カテゴリーアーカイブ:行政

オバマ大統領の迎え方。塩野七生さん

2016年5月25日   岡本全勝

5月25日の朝日新聞オピニオン欄は、塩野七生さんの「オバマ大統領の迎え方」でした。いつものように、鋭い切れ味ですね。なるほどと思います。このインタビューを企画した記者、そしてそれを乗せた編集長に敬意を表します。
・・・久方ぶりに日本外交にとってのうれしいニュースだと思いました。
特に、日本側が「謝罪を求めない」といっているのが、大変に良い。
謝罪を求めず、無言で静かに迎える方が、謝罪を声高に求めるよりも、断じて品位の高さを強く印象づけることになるのです・・・

「ヨーロッパ諸国から『あれだけの惨苦を受けながら、ものわかりの良すぎる国だ』と思われるような心配はありませんか」という問に対して。
・・・少し前に、アジアの二つの強国のトップが、相前後してヨーロッパ諸国を歴訪したことがありました。その際にこのお二人は、訪問先の国々でまるで決まったように、日本は過去に悪事を働いただけでなく謝罪もしないのだ、と非難してまわったのです。
ところがその成果はと言えば、迎えた側の政府は礼儀は守りながらも実際上は聞き流しただけ。マスコミに至っては、それこそ「スルー」で終始したのです。
当然ですよね。ヨーロッパは旧植民地帝国の集まりみたいなようなものだから、日本の優に十倍の年月にわたって、旧植民地に言わせれば、悪事を働きつづけた歴史を持っているのです。それでいて、謝罪すべきだなどとは誰も考えない。
そういう国々を歴訪しながら「日本は悪いことをしていながら謝罪もしないんです」と訴えて、効果があると考えたのでしょうか。私には、外交感覚の救いようのない欠如にしか見えませんが・・・
原文をお読みください。

G7サミットの機能と役割

2016年5月22日   岡本全勝

5月20日日経新聞経済教室「サミット 政治外交の焦点」、ケント・カルダー(ジョンズ・ホプキンズ大学教授)「民主主義の共有 再確認を」から。
・・・先進国首脳会議(G7サミット)は1975年の発足以来、40年以上の年月を経て、グローバルに価値あるものへと進化を遂げてきた・・・79年の第2次石油危機への国際的な対応が第1次石油危機よりも容易だったのは、G7史上最も成功を収めた79年の東京サミットでのマクロ経済的な対応とエネルギー政策によるところが大きい。もし70年代初頭にG7が存在したなら、ニクソン・ショックや米国大豆輸出規制に代表される貿易戦争などの騒ぎは起きなかったと筆者は考える。
ここでG7が一体どのようなものか認識することが重要だ。G7は先進工業技術を有する世界で最も巨大な経済国家の集合体だ。最も重要なのは、G7メンバー国が民主主義と市場経済という2つの特質を共有していることであり、広く国際的に関連する共通の価値へのコミット(関与)を明言していることである。
2008年以来、G7はより大きく包括的な機関のG20と国際的な課題設定(アジェンダセッティング)という複雑な任務を共有している・・・

政策の検証

2016年4月29日   岡本全勝

キャノングローバル戦略研究所のサイトに、岡崎哲二と星岳雄さんによる、「政府のイノベーション政策はなぜ失敗続きだったか-第2回 成果を検証する厳密な政策評価が必要だ」(日経ビジネスオンライン2015年10月26日掲載)が載っています。
筆者の主張は読んでいただくとして、ここで取り上げたのは「政策の検証の必要性」についてです。
・・・本稿では、いままでの日本におけるイノベーション政策の主なものを振り返る。特に問題とするのは、30年以上にわたるイノベーション政策の効果が、必ずしも明らかではないことである。日本経済の長期停滞状態を払拭するような、イノベーションに基づく経済成長のシステムはいまだ確立されておらず、現在進行中のアベノミクスにおいてもイノベーション政策が大きな課題になっている・・・
・・・ナショナル・プロジェクトなどの研究開発投資支援策の効果については、参加者の自己評価を超えた客観的効果に関する研究は見当たらない。企業促進政策も、厳密な政策評価がなされたものはなく、そもそも政策によって提供された優遇措置の利用実績が低調なものも多い。
政策の効果を厳密に確かめることなく、同じような政策が主に名前だけを変えて繰り返し実施されてきた。例えば、リスク・キャピタルの供給を目的に、日本政策投資銀行や商工中金といった公的金融機関を使った数々の試みが行われてきたが、それらの政府系機関によるリスク・キャピタルの供給実績は不十分であったと言わざるを得ない・・・
・・・このように、政策の効果は、その政策がなかった場合に起こったであろう状態と比べることによって、評価されなければならない。これは一見難しいと思われるかもしれないが、そのための手法はここ20年ほどの間に飛躍的に進歩した。
日本のイノベーション政策に欠けていたのはこの種の厳密な政策評価である。日本政府は早くからイノベーション型経済の発展を促す上で政策が重要と気づいており、多くの政策を試みてきた。
しかし、厳密な政策評価を伴わなかったので、どのようなイノベーション政策が効果的なのかはいまだ明らかではない。アベノミクスのもと、政府は再度数多くのイノベーション政策を試そうとしている。今度こそ、厳密な政策評価を行ない、そこから学び、政策を調整していくことが肝要である・・・
第1回第3回
イノベーション政策に限らず、政府が行った政策について、より客観的かつ長期的視野に立った評価が必要です。毎年の事業や予算を評価するのではなく、例えばその省・局の10年程度の評価です。各役所は「これをします」「これをしました」という表明は多いのですが、その結果を検証することは、十分に行われていないようです。

検証なき国は廃れる

2016年4月25日   岡本全勝

4月24日の日経新聞政治コラム「風見鶏」秋田裕之編集委員の「検証なき国は廃れる」から。
イギリスのブレア首相は2003年、イラク戦争に参加します。しかし、参戦する理由だった大量破壊兵器は、見つかりませんでした。イギリスでは、2009年に独立調査委員会が作られ、8年かけて検証を終えました。尋問に応じた要人は、ブレア首相を含め100人を超えます。
一方のアメリカは、イラク戦争だけでなく2001年の同時テロの教訓も、独立調査委委員会で洗い出し、それぞれ600ページの報告書を10年前に出しています。日本は戦争には参加しませんでしたが、支持しました。
・・・日本はなぜか、失敗を深く分析し、次につなげるのが苦手だ・・・元幹部を含めた複数の外務省幹部によると、これらを正式に調べ、総括したことはないという。多くの人が原因にあげるのが次の2点だ。
*日本人の性格上、失敗の責任者を特定し、批判することを好まない。
*これからも同じ組織で働く上司や同僚の責任を追及し、恨まれたくないという心理がみなに働く。
同省にかぎらない。日本の組織には多かれ少なかれ、こうした「ムラ的」な風土がある。ならば、ときには第三者が必要な検証をしていくしかない。国家の場合、その役割をになうべきなのは立法府である・・
太平洋戦争中の日本陸海軍が、検証と責任追及を怠ったことは、有名です。例えば、「失敗の本質」。
論旨の展開を無視して、ごく一部を引用したので、原文をお読みください。

木寺准教授、政治学入門書

2016年4月25日   岡本全勝

木寺元・明治大学准教授が、『政治学入門』(2016年、弘文堂)を出版されました。若手研究者による共著です。編者の狙いは、次のようなものです。
・・・「政治現象と政治学を結びつける」というコンセプトのもと、政治現象を考える上での道具として、政治学のものの見方を届けます。
今の政治現象に関する具体例を用いながら、政治の仕組みの説明と、政治学の分析の基本的な方法の解説を融合させることで、政治学を使うと政治現象がどう見えるかを、わかりやすく説明します・・・
このような本は、重要ですね。政治学者向けに、世界の最先端の学問状況を知らせることも必要ですが、多くの有権者と有権者予備軍は、そんな「最先端のこと」は必要ありません(知りたい人は、それらを読めば良いのです)。
それよりは、今の日本の政治をどう学問的に分析するのか。そちらの方が、現在日本の政治に関心を持ってもらうために有用です。そして、政治を「本業としない」大学生たちに興味を持ってもらうこと。この狙いは、なかなか難しいです。各分野の最先端の研究を並べて、「政治学入門」とする方が、簡単ですから。
ところで、しばしば雑誌も新聞も、「日本の政治はダメだ」と書き募ります。それを毎日聞かされたら、国民も「日本の政治はダメなんだ」と思い込みます。戦後70年間、メディアや学界が「国民を教育した」結果がこれです。
すべてを肯定することも、すべてを否定することも、ともに正しくありません。良いところはよしとし、悪いところを指摘して代案を出す。そろそろ、成熟した言論の世界に入って欲しいです。そうしないと、進歩はありません。
すべてを否定することは、楽なんですよね(脱線。そのような論調を書いている人は、子どもたちをどのように教育しているのでしょうか。良いところを誉めなければ、子どもは育ちません)。