カテゴリーアーカイブ:行政

指定管理者制度20年

2023年11月3日   岡本全勝

日経新聞文化面が10月23日から3回連載で「指定管理者制度20年の功罪」を載せていました。

・・・公共施設の管理・運営に民間の参入を認める指定管理者制度が導入されて今年で20年。美術館やホール、図書館といった文化施設では開館時間の延長など利便性が増す一方で、経営効率化による専門人材の大量離職などひずみも生じ、地域の文化芸術を振興する施設の使命が揺らいでいる。制度の弱点をどう乗り越えるのか。最前線を追った・・・

入場者数は増えたが、働く人の待遇の悪さ、学芸員が定着しないこと、定期的に事業者を選定し直すことで長期的視点が欠如することなどが挙げられています。
かつての経験から、直営だから良いとは言えません。他方で「経費削減」という視点でなく、どのように機能を活かすかという視点が必要なようです。「丸投げ」はよくないです。
報道機関だけでなく、行政でも、この仕組みの功罪を検証すべきですね。

昭和をひきずる年金制度

2023年10月30日   岡本全勝

10月18日の日経新聞オピニオン欄、柳瀬和央・論説委員の「「昭和」をひきずる年金制度 男女の違い、まだ必要か」から。男女共同参画社会といいながら、なぜこのような制度が今も続くのですかね。男女共同参画白書が指摘しないのでしょうか。一部の既得権者の反対があると、全体の利益のためにそれを廃止できないことが、日本の発展を阻害しています。この記事は、「政治の役割」に分類しておきます。

・・・夫が働き、妻は家事に専念する――。こんな昭和の家族像を前提にしたルールが公的年金にはいくつも残る。2025年の次期制度改正はこれらの見直しが焦点になる。
「昭和モデル」として最も知られているのは第3号被保険者制度だろう。専業主婦ら会社員や公務員の配偶者は保険料を納めなくても基礎年金を受給できる仕組みだ。
主婦らがパートに出ても収入が一定額以上になるまでは扶養家族として扱われ、年金保険料を納めなくても基礎年金を受給できる仕組みだ・・・

・・・実は、昭和を引きずった年金のルールはこれにとどまらない。家計を支える者が死亡した場合に残された遺族の生活を支える遺族年金にも色濃く残っているのだ。
子どもがいない30歳の専業主婦が会社員の夫を亡くした場合を想定しよう。すぐには難しくても、いずれ仕事を探して収入を得ようとするのが現在では一般的な行動のはずだ。ところが年金制度の考え方はそうなっていない。この女性は再婚するか籍を抜くかしない限り、遺族厚生年金を終身でもらうことができる・・・

単身高齢者サービス契約の問題

2023年10月28日   岡本全勝

10月15日の朝日新聞「おひとりさまの「困った!」対策は? 日本総合研究所・沢村香苗さんに聞く」から。後段で提案されている、自治体の役割は必要でしょうね。

・・・身寄りがない高齢者を主な対象に、入院時の身元保証、死後の葬儀や遺品処理などのサービスを提供する事業者が増え、トラブルも起きています。いま求められることは・・・

・・・私たちが単身世帯に実施した調査では、夫を亡くした高齢女性と、未婚の男性が多くいました。一人暮らしではない高齢夫婦も、どちらかが入院すればそれぞれが「おひとりさま」になるかもしれない。困ったとき、それを助ける人が周りにいないことが問題です。
たとえば、入院するときに保証人がいない。介護保険制度は、本人にふさわしいサービスを選んで契約することになっていますが、その手続きをする家族がいない。調子が悪いなかで終末期医療をどうするかも考えないといけない。退院して5階建ての団地には戻れないから転居するとしても、新しい家を探したり契約したり。実際に動いて手伝う人がいません。
死んだ後、残った空き家やペットは。自分の葬儀は。決めておいたとしても、決めてあることさえ誰にもわからなくなる可能性があります。
ケアマネジャーらが本来業務を超えて支えてきた面もあります。事例が増えすぎ、これ以上支えられないという声を聞くようになってきました。
さまざまなニーズに応えるように、民間の事業者が増えています・・・

・・・契約書も、いろいろな項目があってわかりづらい。体調を崩すなどして、これから入院、入所しようかという高齢者がしっかり理解して契約するのは相当難しい。
生活支援を提供するといっても、本当に必要なときだけ支援するのか、電球をかえるなど日常の困りごとにも対応するのか、事業者によって範囲が全然違います。
利用者としては、やってほしいことは何かを決め、事業者に「これはやってくれるのか」「いくらでやってくれるのか」と確認しながら選ぶしかないのが現状です。

短期的には、標準的なサービスや、「重要事項は説明してください」など注意事項をまとめた公的なガイドラインを示す必要があります。静岡市は、自治体が事業者を認証して優良なところの情報を提供する仕組みを始めようとしています。
中長期的には、国なり自治体なりが何をするのかを改めて考えていく必要があると思います。未婚の人や離婚が増えており、今後、さらに多くの人にかかわる問題になっていきます。特に都市部では高齢期を「おひとりさま」で迎える人が、すごく増えるでしょう。
その際、どういう人がどう困るのかを整理しないといけません。「おひとりさま」も、お金や判断力の有無によって、困っていること、その解決策は違います。一様ではないのです。そして、全員に少なくともこれを担保するべきだとしっかり決められるなら、そこに公的なお金が入ることに、社会的な合意がえられるかもしれません・・・

「過労死白書」睡眠不足、うつ病リスク

2023年10月27日   岡本全勝

厚生労働省が2023年版の「過労死等防止対策白書」を発表したことを、各紙が伝えていました。眠れないからうつ病になるのか、うつ病だから眠れなくなるのか。相互関係にあるのでしょうね。10月14日の読売新聞「睡眠不足 うつ病リスク 過労死白書

・・・睡眠時間と精神状態の関係を比較したところ、うつ病や不安障害の疑いがある人の割合は、理想の睡眠時間を確保している場合や、理想より1時間不足している場合では20%未満だった。これに対し、理想から2時間不足すると約28%、3時間不足すると約37%に上り、理想と実際の睡眠時間の差が広がると、精神状態が悪化する傾向が見られた。
また、前日の疲労を翌朝に持ち越すことがある人の割合は、労働時間が「週20〜40時間未満」で約53%だったのに対し、「週60時間以上」では約69%に達した。白書は「労働時間が長い人は疲労を翌日に持ち越しやすく、うつ傾向も高い。心身の健康を保つため、睡眠時間を確保することが重要になる」としている・・・

公務員本の分析

2023年10月26日   岡本全勝

季刊『行政管理研究』2023年9月号には、参考になる論考がたくさん載っていますが、すこし趣の異なる研究を紹介します。小林悠太・東海大学講師の「知識労働としての公務:出版市場からの接近」です。

本屋には、公務員を読者と想定した書籍がたくさん並んでいます。それらを「公務員本」と呼び、 その機能や出版状況を分析したものです。
公務員は研究者とは違いますが、業務に専門知識が必要な知識労働者です。そのような専門知識から見ると、知識創造、知識移転、知識共有の場面があり、公務員本は移転と共有に機能を発揮しています。
また、専門分野別知識だけでなく、職場での作法、管理職の知識などもあります。
そして、この研究では、1970年代以降の公務員本の変遷を追っています。

対象として、公務員本の出版点数が多い次の5社を選んでいます。ぎょうせい、学陽書房、第一法規、公人の友社、公職研です。
類例のない研究だと思います。ご関心ある方は、お読みください。