カテゴリーアーカイブ:行政

イデオロギー対立がない対立は、新冷戦ではない

2014年11月17日   岡本全勝

朝日新聞オピニオン欄11月11日、ビクター・セベスチェンさん(ハンガリー生まれイギリス在住の作家)の「ベルリンの壁崩壊25年。新冷戦は幻だ」から。
ロシアは資源大国として影響力、発言力を強め、ウクライナの一部を併合して欧米と対立しています。これは「冷戦への逆戻り」「新冷戦」ではないのでしょうか、という問に対して。
・・冷戦と今とでは、全く状況が異なります。冷戦時代、私たちは常に、見かけにとどまらない真の脅威を、ソ連から直接受けていた。それは軍事力でも核戦力でもありません。私たちの人生観を変えかねない「共産主義」というイデオロギーでした。
いかに残忍な結果を生んだとはいえ、共産主義は宗教に匹敵する壮大な思想であり、資本主義とは全く異なる生活感覚、歴史観、世界観を提示しました。実際に、多くの人々の暮らす世の中をつかさどり、経済を運営していたのです。
一方、プーチン大統領が持ち込んだロシア・ナショナリズムには、何のイデオロギーもありません。ロシア人を多少満足させられても、ロシアの枠を超えることはないでしょう。共産主義はかつて、第三世界に解放の希望を与えた。プーチン主義は、それが主義と言えるかどうかはともかく、途上国にいかなる希望も与えません・・

豊かな社会が生むリスク

2014年11月14日   岡本全勝

11月20日の朝日新聞、神里達博さんの「月刊安心新聞。不安の源、豊かさを求めた末のリスク」から
・・いつの頃からか私たちは、新聞を開くと不安になるようになった。この夏以降だけでも、目を疑うような記事がいくつも思い出される。
住宅街が土石流にのみ込まれ、行楽客でにぎわう火山も噴火した。動機不明の犯罪が多発し、近隣諸国との不協和音も収まる気配がない。景気回復の実感は庶民に届かぬまま、国の借金だけは増え続ける。夏にはデングがやってきて、さらには、ずっと凶悪なエボラが越境の機会をうかがっている。
これらは、ジャンルも異なるし、深刻さもまちまちだが、いずれも私たちに不安を引き起こすことだけは間違いない。そんな気がかりなニュースが絶え間なく届けられる毎日。いやもちろん、それは新聞に限らない。およそ現代のメディアは、「安心」とは縁遠い存在なのだ・・
・・社会が変化していく理由は、単純ではない。だからどんな説明をしてみても、言葉はどこかしっくりこない。それでもあえて文字にしてみるならば、不安の大本の原因は、私たちの生きる世界が、複雑に絡み合い過ぎたこと、といえまいか・・
・・しかし、物質的に豊かになってくると、人は徐々に新しいモノを望まなくなる。それよりも、獲得した幸せが失われることを、恐れるようになる。築いた富が奪われる可能性、キャリアや名誉を失う可能性、自分や子孫の健康が損なわれる可能性、そういう「リスク」に注目が集まるようになってくる。そうやって不安なニュースも増えていくのだ。
このように、豊かさを求めた結果新たなリスクが生じ、また豊かであるがゆえにリスクが気になる、そういう現代社会のありようを、ドイツの社会学者ベックは「リスク社会」と名付けた・・

私は、拙稿連載「社会のリスクの変化と行政の役割」月刊『地方財務』(ぎょうせい)で、現代社会のリスクを論じました。特に、第3章(2011年1月号)で、「新しいリスクはなぜ生まれるのか-豊かさの影」では、次のような項目を立てました。そして、科学技術の発達が新しいリスクを生むだけでなく、豊かな社会が新しいリスクを生むことを指摘しました。
1 新しいリスクとは何か
2 科学技術が生む新しいリスク
3 豊かな社会の新しいリスク
なお、この連載は、2011年4月号で中断しています。リスクを論じる立場から、その対応と復興に従事する立場になって、時間がとれなくなったのです。

減りつつあるホームレス

2014年11月13日   岡本全勝

東京都の調査によると、23区内の路上生活者数は914人で、調査を開始した1999年以来最小になりました。ちなみに、1999年には5,798人でしたから8割減です(概要)。都と区による取り組みが効果を上げているということです。一時宿泊所を用意し、自立支援を行っています。取り締まるだけでは、減らないのです。
市町村部や国管理の河川での人数を加えると、東京都全体では1,697人です。都の資料によると、全国でも最多時では2万5千人いたホームレスが最近では7,500人程度に減っています。

オバマ大統領、国民は何を期待したか

2014年11月11日   岡本全勝

アメリカ中間選挙で民主党が大敗したことを、各メディアが大きく伝え、解説しています。オバマ大統領への批判に絡めたものが多いようです。
11月6日の朝日新聞、久保文明・東大教授の解説「経済政策の実績、評価されず」から。
・・民主党敗北の最大の要因は、オバマ政権の経済政策の実績が評価されなかったことだろう。米国経済は好調で、株価は過去最高水準で推移。一時は10%を超えた失業率も5.9%まで下がった。にもかかわらず、実質賃金が上がらないことや格差の拡大などで国民のムードは悲観的だ。世論調査で3分の2が「米国は悪い方向に向かっている」と答えており、共和党政権で起きた大恐慌から経済を立て直したという訴えに国民が実感を持てるようになるには、時間が足りなかった。
加えて、オバマ氏のウクライナや「イスラム国」問題に対する弱腰の姿勢から、リーダーシップが方向性を失って米外交が漂流しているという感覚が広がったことも影響している・・
久保教授は、11月11日の日経新聞経済教室でも、詳しく解説しておられます。
10月28日の朝日新聞オピニオン欄、レオナルド・スタインホーン・米アメリカン大学教授の「相反する人心、つかめぬ大統領」から(この記事は、投票日前です)。
・・現在のオバマ氏の不人気は奇妙な状況ともいえます。大恐慌に次ぐ規模だった2008年以降の金融危機から回復して、経済はかなり好調です。失業率は6%を下回り、企業は大きな利益を上げています。
ただ、オバマ氏はこうした成果を、説得力を持って説明することができませんでした。「もっとうまくできたかもしれないが……」といった調子で自己弁護的な説明が多かった。オバマ氏は優れた雄弁家ですが、偉大な「コミュニケーター」ではないのかもしれません。元大統領のクリントン、レーガン両氏のように、感情レベルで人々とつながることができないようです。もちろん今でもオバマ氏を支持する民主党員は大勢いますが、この国の人々の心の奥底にある「核」をとらえることができていません・・
同じく11月8日の朝日新聞オピニオン欄、フランシス・フクヤマさんの「米国と世界のこれから」が、次のような分析をしています。
・・とても失望しています。2008年に当選したときには、カリスマ性のあるリーダーのように思われました。しかし、国を治めるための協力態勢を築くという点において、極めて無力な大統領です。彼は、人と個人的な関係を結ぶよりも、大きなスタジアムで2万人の前で演説するほうがよほど得意な人物です。
もっと深刻なのは、オバマ氏が内政に集中し、国外の問題についてあまり関心を持たず、大きな問題にかかわろうとしなかったことです・・

国会の英訳、Diet

2014年11月3日   岡本全勝

11月3日の読売新聞文化欄、苅部直東大教授の「翻訳語事情」は、「Diet→国会」でした。
日本の国会は、「Diet」と英訳されます。地下鉄の駅名なども、そう書かれています。前から、「ふ~ん、そう訳すのだ。学校では習わなかった単語だなあ」と思いつつ、それ以上は調べませんでした。ある人はこの英語表記を見て、「ダイエットって、減量のダイエット?」と聞いたことがあります。
アメリカの議会はCongressですし、イギリス議会はParliament。中国の全国人民代表大会はCongressで、韓国の国会はNational Assemblyだそうです。
19世紀に、ドイツとオーストリア=ハンガリーの帝国議会(Reichstag)をそう英訳していたので、両国をモデルとした帝国日本の国会を英訳する際に、この言葉を選んだのだろうというのが、苅部先生の説明です。
しかし現在、オーストリアの議会はParliamentで、ドイツはドイツ語のBundestagをそのまま使うのだそうです。Dietを使っているのは、日本だけのようです。勉強になりました。インターネットで調べたら、衆議院のホームページでは国会はNational Diet、憲政記念館はParliamentary Museumとなっていました。