カテゴリーアーカイブ:行政

地域福祉の現場は行政のフロンティア

2016年7月9日   岡本全勝

今日は、日本介護経営学会に呼ばれて、シンポジウムに登壇してきました。私は知りませんでしたが、介護の実務家や研究者の学会です。会場は満員でした。
被災地では、高齢者などのケアのため、さまざまな試みが取り組まれました。阪神淡路大震災を教訓に、介護ステーションをつくり、相談員が巡回してと。それ以外にも、地域包括ケアの試行なども。地域福祉の「実験場」だったのです。これまでの経験は、この学会が協力した、小笠原浩一・栃本一三郎編著「災害復興からの介護システム・イノベーション」(2016年、ミネルヴァ書房)にまとめられています。関係者の方には、お薦めです。
私の役割は基調講演でしたが、その後のシンポジウムが勉強になりました。旧知の長純一先生、池田昌弘さんたちから、包括ケアや現在の福祉サービスから漏れ落ちている人たちへの支援現場での課題が、報告されました。現場で活動している人たちの発言は重いですね。実践家の苦悩、といったら良いのでしょうか。「無認可」「認可外」に、次なる課題が存在しています。これまでの医療福祉サービスが、医療、介護、児童、障害者というように対象者別にサービスを拡充してきました。それでも、隙間が残されています。生々しい事例を聞かせてもらいました。
また、個別サービスが、地域での助け合いを壊しているという逆効果も。農業や漁業が忙しい時期に、デイケアに来ている高齢者が、そちらの作業のアルバイトに行くという話がありました。高齢者は行くところを求めているのです。
行政によるサービスの限界が見えてきました。地域で、ともに支え合う場や方法を、生かさなければなりません。しかし、自治体にも国にも、そのような専門家はおらず、部署もありません。新しい行政手法、公共政策が必要です。
「日本の行政課題は、外国から輸入するのではなく、国内の現場で生まれている」という私の主張が、まさに実証されている分野です。さてこれらの課題を、研究者、自治体、国が、どのように吸い上げて解決するか。異業種の方との意見交換は、勉強になります。

上級職はエリートにあらず

2016年7月3日   岡本全勝

6月28日の朝日新聞夕刊に、「省庁 組合離れ加速」という記事が載っていました。労働組合加入率が5割を割ったとのこと。詳しくは記事を読んでいただくとして。労働組合は職員の処遇改善を目的とした組織ですが、その目的の大きな部分を達成して、使命を終えたのでしょう。社会では、労働組合に入っていない非正規労働者が問題になっています。これに答えないと。
ところで、私が興味を持ったのは、次の点です。
・・・組織率が下がる背景に採用の変化を指摘する声もある。95年度の公務員白書によると、試験による新規採用の6割は国家3種などの高卒者だった。ところが、15年度の白書では大卒・院卒者が採用の6割を占め、主流は逆転した。
立教大の原田久教授(行政学)は、国家公務員の労組が元々、幹部候補のキャリア組に比べて昇進・昇給が遅いノンキャリアの処遇改善を要求してきた歴史に着目する。「国家公務員の定数は大幅に減ったが、1万人余りのキャリアの人数はほぼ変わらず、相対的に職員に占めるキャリアの割合が高まった」・・・

かつては、少数のエリートである上級職と、その他の大勢の職員という構図でした。それが、いつの間にか変化していたのです。すると、いわゆる上級職の役割や昇進経路が、変わってきます。幹部への選抜方法も変わってきます。これは、各人にとっても、組織にとっても、意識の変革を求めます。

緩やかな国家の集合体

2016年7月1日   岡本全勝

読売新聞6月19日、解説欄、ブレンダン・シムス(イギリスケンブリッジ大学教授)の「緩慢な統合 欧州の過ち」から。
・・・今のEUはドイツが支配的だ。そのありようは神聖ローマ帝国(962年~1806年)に似ている。この帝国は国々の緩やかな集合体で、政策決定の基本は合意の形成だった。帝国の最高裁判所が法治に目を光らせた。このはるか昔のドイツ流の政治文化をEUは継承したとも言える。
問題は合意形成に時間を要し、喫緊の課題に迅速に対処できないこと。実はアメリカは神聖ローマ帝国も国造りのモデルとして検討したが、決定に時間がかかり過ぎ、統治形態は複雑過ぎ、採用すれば国は滅びるとして退けた経緯がある・・・

オバマ大統領、広島演説

2016年6月19日   岡本全勝

オバマ大統領、5月27日の広島での演説から。
・・・Technological progress without an equivalent progress in human institutions can doom us.  The scientific revolution that led to the splitting of an atom requires a moral revolution, as well.
That is why we come to this place.  We stand here, in the middle of this city, and force ourselves to imagine the moment the bomb fell.  We force ourselves to feel the dread of children confused by what they see.  We listen to a silent cry. ・・・

アメリカ大使館による日本語訳
・・人間社会に同等の進歩がないまま技術が進歩すれば、私たちは破滅するでしょう。原子の分裂を可能にした科学の革命には、倫理的な革命も必要なのです。
だからこそ私たちは、この場所を訪れるのです。この町の中心に立ち、勇気を奮い起こして原爆が投下された瞬間を想像してみるのです。目にしている光景に当惑した子どもたちの恐怖を感じてみるのです。 声なき叫び声に耳を傾けるのです・・・

・・・That is why we come to Hiroshima.  So that we might think of people we love -- the first smile from our children in the morning; the gentle touch from a spouse over the kitchen table; the comforting embrace of a parent ?- we can think of those things and know that those same precious moments took place here seventy-one years ago.  Those who died -? they are like us・・・

・・・だからこそ、人は広島を訪れるのです。そして大切に思う人々のことを思い浮かべます。朝一番に見せる子どもの笑顔。食卓でそっと触れる伴侶の手の優しさ。ホッとさせてくれる親の抱擁。こうしたことを考えるとき、私たちはこの同じ貴重な瞬間が71年前、ここにもあったことを知ることができます。犠牲となった方々は、私たちと同じです・・・

障害者分野への企業連携の試み

2016年6月17日   岡本全勝

多くの企業は、社会的貢献(CSR)を考えておられます。しかし、どこでどのようにしたらよいか、わからないこともあるようです。他方で、地域や自治体では、支援を必要としている課題も多いです。しかし、誰がどのように支援してくれるかわかりません。それをつなぐことが、重要なのです。
障害者支援は、企業の取り組みが進んでいる分野です。しかし今後その支援を広げるためには、支援したい企業と支援を受けたい福祉事業所とをつなぐ必要があります。厚生労働省が、それに乗り出しました。「障害福祉サービスでの企業CSR連携促進事業」。
この紹介記事を書いたのは、品川文男さん、復興庁OBです。復興庁での企業連携を学習して、戻った先の厚労省で、この仕組みに取り組みました。なお、この記事が載った、月刊「ノーマライゼーション障害者の福祉」2016年5月号では、そのほかにも、CSRと障害者支援が紹介されています。
復興以外の現場で、この新しい行政手法が広がると良いですね。ご関心ある方は、拙著「復興が日本を変える」をお読みください。
新しい行政手法の伝道師より。