カテゴリーアーカイブ:行政

本土の沖縄論

2023年5月25日   岡本全勝

5月16日の朝日新聞オピニオン欄「沖縄の語り方」、安里長従さんの発言から

・・・歴史をたどれば、薩摩藩による琉球侵攻は経済搾取でしたし、沖縄戦もあった。米統治下における人権の制限、復帰後も日米安全保障条約を維持するための装置としての沖縄振興の問題もある。歴史的に続く非対称な権力関係の中での貧困問題なのです。

本土の左派は沖縄に寄り添うと言いますが、日米安保に反対なので沖縄から本土への米軍基地移転に反対します。結果、基地は沖縄に置かれ続ける。沖縄の負担軽減が目的ではなく、自分たちの願望を実現するために沖縄を手段として語っているわけです。

ここには構造的な差別があります。本土が優先され、沖縄が劣後という構造的差別です。沖縄の貧困も基地問題も、「自由の不平等」という同じ根から生じた構造的な問題なのです。でも、本土の沖縄論はそこに触れません・・・

選挙を伴う権威主義

2023年5月24日   岡本全勝

5月10日の朝日新聞夕刊、東島雅昌・東京大学准教授の「権威主義の国、民主主義の国 現実の政治は何色か」から。

・・・一方において、独裁政治の特徴は近年大きく変化している。スターリンやヒトラー、毛沢東といった歴史上の独裁者たちは暴力と抑圧を用いて体制の力を誇示した。対照的に、シンガポールのリー・クアンユー、ベネズエラのチャベス、カザフスタンのナザルバエフなど現代の独裁者たちは、利益誘導によって人々の「自発的支持」を取り付け、選挙ルールを戦略的に変更して自らの望む選挙結果を得るなど、剥き出しの暴力と不正にできる限り依存しない統治手法をとる。権威主義も民主主義を装うようになっているのだ。

 他方、長らく安定した民主主義であった国々でポピュリスト政治家が台頭し、人々の権利や自由が脅かされている。政治指導者の横暴を抑止する権力の抑制と均衡の仕組みは、一部のエリートの既得権益を守り、「真の民意」を損なうものだと攻撃される。党派の異なる支持者たちの暴力的対立も起きている。

 公正で自由な選挙は現代民主主義の基礎であり、それが独裁制と民主制を分ける試金石だ。しかし、このことをもって、「抑圧=権威主義、自由=民主主義」という図式で世界を色分けすることはできない。「民主主義陣営」と「権威主義陣営」の二項対立が取り沙汰される今、我々が予断を排して現実の政治を観察する必要性は、これまでになく高まっている・・・

岸田政権、政と官の関係

2023年5月22日   岡本全勝

5月11日の朝日新聞「岸田官邸の実像」牧原出・東大教授の発言から。

――安倍政権では側近の「官邸官僚」が政策を強力に推し進めてきました。岸田政権の官邸と官僚の関係はどう変わりましたか。
安倍政権や菅政権と比べると、官邸主導で省庁にあれこれ指示して進める政策は少ないと思う。かといって、官僚が政策をどんどん打ち出していくかというと、そうはなっていない。

――なぜでしょうか。
旧民主党政権から安倍政権、菅政権に至るまで、官邸主導で官僚の頭を押さえつけるような時代が続いたことで、官僚側が自ら考え、政策の弾を込めていくというやり方を忘れてしまっているように思える。
また、官邸が省庁幹部の人事権を掌握しているから、官僚が官邸を飛び越えた政策を打ち出して、にらまれるのは怖い。なので、様子見をしているのかもしれない。

――政治主導の政策決定がうまく機能していないのは、どこに問題があるのでしょうか。
各省庁の閣僚が創意工夫して政策を打ち出す中で、内閣としての方向性を示すのが本来の政治主導だが、官僚をしっかりと引っ張って議論を主導できる閣僚は多くない。官僚が書いたペーパーをそのまま読み上げるような閣僚が多いのが問題だ。

「おもてなし」はもうおしまい

2023年5月20日   岡本全勝

5月7日の朝日新聞グローブ278号「川口市 日本一外国人が多い街」、鈴木暁子記者の「「おもてなし」はもうおしまい」から。

・・・「おもてなしの国だからか、日本は外国人をお客さん扱いしようとしてしまう。外国人が活躍できる環境を整えることができずにきたことが川口の一番の課題です」と市協働推進課の竹内和寿が話していた。「短期滞在で来た人に心地よく住んでもらって帰すのではない。共生しないといけないのに共存レベルで終わっていた」

外国人は地域社会に貢献している。税金だって納めているし、日本人が就きたがらない仕事を担ってくれている。川口市の外国籍住民の年齢構成を見ると、働き盛りの20〜40代が約68%を占める。一方、日本国籍の住民では同年代は約38%しかいない。日本の将来は外国人抜きには成り立たない。

私が生まれた西川口の病院では今日も様々なルーツの子どもが生まれている。同郷の子どもたちが差別やつらい目にあうことなく、夢を持って育ってほしい。「異次元の少子化対策」に必要なのは、誰もが家族と安心して、生きがいを感じながら暮らすことのできる環境をこの国に作ることだ。「なにじん」かは関係ない・・・

引きこもり、家族内での解決には限界

2023年5月17日   岡本全勝

5月6日の朝日新聞くらし欄「ひきこもり146万人:5」「家族内での問題解消に限界」、明治学院大・関水徹平准教授へのインタビューから。

国の調査で、ひきこもっている人(15~64歳)が全国に推計146万人いることがわかりました。明治学院大の関水徹平准教授(社会学)は、調査結果を読み解きながら、「ひきこもりは、家族主義の限界点」だと言います。その理由を聞きました。

――今回の調査で、コロナ禍が原因でひきこもり状態になったと答えた人が約2割でした。
ひきこもりと聞くと一般的には家や部屋から出ない状態がイメージされると思いますが、この調査では、仕事や学校に行っておらず、社会参加の場が限定されている多様な状態を「ひきこもり」ととらえています。
前回調査でも今回調査でも、家や部屋から一歩も出られない人は少なく、多数派はコンビニや趣味の用事では外出していました。コロナ禍でますます、外出頻度だけに着目していては実像が見えなくなってきました。
今回調査でも、ひきこもり群の大半は、家庭・学校・職場のいずれも居場所だとは感じられないと回答しています。本人の自己否定感や社会のどこにも居場所がない感覚、働きづらさに注目する必要があります。

――前回調査では40~64歳だった対象年齢を、今回は10~69歳に広げました。
例えば10代の不登校なら学校教育のあり方、大人のひきこもりなら労働市場のあり方や精神医療や社会福祉への偏見なども関わっていて、世代によって社会的な背景が異なります。ひとくくりにすることで、見えなくなる部分があります。
「ひきこもり」という言葉が政策や調査の文脈で使われるとき、それは個人の行動や家族内の問題としてとらえられがちです。社会参加の難しさを生み出す背景、例えば「フルタイムの正社員」で就労しないと生活が安定しないといった社会構造や社会保障制度の問題が覆い隠されてしまいがちなのです。

――それによって、どんな問題が起こりますか。
家族を唯一の支援のリソース(資源)としてしまうと、親は子どもに就学や就労のプレッシャーをかけてしまい、当事者はますます親に対するネガティブな感情を抱いてしまいます。私がひきこもりの調査を始めた2006年ごろ、当事者たちの多くが「家族と関係が悪いのに、家族にしか頼れない状態にある」と気づいた時、この問題の核が一つ見えた気がしました。

――海外でも、「Hikikomori」という言葉が流通していると聞きます。
欧州の多くの国々では、子どもが一定の年齢になると、法的にも親の扶養義務はなくなります。日本では、年齢制限がありません。だから、日本においてひきこもりは、「家族に頼っている」というイメージがセットになっているのだと思います。
途上国では、親族や地域のコミュニティーが生活保障の基盤です。一方の日本では、核家族を超えた親族や地域の助け合いという基盤は弱く、世帯は不安定になりやすい。以前はそれを補ってきた企業福祉も縮小し、限界が来ています。