カテゴリーアーカイブ:行政

憲法解釈で銀行救済

2023年4月4日   岡本全勝

3月31日の日経新聞「真相深層」「クレディ・スイス救済で異例の憲法解釈」から。

・・・信用の揺らいだ銀行の救済は是か非か。米国のシリコンバレーバンクが破綻すると、1万キロメートル離れたクレディ・スイス・グループに信用不安が広がった。究極の選択を突きつけられた米欧の金融当局は相次いで「救済」カードを切った。リーマン・ショック後に強化したはずの金融規制の在り方が問われている。

「連邦憲法に基づく措置だ」。日本の内閣に相当するスイス連邦内閣は3月19日、声明を出した。UBSによるクレディ・スイス買収が発表されたこの日、スイス政府は緊急法令を制定。スイス国立銀行(中央銀行)が流動性を供給し、スイス連邦金融市場監督機構(FINMA)が経営統合をお膳立てした。
2.2兆円のAT1債を無価値にすることを命じたのもスイス政府。声明は今回の措置が国を挙げた救済劇であることを明確にした。

異例の介入を可能にしたのが、対外関係を定める憲法の184条と安全保障を規定する同185条だ。184条には「国の利益の保護のために必要とされる場合には、連邦内閣は、命令を制定し、及び決定を下すことができる」とある。185条は「急迫の重大なかく乱に対処するため」の命令を規定している。安全保障の条文を銀行救済に適用したことに、日本の金融庁も「研究に値する」(幹部)と驚く・・・

敵は後ろに

2023年4月3日   岡本全勝

韓国のユン・ソンニョル大統領が、日刊の懸案事項だった元徴用工問題について、韓国国内に反対論も強い中、英断を持って解決策を提示しました。そして、国内の反発に対して、「日本はすでに数十回にわたり、私たちに歴史問題について反省と謝罪を表明している」と述べたとのことです。3月22日付け日経新聞「「日本すでに数十回謝罪」韓国大統領 反日の政治利用けん制」。

・・・韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は21日の閣議で、元徴用工問題などの歴史問題に対する自らの立場を表明した。「日本はすでに数十回にわたり、私たちに歴史問題について反省と謝罪を表明している」と述べ、反日を政治利用しないよう呼びかけた。
16日の日韓首脳会談で日本から謝罪表明がなかったと国内で反発がある点を意識し「韓国社会には排他的民族主義と反日を叫びながら政治的利益を取ろうとする勢力が厳然と存在する」と言及した。
日本の謝罪表明の具体例として、1998年の日韓共同宣言と、日韓併合から100年にあわせ日本が表明した2010年の菅直人首相(当時)の談話に触れた。16日の会談で岸田政権が1998年の宣言を継承する立場を明確にしたと説明した・・・

組織間の交渉は、しばしば相手方ではなく、味方に敵がいます。ようやく妥協できる案にたどり着いたのに、「そんな甘い案では認められない」と、自分の方の代表を揺すぶるのです。そして長期的・全体的な視野でなく、勇ましい強硬論が民衆に受けます。組織の利益を考えるでなく、時には代表者を引きずり下ろして自分が代表者に取って代わろうとしていることもあるのです。

すると、交渉相手方も、その代表の立場を考える必要があります。強硬策を主張して相手の背後の「敵」を勢いづかせて交渉を破談にするのか、できる範囲でその代表を支援するのか。
3月29日の朝日新聞夕刊に、鈴木拓也記者が「関係改善へ 韓国大統領の決断、どう応える」を書いています。
・・・「解決策」を出せば解決ではない。韓国では日本の関わり方が不十分との声が強く、世論の理解を得たい尹政権は、寄付に日本企業が加わることを期待する。
だが、日本企業が寄付をする気配はない。岸田氏が首脳会談後の記者会見で、直接的に植民地支配への「反省」や「謝罪」に言及しなかったこともあわせ、韓国では日本側の呼応が不十分と見る向きが強い・・・
・・・次は岸田氏の訪韓の番だ。日本の「VIP」はどんな決断とメッセージを携えて来るか。尹政権内で期待と不安が交錯している・・・

男女の賃金差公表

2023年4月3日   岡本全勝

3月27日の朝日新聞生活欄「男女の賃金差公表、見えた会社の姿」から。

・・・男女の賃金格差の解消に向け、政府が企業に義務づけた格差の公表が徐々に始まっている。正社員の賃金格差は、男女の管理職の比率や勤続年数の違いの影響が大きいとされる。一方、賃金水準が低い非正規雇用の女性が多い企業は、全従業員でみた賃金格差が大きくなる傾向がある。

昨年7月以降に決算期を迎えた企業(従業員301人以上)から順次、男性の平均年収に対する女性の平均年収の割合を「全従業員」「正社員」「非正社員」それぞれについて公表することが義務づけられた。
イベントの企画などを手がけるグッドウェーブ(東京都渋谷区)では、正社員(183人中61人が女性)の年収は女性が男性の97%とほぼ同じだった。
その一因が、女性の管理職比率が28%(40人中11人)と比較的高いことだ。厚生労働省が2021年度に調査した企業の平均(12%)の2倍以上になる。
背景には、管理職を選挙制にしていることがある。管理職が昇進して空きができたときなどに、希望者が後任に立候補。管理職になったらどんなことをしたいかなどの「公約」を掲げ、部門の全社員が投票して決める。女性社員の一人は「自分たちで選んだ結果なので納得性が高い」と話す。
一方、非正社員(25人中12人が女性)の年収は、女性が男性の167%にのぼる。仕事内容は正社員と大きくは変わらず、「例えば子育てを優先して時給制の非正規を選ぶことができる。たまたま女性の非正規の方が長く働いていた」(同社)。
その結果、全従業員の年収でみると、女性が107%と男性を上回った・・・

・・・一方、低賃金の非正規で働く女性が多い企業は、「全従業員」で見たときの賃金格差が大きくなる。
のりやふりかけなどを作る大森屋(大阪市)の女性の賃金比率は、正社員では68%、非正社員では105%。だが、全従業員でみると26%と低くなる。
正社員は男性が多いが、工場や物流センターでパートとして働く非正規はほとんどが女性だからだ。「非正規の女性と、正社員の男性の賃金を比べるような構図になっている」(総務部)。
おもちゃ卸のハピネット(東京台東区)も、全従業員における女性の賃金比率が40%と低い。正社員では約7割を男性が占める一方、物流倉庫などで働く非正規では女性が7割以上を占めることが要因だ・・・

次のような解説もあります。
「厚労省の22年の調査で、フルタイム労働者の所定内給与(月額)をみると、女性は男性の75.7%だった。格差は20年前に比べると9.2ポイント縮小した。正社員や管理職に占める女性の割合が少しずつ増えてきたことなどが影響している。
それでも海外に比べると格差は大きい。経済協力開発機構(OECD)の調査では、働き手を男女それぞれ賃金順に並べたときの真ん中の人(中央値)で比べると、日本の女性の賃金水準は男性の77.9%。主要先進国(G7)ではイタリアが91.3%と最も高く、ほか5カ国も80%台で、日本が最も低い」

「経済学者もあきれる物価対策」

2023年4月1日   岡本全勝

3月31日の日経新聞「大機小機」、「経済学者もあきれる物価対策」から。

・・・政府は3月22日に追加の物価対策を決めた。前回分も合わせた財政支出は15兆円に及ぶ。筆者が不思議に思うのは、これだけの大規模な経済政策について、経済学者の側からほとんど議論が出ないことだ。筆者が経済学者を代表できるわけではないが、その理由を想像してみよう。

第1に、経済学者は、交易条件が悪化してしまったら、日本の経済状態は悪化せざるを得ないことを知っている。2022年には輸入価格が大幅に上昇したため、15兆円もの交易損失が発生した。このため実質GDP(国内総生産)は1.0%増加したが、実質GNI(国民総所得)は1.2%も減少した。生産活動は増えたのだが、国民の所得水準は低下したのである。
物価対策は、この交易損失を財政で埋めようとしているように見える。これは、現世代の負担を将来世代に置き換えているだけだと経済学者は考えるのではないか。

第2に、経済学者は価格の資源配分機能を重視する。しかるに、政府はこれまで、財政措置によってガソリン価格や電力料金、さらには今回の追加対策でLPガスなどについても価格の上昇を抑え込もうとしている。
輸入価格上昇によって資源関連の財・サービス価格が上昇するのは、これらの消費を抑制せよという市場からのシグナルである。物価対策として価格の上昇を抑え込むことは、逆にこれら財・サービスの消費を奨励することになると、経済学者は考えるのではないか。

第3に、経済学者は、政策を立案する際には、ロジックとデータに基づいて、政策目標を達成するための効果的な政策手段を準備すべきだと考えている。いわゆるEBPM(証拠に基づく政策立案)である。しかるに、政府は昨年の物価対策で、低所得世帯向けに5万円の給付を行い、今回さらに3万円と子供1人当たり5万円の給付を追加した。ところが、対策の目的と効果についてデータに基づく情報が全くない。これでは評価のしようがないと経済学者は考えたのではないか・・・

「証拠に基づく政策立案(EBPM)を提唱している人たちは、この現象をどのように考えているのでしょうか。経済財政諮問会議や財政審議会では、どのような議論があるのでしょうか。

教育委員会の閉鎖体質

2023年3月31日   岡本全勝

3月30日の朝日新聞夕刊「どうなる寄宿舎4」「廃止の決定 当事者抜きで」から。

・・・2022年5月20日、栃木県立那須特別支援学校(那須塩原市)の体育館に保護者が集まった。県教育委員会は21年11月、那須、栃木(栃木市)両特別支援学校の寄宿舎を23年3月末で廃止する、と全校の保護者に通知した。通知から4カ月後の22年3月に1回目、この日が2回目の保護者への説明会だった。

約7年かけて廃止を検討してきた、と県教委の特別支援教育室長が説明すると、父親の1人が質問した。「検討の過程でなぜ、寄宿舎生とその親の意見を聞かなかったのですか」
室長が「検討の場には保護者の代表にも入っていただきました」と返すと、体育館はどよめいた。「聞いていない!」。母親の1人が立ち上がり、「ここ15年間のPTA会長がこの場に来ています。誰も聞いていません」と言った。

朝日新聞が開示請求で入手した県教委の会議録によると、21年5月、非公開の有識者会議が1度限りで開かれていた。特別支援学校の保護者1人が参加していたが、子どもは寄宿舎を利用していなかった。
県教委は、当事者の意見を聞かずに廃止を決めた過程をどう総括するのか。阿久沢真理教育長に取材を申し込んだが、「どの社の取材も受けていない。お断りします」(総務課)との返答だった・・・

「どの社の取材も受けていない。お断りします」が、取材を受けない理由になるのですかね。
議会はどのような議論をしたのでしょうか。知事や市町村長が責任を持たない教育委員制度は、問題が多いです。

(追記)
と書いたら、31日の夕刊に「5 密室の審議、存続の願いは」で、県議会の審議が書かれていました。委員会審議は、すべて非公開だそうです。会議録の開示も、ほとんどが塗りつぶされていたそうです。なぜこの議題が、秘密にしなければならないのでしょうか。