イギリスのイラク参戦、その検証

朝日新聞8月19日オピニオン欄「イラク参戦、英の誤り」、英王立統合軍防衛研究所前所長、マイケル・クラークさんのインタビューから。
「報告書の指摘の中で何が最も重要だと考えますか」という問に。
・・・英政府全体が組織的機能不全に陥っていた、という点です。特に内閣の機能不全です。後世の歴史家はそこに着目するでしょう・・・
「中東を熟知した英情報将校「アラビアのロレンス」は21世紀にはもういないのですね」という問には。
・・・その通りです。西側情報機関はイラク軍、共和国防衛隊の指揮官らの携帯電話番号をつかみ、彼らの居場所をつかんでいた。一方でイラクの電力や上下水道などの社会基盤がいかに劣化していたかに考えが及ばず、戦後も国家機能が維持できると考えた。イラクの経済状況を全く把握していなかったのです。植民地時代には現地に長年滞在し、人脈を持ち、地域に精通した行政官が何世代も生み出されていました。植民地主義の是非はともかく、彼らは極めて有能で物事を進めるのが得意でした・・・
・・・開戦前の計画は優れたものではなかったが、適切な戦後計画を欠いたことで事態はさらに悪化した。この点について(占領政策を主導した)米国には英国以上に重大な責任があります・・・
・・・重要なのは、戦略的観点で政策を判断することです。イラク戦争の最大の勝者はイランでした。そのために英米の中東における権益維持はより困難になった。イランは域内での米英の最大の敵対相手なのですから。独裁者の除去が倫理的に正しいかどうかは別に、戦略的な計算では行動の結果、域内がより安定したかどうかが問われます。戦略的には米英が目指したものと全く逆の効果になりました・・・