カテゴリーアーカイブ:行政

学校現場への文書半減の試み

2023年4月23日   岡本全勝

4月20日の専門情報誌「官庁速報」が、「学校現場への文書半減=山梨県教委」を伝えていました。県の教育委員会から学校に、1年間で1500枚もの文書が送られているとのことです。
新型コロナウイルス感染症に関して、各省から自治体に膨大な数の文書が送られたことを、かつて紹介しました。役所で仕事をしているとき、送りつけられる大量の文書を「紙爆弾」と揶揄していました。あまりにたくさん来ると、処理できずに放置され「不発弾」のままで埋もれてしまいます。受け取る方の事情を知らずに、自分の方の都合だけで仕事をすると、こんなことが起きます。

・・・山梨県教育委員会は今年度から、市町村教委や学校現場へ送る文書を半減させる取り組みを始めた。国や各種団体からの通知を県教委が精査し、「送付しない」「市町村教委に留め置く」などと分類。共有の必要があるもののみ、要点をまとめた文面と共にグループウエアや校務支援システムで学校現場に送信する。
県教委によると、学校現場に送付される文書は年間1500枚以上に上る。事務負担を軽減し、教育の質向上を図る。教員の担い手確保にもつなげたい考えだ。

今後、国が行う調査やアンケートは、学校基本調査など法律に基づくものや、いじめ調査など児童生徒の命に関わるもの以外、県や市町村教委が分かる範囲で回答し、教員が対応する文書の数を減らす。
県による調査やアンケートは、必要性や方法を見直し、政策立案が目的の場合は必要最低限で実施。可能なものは標本抽出で行う。毎年定例的に行っている調査などは、2~3年に1回などに頻度を下げる・・・

救ってくれたのは市役所でなく支援団体

2023年4月20日   岡本全勝

4月8日の朝日新聞「追い詰められる女性たち5」「「何に困ってる?」最後につながった電話」から。

・・・1年以上前のこと。夫が2人の子どもを置いて家を出て行った。コロナ禍の影響で女性の勤め先は倒産。新しい職も探せない……。
「あ、これで最後」。40代の女性は、1歳の次男の粉ミルクを開けたとき、不安で手が震えた。所持金は残り数千円。お米はほぼない。電気もガスも、水道も止まりそう・・・

・・・ 「子どもたちに食べさせられるもの、ありませんか」
所持金が底をつきそうになり、次男と市役所の窓口に行った。「どうしたらいいですか?」と初めて、自分からつらさを他人に打ち明けた。
だが、色々な窓口をたらい回しにされた。「生活保護の先渡し」として2万円を支給された。ある窓口では職員がこう言った。「ここは、どうしたら良いかを教える場所じゃない」。返ってきたのは、共感や心配ではなかった。
お米も、ミルクも、おむつももうない。「そう必死に説明しても、なにも変わらないことが、とてもつらかった」
帰りがけ、職員は「これ、食べられると思うから、良かったら」と、食べ物を手渡してくれた。備蓄期限が過ぎた硬いビスケット、のどあめ……。子どもが食べられそうなものは入っていなかった。
「私たち家族は、生きているべきじゃないの?」
次男が大きな声で泣いていて、我に返った。無力感にさいなまれた。幸せにしてあげたいのに、できない。感情があふれて、こう言っていた。
「もう、いいです」
市役所を後にしながら、こんなことを考えた。
「生きるの、やめたいな」
人生で初めてそう思った。最寄り駅に向かい、電車に飛び込むつもりだった。

ひらひらひら。
駅のロータリーにたどり着いたとき、ふとした拍子にポケットからピンク色の折り紙が落ちた。市役所で「どうしても困ったら、ここに電話してみて」と渡された携帯番号が書かれた紙だった。「最後だし、かけてみようかな」
電話がつながり、聞こえてきた声は、今も忘れない。
「私もシングルマザーやで。大丈夫」「いま、どこにいるの? 何に困ってる?」
これまでのことを必死に伝えた。「わかった。今から行くわ」。経済的に苦しい女性や若者への支援活動をしているという彼女はそう言って、車で迎えに来てくれた。
その後、スーパーに行って、「必要なもの、全部かごにいれて!」と言ってくれた。戸惑いながらも、ミルクとおむつ、久々の肉などを買ってもらった。長男の迎えにも付き添ってくれ、ハンバーガーを食べさせてくれた。
生活を立て直すため、生活保護の申請など細やかにサポートをしてくれた。
「なんで、優しくしてくれるんですか?」と思わず聞いたことがある。「もう無理だと思ったことがあるから、つらくなるのがよく分かるの」。初めて駆け込める場所を知り、心から安心できた・・・

安倍回顧録にみる「政と官のゆがみ」

2023年4月19日   岡本全勝

4月5日の日経新聞経済面コラム「大機小機」、「安倍回顧録にみる「政と官のゆがみ」」から。

・・・安倍晋三元首相が財務省との意見対立や嫌悪感をつづった「安倍晋三 回顧録」(中央公論新社)が話題になっている。対立の直接の原因は、リフレ派の考え方に立つ元首相が、法律で施行時期が決められていた消費増税を2度も延期したことである。MMT(現代貨幣理論)という異端の経済思想を信奉し財政健全化に興味を持たなかったことも対立を加速させた。一国の首相と官僚組織との間で、財政・経済政策でこれほど大きく意見が異なる事態は、おそらく戦後初めてではないか・・・

・・・さて、一国の首相が異端の経済学を信奉し政策を行おうとした場合、専門家集団である官僚組織はどう対応すべきだろうか。小泉純一郎内閣時代は、首相の諮問機関である経済財政諮問会議でかんかんがくがくの議論が行われた。しかし安倍元首相は増税延期を公約に掲げ選挙を行い、その勝利をもって自らの判断を正当化した。これはポピュリズムそのものである。
一方で政府の役割である構造改革などに手を付けず、10年続けたリフレ派の社会実験も効果を上げなかった。この間の政治と官僚組織の政策決定のあり方は大いに検証される必要がある・・・

忖度の実例

2023年4月18日   岡本全勝

霞が関での忖度の実例が載っていました。朝日新聞4月4日~6日連載「けいざい+ 幻の「戦後最長」景気」です。詳しくは本文を読んでいただくとして、その一部を転載します。

・・・昨年8月、景気をはかる政府の新たな指数がひっそりと加わった。実に38年ぶりだという。この動きに、専門家は「そもそも景気判断を政府がすべきなのか」という根源的な問いを投げかける。背景に何があったのだろうか。
きっかけは、2019年1月末にさかのぼる。
この日、首相官邸で月例経済報告の関係閣僚会議が開かれ、国内経済の基調判断は「緩やかに回復している」と据え置かれた。その後の記者会見で、当時の経済再生相・茂木敏充はこう宣言した。
「我々の政権復帰から始まった景気回復は、戦後最長になったとみられる」
第2次安倍政権の経済政策「アベノミクス」による景気拡大の長さが6年2カ月となり、リーマン・ショックがあった08年まで6年1カ月続いた「いざなみ景気」を抜いた可能性が高い、というのだ・・・
・・・高らかにうたった「戦後最長」宣言の陰で、経済統計を担う内閣府の官庁エコノミストの間には、ある不安がよぎっていた。一部の経済指標が弱く、本当に「戦後最長」になるのかというものだ。
疑念はやがて的中することになる。
景気拡大の期間を実際に決めるのは、直近の景気動向を判断する月例経済報告ではなく、「景気動向指数」がもとになる。景気は時間がたたないと正確な判断ができず、これだと正式な認定に1~2年かかる・・・4日付け「官庁エコノミストの不安的中

・・・そんななか、景気の認定に必要な経済統計がそろったのは、西村への報告から数カ月経った20年の春ごろだった。アベノミクスによる景気拡大が「いざなみ景気」超えには3カ月足りず、18年10月で終わっていたことが明らかになった。
崩れた「戦後最長」――。
ここから官庁エコノミストたちは右往左往する。「戦後最長でなくなっていいのかと、ある意味で忖度した」(別の幹部)結果、浮かんだのはこんな意見だった。
景気後退を認定する前に、景気動向指数のあり方を議論できないか。
幹部は、その意図を次のように解説する。「経済再生相が関わる月例経済報告は、政治的な判断なので間違っていたとは言いにくい。景気動向指数の指標の選び方がおかしい、と言う方が簡単だ」・・・

・・・アベノミクスの生みの親で、官邸の1強体制を築いた当時の首相、安倍晋三はどう受け止めたのか。
関係者によると、安倍に戦後最長にならなかったことを報告した際、「首相は、分かった、それは仕方ないね、とさらっと受け止められていた」という。この年は新型コロナの感染拡大が猛威を振るっていた。
大事にならず、内閣府の幹部たちは胸をなで下ろした。その一人は当時の心境をこう明かす。
「戦後最長にならないことをみな気にしていた」・・・ 5日付け「政治へ忖度「指標あり方議論も」

孤独、引きこもりの調査結果

2023年4月17日   岡本全勝

孤立などに関する調査結果が、報道されていました。

一つは、孤独・孤立の実態調査結果で、孤独感がある人は約40%に上るというものです。4月1日の日経新聞「孤独感「ある」40%に増加 政府22年実態調査」。
・・・孤独感の有無を尋ねた回答の内訳は、「常にある」が4.9%、「時々」が15.8%、「たまに」が19.6%。「決してない」は18.4%だった。年代別にみると、30代と20代では「常にある」が7%超で、他の年代より多かった・・・
これは、内閣府の「孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(令和4年実施)」です。

もう一つは、引きこもりの推計が146万人に上るというものです。日経新聞4月1日夕刊「ひきこもり推計146万人」。
・・・15〜39歳でひきこもり状態だったのは144人。男性が女性より多く、8割が未婚だった。40〜64歳では86人だった。内閣府はこれらのデータを基に15〜64歳のひきこもり状態の人を146万人と推計した・・・
これは「こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)令和5年3月 内閣府」です。