。新型コロナウイルス禍での行事の縮小なども改善につながった可能性がある・・・

・・・さらに、これだけでは限界がある。文科省は残業を月45時間以内とする指針を定めているが、残業が指針の上限以上に相当する教員は小学校で64.5%、中学校で77.1%に上る。
指針を超える教員がかなり存在する以上、教員文化や学校の職場風土にメスを入れる必要がある。そこで筆者が携わった教員の気質に関するパイロット(試行)的調査の結果を参照しながら、変えるべきことは何かを考えてみたい。
この調査で明らかになったのは教員の極めて強い平等意識である。加えて、学校管理職は過酷な長時間労働を耐えて勤続年数を重ねた「サバイバー」だ。
公立学校は女性管理職比率の低さが問題になる業界だが、当然である。男性並みに働けない限り管理職に登用されることはない。調査では管理職の方が一般教員よりもメンタルヘルスが良好でストレス耐性が高く、仕事の進め方が上手であることが分かった。

病気休職者に占める精神疾患を原因とする教員の割合を年代別に見ると、20代で割合が最も高く年代が上がるにつれて低くなる。これは若手のストレス耐性の低さが問題なのではなく、管理職は耐性の低い教員がいても仕事ができる職場をつくらないといけない。
教頭・副校長は全職種の中で最も労働時間が長い。その教頭・副校長が相互監視の場である「大部屋」すなわち職員室にいて、平等主義が強く「自分だけ得や損をするのは嫌」と考える傾向の強い教員同士が集まって仕事をしている。
そこでは働き方改革の機運が生じることはまずなく、同調圧力によって巻き込まれ型残業が生まれる。定時退勤はもってのほかとみなされ、効率性やタイムパフォーマンス(タイパ)は考慮されない・・・