カテゴリーアーカイブ:行政

高齢単身女性の貧困

2014年10月19日   岡本全勝

10月14日の読売新聞夕刊が、女性の貧困を解説していました。内閣府の「男女共同参画白書」2012年版に、男女別年齢別などの分析が載っています。貧困状態にある人の割合は、高齢期に上昇します。その中でも、単身女性は約半数が、貧困状態(可処分所得が中央値の半分以下)にあります。
そのなかでも、55歳から74歳の単身女性で年収120万円未満の割合は、離婚経験者が33%と高く、未婚19%、死別21%をはるかに上回っています。その理由として、専業主婦が離婚後に正職員の職を見つけるのは難しく、非正規雇用では年金額も低くなりがちと、指摘しています。
ただし、全年齢を通じて、母子家庭の貧困割合が飛び抜けて高く、単身女性、単身男性が次に高くなっています。

事件を起こす少年は加害者か被害者か、捨てられたという意識

2014年10月6日   岡本全勝

朝日新聞オピニオン欄10月3日「少年事件を考える」、井垣康弘さん(元裁判官・弁護士)の発言から。
・・社会は重大事件を起こす子どもを「モンスター」「野獣」とみます。実際は、母親から「あんたみたいな子、産まなかったら良かった」などと嘆かれ、教師からは「お前は学校に来るな」とののしられ、だれからも認めてもらえないために生きる意欲を失った子どもです。自殺する子も多いのですが、親や教師を含む社会に「恨みの一撃を与えてから死にたい」と思ったごく少数の子どもが無差別の殺人事件を起こすのです・・
・・彼らがなぜこういうことをしたのか社会は克明に知るべきです。生きる意欲を失った経過、社会に対する恨みの内容、一撃を加えたいと思った理由などは家裁の調査で判明します。詳しくわかれば、事件を防ぐ方法も見つかる。そのために家裁は克明な決定書を公表すべきで、メディアも審判の代表取材を求めるべきです。社会が何を教訓としたらいいのかを知らせなくてはいけないと思います。
私は家裁で約6千件の少年審判を担当しましたが、鑑別所に入る中学生はほとんどが離婚家庭の子ども。養育費の支払いもなく父親から完全に捨てられた形になっている子は、月に5千円でも送金されている子よりはるかに自己肯定感が低い。そのうえ彼らは学校でも落ちこぼれ、分数はできず、漢字もほとんど書けません。親の離婚、再婚に関連して子どもを放任するのは、「社会的虐待」です。
親の離婚そのものは仕方なくても、子どもが「捨てられていない」と感じられることが非常に重要です。一刻も早く別れたいという思いで養育費はいらないという母親が多いですが、それは危険な行為です。日本では離婚や再婚に伴う「虐待」が平然と多量に行われていることをまず自覚しなくてはいけないと思います・・
簡単には紹介できません。原文をお読みください。

首相と与党との力関係

2014年10月4日   岡本全勝

読売新聞連載「時代の証言者」西尾勝先生、10月4日の「思いがけない活動延長」から。
・・「省庁再編で巨大官庁が生まれるといわれるので、国の仕事を自治体に移譲する勧告に再挑戦して欲しい」。これが、橋本首相の地方分権推進委員会に対する追加要請でした。しかし、それからが大変でした。
国の仕事を自治体に移譲するとなれば、当時の建設・運輸・農林水産の3省が行う道路・河川・ダム・港湾・農業構造改善という公共事業に的を絞らざるを得ない。私はそう考えました。ところが、抵抗が強かったこの3省は、今度は国会議員に訴えたのです。
当時の自民党の政務調査会が動きました。各省と密接につながっている部会ごとに、地方分権改革対策会議などというような委員会を設置した上で、全体を統括するという体制を築き上げたのです。ここが抵抗の拠点となって、各省の官僚には「分権推進委員会からの出席要請には応じるな」と指示を飛ばす事態に発展していきました。
「国会の先生方に止められているので・・・」各省の官僚たちはそう言って、折衝に出てこなくなりました・・
・・首相の発言は非常に重く、官僚に強い影響力を及ぼすことを私は実感していましたが、橋本首相は結局、公共事業の移譲に反対する与党議員を束ねるまでの力は持っていなかったのかと思い知らされたわけです・・

政治家、表と裏の使い分け。許された時代

2014年10月2日   岡本全勝

読売新聞連載「時代の証言者」西尾勝先生、9月30日の「市町村合併推進に反論」から。
1996年12月に第1次勧告(機関委任事務制度の廃止)を出す直前、自民党の行政改革本部で説明した際に、議員が次々と発言します。
・・市町村への権限移譲、市町村合併の推進、首長の多選制限。この3つが党の総意だというのです。
私は市町村合併論に、生意気にも反論しました。「我々は地方6団体の改革要望を基に進めているのに、合併推進を勧告したら地方の結束が乱れます。まずは分権改革の推進を優先し、分権社会が進んでから市町村に考えてもらうのでも遅くありません」
「市町村合併が先生方の信念なら、選挙区でそれを明言して、町村の首長や議員を説得してください」
これに対し、ある議員が「政治がわかっていないなあ。そんなことを我々が言って再選できると思っているのかね」と言いました。
私も負けずに「表と裏を使い分けるから政治はわかりにくい。市町村合併が党の総意なら選挙綱領で明言すべきで、我々に押しつけるのは理解できません」と返したのですが、押し問答になってしまいました・・
このようなことが、許されました。まだ20年前のことです。詳しくは、原文をお読みください。

「委員会勧告を首相は尊重しなければならない」規定の意味の逆転

2014年9月28日   岡本全勝

読売新聞連載「時代の証言者」西尾勝先生、9月27日の「霞が関反発、ルール違反」から。
・・「霞が関のルールを破っている」。地方分権推進委員会が1996年3月に出した中間報告に対して、各省がこう抗議してきました。
委員会としては、連立与党のプロジェクトチームからの要請を受けて中間報告を出したまでです。しかし、霞が関の各省の常識では、政府の審議会が文書を出す時には、関係各省に事前に説明し、各省の意見を聞いて手直しするのがルールだというのです・・
(村山内閣から橋本内閣に代わっています)・・その橋本首相は、国会答弁などで「地方分権推進委員会には現実的で実行可能な勧告を期待する」と何度も発言していました。
この発言はどういう意味か。私は考えました。
地方分権推進法には、委員会の勧告を首相は尊重しなければならないという異例の規定があるけれど、首相の本意は「閣議決定できるような勧告を持ってきてくれ」「各省が合意して事務次官会議でも異論が出ない内容でなければ困る」という意味だと思いました。
戦後自民党政治の慣習では、法案の場合の手順は、各省間の折衝と政府与党間の折衝が済んで初めて事務次官会議の議題になり、そこで合意を経た後に閣議にかけて国会に提出する―という流れです・・
・・「首相は勧告を尊重しなければならないのだから大胆な勧告をすべきだ」メディアの記者の多くは、当時、そう言いました。しかし、現実をみるとそうはいきませんでした。
委員会の力を強めると思われていた「首相の勧告尊重義務」の意味が逆転し、委員会を制約する力になってしまいました・・
各省合意、与党合意を経る手続き下で、改革を進めることの困難さが、象徴的に現れています。