カテゴリーアーカイブ:行政

インターネットにのめり込み心身を壊す人

2023年3月30日   岡本全勝

読売新聞は、3月28日から1面で「情報偏食 ゆがむ認知」という連載を始めました。
・・・インターネットが普及しSNSで誰もが発信者となり得る「情報過多」の現代。個人の興味・関心に合わせて押し寄せる情報が、時に人々の行動を左右する。第2部では、偏った情報に流され心身に傷を負った人たちの姿を通じ、ネットやSNSが認知に及ぼす影響を考える・・・

28日第1回は「「激やせ」検索 壊れた心身」で、美しくなりたいとSNSにはまり込み、摂食障害になったり、過度な美容整形を行った女性の事例が紹介されています。
29日第2回は「ゲーム依存 入院3か月」で、インターネットゲームの中毒になり、医療センターに入院した事例が紹介されています。画面にはまる仕掛けがされていて、若者がのめり込んでしまうのです。

学校教育で、予防策を教えることが必要です。しかし日本の教育界は、そのような対応が遅くて、不得手なのです。

住民組織が土地利用も議論

2023年3月27日   岡本全勝

3月16日の日経新聞、斉藤徹弥・編集委員の「滝桜の三春、持続する自治 住民組織が土地利用も議論」から。

・・・人口減少で使われなくなった土地をどう管理していくのか。国が今夏に策定する国土計画は、地域の土地利用を住民が話し合って決める「国土の管理構想」という考え方を取り入れる。それを40年ほど前から実践している町があると聞き、福島県三春町を訪ねた・・・
・・・街づくりの中核は独自の住民自治組織「まちづくり協会」が担う。若い商業者らに街づくりの機運が高まっていた1982年、当時の伊藤寛町長が合併前の町村単位の7地区に設けた。
住民は同町出身の建築家、大高正人氏ら専門家を交えて三春らしい街づくりを考えた。「住民にとって何が必要か考え、住民との共同思考を重視する。そこで培われた住民自治の力が事業の成否を決める」。伊藤氏は退任後、日本建築学会でこう振り返っている。
住民自治は様々な分野で事業を前進させた。建築では三春住宅研究会や学校建築研究会といった公民連携に発展し、町に優れた建築を生んだ。
土地利用では農地や宅地などのゾーニングを協会が担った。住民は説明会やワークショップで土地の歴史や人口動向も踏まえた議論を重ね、土地利用計画をまとめた。会合は7地区で延べ205回に上ったという・・・

・・・国は国土の管理構想を市町村主体に進める方針で、三春の取り組みは一つの理想だ。そこでは首長の熱意や住民自治組織の力量が問われる。ただ住民自治組織は60〜70代が中心で、企業の定年延長もあり、人材確保は三春でも課題だ。
郡山市に隣接する岩江地区は子育て世代の流入が多い。新しい住民と関係を築くため、伊丹さんは通学や給食で子どもを見守る活動に力を入れ、健康づくりのサロン活動も始めた。地域に育てられた記憶が子どもに残れば、将来戻ってくるきっかけにもなる。
伊藤元町長は「住民がこだわりを持って造ったものには愛着が湧き、町を愛する心が生まれる」とも語っていた。住民自治の街づくりは人づくりでもある。時間と手間を要するが、地道に取り組み続けること自体が地域の持続につながる・・・

女性の昇進を阻む男性たち

2023年3月22日   岡本全勝

3月9日の朝日新聞「「彼らは僕の薫陶を受けてる」 昇進阻んだ男性ネットワーク」から。

・・・大手電機メーカーで成果を出しても課長より上に昇進できず、年下にも抜かれた女性の問いに、上司はこう答えたという。
「君を部長にする気はない。だって、MBA(経営学修士)、持ってないじゃない」
周りの部長の男性たちを見渡しても、MBA取得者は見当たらない。
「MBAを持ってる人、いないじゃないですか」
「彼らは僕の薫陶を受けてるからね。君にはそういう教育をしていない」
「僕の薫陶」という言葉の向こうにある男性ネットワークの存在に、がくぜんとした・・・

・・・日本での賃金や昇進における男女格差は大きい。
経済協力開発機構(OECD)によると、男性の賃金の中央値を100とした時の女性の値(2021年)は日本が77・9。内閣府によると、民間企業の女性管理職比率(課長相当職)は21年時点で12・4%。いずれも先進国最低レベルだ。
格差は経営トップ層にも。企業統治助言会社「プロネッド」によると、東証プライム上場企業の取締役に占める女性の割合(22年)は1割を超えるものの、大半は社外取締役の起用によるもので、内部登用の女性の取締役は1・5%。内部昇格で取締役になれる女性は極端に少ない。
なぜか。女性が育児などを過度に担ってキャリアを断念する場合だけでなく、そうした制約がなくとも昇進の壁に阻まれて、「将来の役員候補」となるべき女性が次々に脱落させられている構図がある・・・

非正規公務員

2023年3月20日   岡本全勝

3月9日の朝日新聞「非正規公務員、女性しわよせ DVの相談員、低待遇に疲弊「限界」」から。

・・・公務員の非正規雇用への置き換えが進み、大半を女性が占めている。専門的な知識が必要な仕事でも低賃金で、多くが有期雇用だ。ジェンダー不平等を解消する旗振り役であるはずの自治体で格差が生み出され、「官製ワーキングプア」と批判されている。

「もう限界だ」。広島県内の自治体で婦人相談員の仕事を約8年続けてきた藍野美佳さん(54)は2021年春、退職を決意した。DV(家庭内暴力)に苦しむ女性を支援する仕事に使命を感じていたが、非正規の待遇の悪さに追い詰められた。
月14万円あまりの給料から税金や家賃、光熱費などを引くと、手元にほとんど残らない。夜はファミレスやホテルで清掃の仕事をし、週末もバイトを入れた。「相談員の仕事を続けるためだった」と話す・・・
・・・難しいケースをいくつも抱えて過労に陥り、最初の3年で2度、医師から就労不能の診断を受けた。しかし、わずかな傷病手当しか出ず、十分に休養することもかなわなかった。
コロナ禍では「夫に居場所を知られずに給付金を受けられるか」という相談が増え、心身が限界に。「仕事に見合った待遇を」と自治体に求めたが、財政難を理由に変わらない。一方で、定年を迎えた男性の正規職員が年収500万円超で再雇用されたと知り、離職に傾いた・・・

・・・1990年代半ば以降、公務員の削減が進んだ。自治労の調査では、94年に328万人だった公務員は2016年には274万人に減った。一方、定数外職員は約3倍の64万人に増えた。女性が多い事務職員や保育士、図書館職員が非正規に置き換わり、相談業務の多くも女性が非正規で担う。20年の総務省の調査では非正規公務員の4分の3を女性が占めた。
公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)の調査では、非正規公務員の79%が年収250万円未満。回答した705人のうち、92%が女性だった。
賞与を出せるなど、待遇改善を図るとして、会計年度任用職員制度が導入されたのは20年。だが、時給や労働時間を切り下げた自治体が多く、収入増にはつながっていない。「契約更新は2回まで」という自治体も多く、今春は雇い止めが大量に起きるとみられる・・・

法に縛られない権力者の孤独と不安

2023年3月16日   岡本全勝

3月3日の朝日新聞オピニオン欄、池田嘉郎さんの「ロシアの破局的な時間」から。

・・・いまやらねば全てが失われ、破局が到来するという切迫感が、ロシアの歴史にはしばしば影を落としてきた。それは「破局的な時間」とも呼ぶべき時間観念である。「時間」のような普遍的に見える概念さえもが、ロシアでは権力者の存在や、権力の行使の在り方と緊密に結びついている。その不可解さは長い固有な歴史で培われたもので、文化史的観点で見ないとわからない・・・

・・・ロシアにおける権力者の地位について、米国の歴史家R・ウォートマンは著書(2013年、Russian Monarchy: Representation and Rule)で、西欧諸国では18世紀初頭から王位継承法が成立して、君主の地位や継承順を規定したのに対して、ロシアでは皇帝はそうした法には縛られなかった、と論じている。
権力者の無制限な力はその後、政治体制の変化にかかわらず、ソ連時代から現代ロシアに至るまで引き継がれる。その地位は法や規約で定められてはいない。いや、それがないわけではないが、ルールを自分でつくり、かつ一方的に変えられる点にこそ、権力者の権力者たるゆえんがある。

近代以降の西欧では、非人格的な法による支配が確立していったため、法が権力者の上位にある。別の言い方をすれば、権力者は個人としてではなく法人として存在している。この「法人概念」が西欧を特徴づけることは大澤真幸と橋爪大三郎の「おどろきのウクライナ」(集英社新書、22年)でも強調されていたが、ロシアでは事情は異なる。皇帝も書記長も大統領も、権力者は個人として力を振るっているのだ。

だが、これは彼らに重い孤独を強いる。ロシアの権力者は、非人格的に続いてゆく法や制度に未来を託すことはできない。個人の有限の人生において何事かを成し遂げねばならないからだ。
継承法や憲法が彼らの地位を担保することがないロシアでは、権力者は「超越的な力」を示すことで地位を維持しようとする・・・