先日紹介した、平野雅章『IT投資で伸びる会社、沈む会社』から。
・・「情報システムでは必ずトラブルが起きるものです」というと、驚かれるか不愉快な思いをされる読者もいらっしゃるかと思いますが、事実ですから仕方ありません。一般に、機械やシステムの信頼性を100%にすることは、技術的・経済的に不可能です・・
経営者が、あたかもトラブルの起きない情報システムや、事故の起きない原子炉が存在しうるように考えたり説明したり、記者会見で「二度とこのようなことが起きないようにします」と頭を下げることは、不可能なことの空手形を切っているのであり、自分自身と社会に対する欺瞞でしかありません。・・責任のある経営者は、システムトラブルが確率的に起きることを前提に、事業のリスクや責任の取り方を考えているものです・・(p120)。
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生き様-仕事の仕方
社長と課長の違い
15日の朝日新聞別刷りbe、河原春郎ケンウッド会長のお話から。
東芝時代の28歳、アメリカのGE工場に派遣された時の強烈な体験。
・・当時日本で「開発」といえば、海外製品のまねを意味した。だが、米国で体験したのは「世の中にないものをつくり出す」という、まったく次元の違う作業。人種も性格も様々な技術者たちが、議論しながら頭の中にあるアイデアを形にしていく。発言しないと「会議に貢献しない人間はいらない」。自分のイメージを正確に他人に伝えるために、絵や文章に具体的に落とす作業がどれだけ大事かも、この時に学んだ・・
・・社長と課長の視座は違う。リスクの小さい計画をいくら足しても会社の戦略にはなりません。社長の仕事は、全社のリスクを負って方向性を決めること。多くの社長はそこも部下に下請けさせるから、外から大波をかぶったときに判断できない。
面白いたとえがあります。入社して「煙突」の中をはい上がり、社長や役員になって煙突を抜けパッと視界が広がる。自分は金箔をつけて出てきたと思っても、外から見ると煤だった。そんなギャップがある・・
「41年間東芝に勤めた生え抜きなのに、なぜそのギャップが生まれなかったのですか」との問いには、
・・僕は会社では「エイリアン」でしたから(笑い)。28歳でGEに行き、「世界とはこういうもんだ」と思って帰ってきて20年、「あいつは変だ」といわれ続けた・・
講演のコツ
このホームページを見てくださっている方から、「引用しました」との連絡をいただきました。それぞれに、人前で話すことに苦労しておられますね。私も、毎回満足できない結果に終わっています。あそこは、こうすれば良かった。ここは切り捨てるべきだった、とか。
事前準備の際には、これもしゃべりたい、あれもしゃべりたいと、欲が膨らみます。資料をたくさんつける付けるのも、時間不足の原因です。「時間が余ったらどうしよう」と心配になるのです。でも、時間が余ったことなど、ないのです。
若いときは、事前に予行演習をしましたが、最近は、ずぼらになって・・。私は、講演の際には、必ずレジュメを配ります。全体像をつかんでもらうためです。また、今どこをしゃべっているか、観客にわかってもらうためです。そして、手持ちのレジュメには、しゃべる詳細のメモのほか、おおむねの時間配分を、15分単位で書き込んであります。ところが、この目安を守らないので、時間が足らなくなります。
その点、大学の授業は次回があるので、気が楽です。また授業では、一番大事なことはレジュメに載せません。それは黒板に書いて、学生に書き取ってもらいます。これが、学生の居眠り防止・大切な点を覚えてもらうコツです。
講演会は、なかなか起承転結、序破急には、なりません。最近の講演会では、最初の5分間で笑いから入る場合と、最初の5分間で結論を話す場合とを、使い分けています。失敗するのは、しばしば前者の場合です。笑ってもらえなかったり、そのまま脱線するのです。
「力が入って血圧が上がっているな」と自分で気がつく場合も、失敗が多いですね。しゃべるには、ある程度電圧が高くなければ元気が出ませんが、自分で興奮していては冷静に話すことができません。しゃべり手の電圧と聞き手の受容度は、ある程度までは比例しますが、それ以上になると乖離するようです。観客の表情を見て、うまくかみ合っているのがわかると、調子が出ます。この時は、うれしいですね。
うまくいかないときは、落ち込んでしまいます。帰りの新幹線の中で、しばらくして落ち着いてから、「ここは受けたな」とか「ここは、思ったほどは受けなかったな」「これは関心を持ってもらえないか」と振り返り、次への反省材料にします。でも、次回また失敗し・・。
「匿名の人は相手にしない」ことにしていますが、実名を名乗ってのご連絡だったので、取り上げました。
人に頼まれたら
今日の教訓。人にものを頼まれたときの反応、3種類。
1人は、喜んで引き受ける人。2人目は、いやがる人。3人目は、いやなふりをして、もう一度頼まれたら嫌々引き受ける人(本当は引き受けたいのに)。
あなたは、どれですか。また、あなたが頼む側だったら、どのような反応がうれしいですか。(2007年6月26日)
26日の「頼まれたとき」の記事について、何人かのひとから意見がありました。
1 何か、不愉快なことがあったのですか。
→ちょっとね。でも、そんなことでは、HPには書きませんよ。
2 えー、引き受けない人がいるのですか。かつては部下に、「ハイ」か「わかりました」しか、返事は許されなかったじゃないですか。
→そうでしたね。最近は「はい」という返事をもらえる指示しか、部下にしてません。気が弱くなりました(笑い)。厳しくしかれる部下がいるのは、幸せなことです。
若いときに、「先輩と上司にはいくら抵抗してもいい、部下には厳しくするな」といわれたことを、思い出しています。
3 私の職場は人間関係が難しく、ハイと言いたいのですが、一応いやなふりをして相手の出方を見ています。
→その時は、相手もあなたの出方を見ていますよ。「あいつは、あほか」と言われるくらい、何でも引き受けなさい。
4 岡本審議官は、難しいことを頼まれたら、どう答えているのですか。
→はい、相手次第です。気心が知れた方からの依頼なら、難しいことを承知で頼んでおられるのですから、「これとこれが難しいですが、ご承知ですよね。では、できる限りやってみます。だめなら、早めに報告します」。
一見さんなら、「はーい、できる限りやってみますわ。でも、難しいでっせ」と答えます。たぶんそのとき、私の顔には、「無理です」と書いてあるのでしょう。
私たちの仕事は、予測可能性、それも人間関係次第
今週も、怒濤のような5日が過ぎました。「職場で残業はしない」と宣言しているのですが、諸般の事情により、2日もやってしまいました。中間管理職は、自分の時間管理ができないこともあるのは、仕方がないですね(言い訳です)。めどが立たないうちに遅くなってしまい、おかげで1キログラムも減少できました(とほほ)。でも、藤田参事官チームの支えのおかげで、今週分はまあまあ乗り越えることができました。ありがとう。
「いつまでに、何をしなければならない」ということが分かっていれば、あとは簡単です。それに向かって、段取りをそろえ、部下に指示をすればいいのです。
次に重要なのは、参加者との関係です。関係者に対しどこまでコントロールできるか・影響することができるかです。自分ですべてを「仕切る」ことができれば、何も悩むことはありません(その代わり、責任はすべて本人に帰することになりますが)。
関係者とは、通常、上司、部下、交渉相手です。それぞれに人間関係ができていれば、あるいは予測可能な相手なら、話は早いです。早い目に相談に行くとか、多分こう出てくるだろうから、こう答えようと演習ができます。相談しても無駄とわかっていれば、出たとこ勝負でいく・正面から激突するとか、その前に外堀を埋めておく・応援団をつくっておくとか、対策が立てられます。
最後の場合のように、「どうせだめだから」という場合でも、そのような予測さえ立てば、悩むことはありません。開き直ればいいのです。困るのは、予測の範囲を超えるとき、とんでもない方向から弾が飛んでくる場合です。通常の難しい案件は、交渉相手が敵です。これは最初から分かっていることです。だから、手強い敵でも困りません。困るのは、後ろから、横から弾が飛んでくる場合です。