カテゴリーアーカイブ:行政

社会の課題に取り組むNPO

2016年9月3日   岡本全勝

日経新聞9月2日夕刊「パーソン」は、河野俊記者の「社会起業家が新公益連盟、分野の枠超え政策提言」でした。
・・・子どもや女性の支援、災害復興、地域活性化など社会が抱える課題の最前線で奮闘する、NPOの代表など社会起業家が「新公益連盟」を結成した。分野の枠を超えた政策提言や経営・人材育成のノウハウ共有を狙う。東日本大震災を機に社会貢献への関心は高まった。ただ個々の活動だけで社会を変えるには限界がある。そんな危機感を胸に、志を同じくする人たちが続々と集まった・・・
大震災の被災者支援、被災地の復興に際し、NPOは大きな貢献をしてくれました。拙著「復興が日本を変える」で紹介したとおりです。社会でもだんだんと認知されつつあります。
課題は、被災地だけでなく全国に広げること。被災者支援だけでなく、その他の社会の課題解決に広げることです。社会でもっと認知してもらうことです。参考、「復興がつくった新しい行政」の図3。
他方で、行政とどのように連携するかが課題です。社会の課題を解決するのが行政の任務であり、地域の課題を解決するのが市町村役場の任務です。私は、市町村役場に、「地域の課題解決のためのNPOとの連携窓口課」を作るのが一つの方法だと考えています。
河野記者、良い紹介をしてくれて、ありがとう。

日本の革新勢力がリベラルだという誤解

2016年9月3日   岡本全勝

読売新聞8月30日「リベラルとは何か」、井上達夫・東大教授の発言から。
・・・リベラリズムは歴史的に啓蒙と寛容の伝統に根ざす。その哲学的基礎は単なる自由ではなく、「他者に対する公正さ」という意味での正義の理念だと私は考える。自分の政敵に対してもフェアに振る舞うことで、政治社会を暴力的な無秩序の状態ではなく、言論と言論が戦う世界にすることだ。かつての革新が名乗る今のリベラリズムはリベラリズムに背反している。その典型が「護憲派リベラル」だ。
リベラリズムは、対立する諸勢力がフェアな政治的競争のルールを互いに守る姿勢の中に、法の支配や、憲法で権力を統制する立憲主義の基礎を求める。
ところが、護憲派リベラルは、自分たちの特定の安全保障政策を政敵に押しつける道具に立憲主義を利用している。専守防衛ならば自衛隊・日米安保条約は合憲だとする解釈改憲や、違憲だけど容認するというご都合主義に居直っている・・・
・・・9条改正の是非を「リベラル対保守」の対立と結びつけるのは的外れだ。
憲法に盛り込むものは、統治構造と基本的人権の保障だ。一方、非武装中立で行くか、個別的自衛権にとどまるか、集団的自衛権へ行くか、などは安全保障政策の問題であって、特定少数者の人権と関係ない。政策論争の問題だ。
ただし、国民の無責任な好戦的衝動や政治的無関心から、政府が危険な軍事行動に走らないよう、戦力統制規範を憲法に盛り込むべきだ・・・最低限、軍隊の文民統制と、武力行使に対する国会の事前承認は憲法で明定すべきだ。この最低限の戦力統制規範すら現憲法が欠くのは、9条により、戦力が存在しない建前になっているからだ。「9条が戦力を縛っている」は護憲派のうそ。9条のため憲法は戦力統制ができない・・・
佐伯啓思・京大名誉教授の発言から。
・・・日本では戦後、歴史と伝統の一貫性を強調しつつ、現実には日米同盟を中心に国益の実現を目指す保守と、社会主義に共感しながら労働者階級の利益を目指す革新が対立した。自由より社会主義を目指す点で、革新はリベラルとはいえない。米国型リベラルが重視した福祉や平等を現実に実現したのは自民党だ・・・
原文をお読みください。

大日本帝国の解体、植民地との関係

2016年9月1日   岡本全勝

朝日新聞8月27日「戦後の原点」テッサ・モーリス=スズキさん「突然の帝国解体、旧植民地と未清算の一因」から。
「多くの日本人にとって、帝国が解体したログイン前の続きという歴史意識は薄いのでは」という問いに。
・・・日本は戦争に敗北した瞬間、それまでに得た支配地域を手放さなければならなくなりました。しかも、それは突然でした。大英帝国の場合、アジアやアフリカで独立運動も起き、植民地支配の終わりは少なくとも数十年をかけて進行するプロセスでした。
本は対照的です。敗戦と同時に突然帝国が終わったことは、旧植民地との間に今日まで未清算の問題が残る一因になりました。
日本では悲惨な敗戦体験もあり、責任意識より被害者意識のほうが支配的になりました。市民レベルでの旧植民地とのつながりが突然断ち切られたことも、双方の歴史認識の隔たりを広げた。日本政府は清算に積極的に取り組まなかったが、冷戦構造にすぐ組み込まれたせいで台湾や韓国の人々が日本を強く批判できなくなった事情もある・・・
これは、あまり取り上げられない論点です。歴史の教科書にも取り上げられることは、少ないでしょう。しかし、日本の政治家やオピニオンリーダー、アジアで活躍する人には、必須の項目です。原文をお読みください。

アメリカの反知性主義

2016年8月20日   岡本全勝

朝日新聞8月18日オピニオン欄、アメリカ外交問題評議会上級研究員、マックス・ブートさんの「米共和党 愚かな党のふり、現実に」から。
・・・1950年代には、民主党の大統領候補だったスティーブンソンは「エッグヘッド(はげ頭の知性派)」、共和党の大統領候補だったアイゼンハワーは「まぬけ」、という図式が定着した。この見方は、リチャード・ホーフスタッターの「アメリカの反知性主義」でお墨付きを得た。
民主党は米国の知性派の代弁者だという印象が固まるなかで、共和党員は、政治目的のために、反知性のレッテルを受け入れた。だが、少なくとも最近まで、それは、見せかけのものだった。アイゼンハワーは安全保障問題に比類なき知識を持ち、レーガンは無能な役者に見えて、何十年も公共政策を磨き、演説原稿を自分で書き続けた。ニクソンはキッシンジャーらハーバード大学教授に内外の政策を託した。
レーガン政権時代、共和党は、アメリカンエンタープライズ研究所やヘリテージ財団のような保守系シンクタンク、ウォールストリート・ジャーナル紙、コメンタリー誌などを効果的に活用し、「政策政党」として知られるようになった。
だが、共和党と政策分野のつながりは徐々に弱まっている。かつてはアービング・クリストルやジョージ・ウィルなどの思想家が果たしていた役割を、ラジオトーク番組の司会者やテレビタレントが担うようになった。見境なく、軽率で、すべてを消耗させる怒りの感情が真っ先に漂うようになった・・・

イギリスのイラク参戦、その検証

2016年8月20日   岡本全勝

朝日新聞8月19日オピニオン欄「イラク参戦、英の誤り」、英王立統合軍防衛研究所前所長、マイケル・クラークさんのインタビューから。
「報告書の指摘の中で何が最も重要だと考えますか」という問に。
・・・英政府全体が組織的機能不全に陥っていた、という点です。特に内閣の機能不全です。後世の歴史家はそこに着目するでしょう・・・
「中東を熟知した英情報将校「アラビアのロレンス」は21世紀にはもういないのですね」という問には。
・・・その通りです。西側情報機関はイラク軍、共和国防衛隊の指揮官らの携帯電話番号をつかみ、彼らの居場所をつかんでいた。一方でイラクの電力や上下水道などの社会基盤がいかに劣化していたかに考えが及ばず、戦後も国家機能が維持できると考えた。イラクの経済状況を全く把握していなかったのです。植民地時代には現地に長年滞在し、人脈を持ち、地域に精通した行政官が何世代も生み出されていました。植民地主義の是非はともかく、彼らは極めて有能で物事を進めるのが得意でした・・・
・・・開戦前の計画は優れたものではなかったが、適切な戦後計画を欠いたことで事態はさらに悪化した。この点について(占領政策を主導した)米国には英国以上に重大な責任があります・・・
・・・重要なのは、戦略的観点で政策を判断することです。イラク戦争の最大の勝者はイランでした。そのために英米の中東における権益維持はより困難になった。イランは域内での米英の最大の敵対相手なのですから。独裁者の除去が倫理的に正しいかどうかは別に、戦略的な計算では行動の結果、域内がより安定したかどうかが問われます。戦略的には米英が目指したものと全く逆の効果になりました・・・