質の高い本を読んだときの満足感は、どのように伝えたら良いのでしょうか。1週間以上かかって、グレゴーア・ショレゲン著『ヴィリー・ブラントの生涯』(邦訳2015年、三元社)を読みました。内容も重いし、判型も大きいので、寝ながら読むのには適していないのですが。1960年代、東西対立が激しい時代に、西ドイツ首相として東方政策を進め、ソ連や東ドイツと和解したブラントの伝記です。
私も子ども時代のことなので、詳しくは知らなかったのですが。プロレタリア的な家庭に婚外子として生まれ、ナチスに抗して長期間亡命し、戦後帰国してから粘り強く社会民主党内を上り詰め、また党の方針を大胆に変え、分裂しそうな党をまとめます。そして、遂に首相になります。しかし、疲れ果て、身近なところに東のスパイがいたことをきっかけに失脚します。ワルシャワを訪問した際に、ナチスの犠牲になったユダヤ人記念碑の前でひざまずく写真が有名です。その写真は、本書のカバーにも使われています。しかしこの行為も、国内では大きな議論を呼び起こします。
その経歴だけでも波瀾万丈なのですが、しばしば鬱状態になったり、党内でライバルと厳しいつばぜり合いを繰り返します。長年連れ添った2番目の妻と離婚し、3番目の妻と結婚。しかし、これも問題を引き起こします。人間味あふれる伝記です。
ブラントの後を継いだヘルムート・シュミット首相の『シュミット外交回想録』(邦訳1989年、岩波書店)などは、同時代として読んで、感銘を受けました。これは政策について書かれたものです。他方、『ヴィリー・ブラントの生涯』は、第三者が伝記として書いたものです。政策だけでなく、権力争いや人間性まで描き出しています。本人の強さも弱さも。
ブラントとシュミットとの間に、そんな確執があったとは知りませんでした。党内争いに勝ち、国内の対立を収め、東西冷戦の間で国の舵取りをする。政治の世界がいかに厳しいものか、勉強になります。翻訳がこなれていることも、読みやすい条件ですね。少し専門的で重いですが、お薦めです。
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業務の取り組み方針を公表する、金融庁
9月18日に、金融庁が「金融行政方針」を公表しました。これは、金融行政が何を目指すかを明確にするとともに、その実現に向け、いかなる方針で金融行政を行っていくかを、明らかにしたものです。「主なポイント」が、わかりやすいです。見ていただくと、金融庁の使命(p1、はやりの言葉で言うとミッション)、課題と目標(p2、3、4、5)のほか、金融庁自身のガバナンス改革(p6、7)も明らかにしています。
良い試みですね。国民や金融関係者に、金融庁の仕事の目標ややり方を明らかにすること、そして自らの組織と意識改革も明らかにする。行政機関に限らず、すべての組織に必要なことでしょう。
復興庁の場合は、使命と目標は比較的明確です。そして、達成度合も、かなりの項目で数値化でき、それをお見せしています。
インターネットと文明
小泉改革
政と官の関係変化
今日は午後から、ドイツの研究者のインタビューを受けました。日本の大学院に留学中とのことです。彼の研究テーマは、日本の政策形成、特に経済外交についての変化、それも行政改革や政と官との関係から見た変化です。私は経済外交は専門外なのですが、行政改革、政と官との関係から、指導教官(大学院の教授。私もお世話になっている方々)の推薦とのことで、お受けしました。
ドイツ語または英語で、英語の通訳を連れてくるとのことでしたが、復興庁にドイツ語のプロがいることを思い出して、彼に通訳をお願いしました。政府要人の通訳を務める彼に通訳してもらうのは、すごくぜいたくなことです。でも、専門外の通訳を連れてこられるより、背景を知っている彼の方が、ずっと円滑に伝わるでしょう。ありがとうF参事官。
事前に質問項目をもらい、それに合うように私の考えをメモに整理しました。政と官の変化については、かつて「行政構造改革」を連載し(惜しかったですね、本にしておけば良かったです)、またこのホームページでも「政と官」の分類を立ててあります。私の近年の主要研究テーマです。それを引っ張り出したり、行政改革のプロの官僚に問い合わせたり、主要紙の政治部記者に問い合わせて、メモを整理しました。私の独自の見解が、大勢とずれていてはいけないので。久しぶりに、この4半世紀の日本の政治と行政改革を考え直しました。
そのメモもドイツ語に翻訳してもらって、事前に研究者に渡しておきました。私もその翻訳をもらったのですが、残念なことに、見出しの数字番号しか分かりませんでした。今日は、そのメモを前提に、質問にお答えしました。制度改革が変化を生んだのか、運用が変化を生んだのか。私はその前提に、国際、経済、社会環境の変化が、日本の政と官の変化を生んだ一番の要因だと考えています。