カテゴリーアーカイブ:行政

担当者の異動と行政の継続性

2017年3月24日   岡本全勝

3月20日の読売新聞文化欄、藤村龍至・東京芸術大学准教授の「考景・幕張ベイタウン」から。
千葉市の幕張ベイタウンは、高さを5階程度に低く抑えた集合住宅が並び、それに包まれるように街路や中庭を配置し、洗練された外部空間を作っています。
・・・バルセロナやパリ、ベルリンなどに見られる良質な住宅街のようだ。このような街がなぜ日本で実現できたのだろう。
いくつかの理由があるようだ。ひとつの要因は、沼田武知事時代の1980年代後半に、都市デザインの専門家組織が継続的に関わる仕組みが作られたことだ・・・行政組織は通常、特定の人に権限が集中しないように人事を流動化させる。幕張でも行政及び企業の担当者は、長い事業期間のあいだに次々と入れ替わり、変わらなかったのは部外の専門家組織だけだった。簑原さん(都市プランナー)を含む彼らが開発事業者の意向をくみつつ、全体方針に基づいて絶えず調整を継続したから行政担当者や開発担当者が次々と交代しても、当初の方針を守ることができたのだ・・・

指摘されているように、行政の担当者は、2年や3年で異動していきます。これは、職員を活性化するためにも必要なことなのですが、過去のことが忘れ去られることや、政策の継続が途切れたり、実績の検証がおろそかになるという欠点があります。
これを防ぐ方法に、大きな政策や方針は、法律や条令で規定しておくこと、要綱などを定めておくこと、住民と協約を結んでおくことが考えられます。また、役所内部では、引き継ぎ書が重要です。

官僚の責任

2017年3月14日   岡本全勝

3月10日の日経新聞特集は「緩む財政 元大蔵幹部の悔恨録」でした。
・・・赤字国債の大量発行が当たり前になってしまった日本の財政。敗戦直後のハイパーインフレの記憶は高度経済成長にかき消され、借金を膨らます失敗の歴史を繰り返してしまった。当時の大蔵省(現・財務省)幹部は何を考え、どう対応しようとしたのか。取材班は退官後に現役当時を振り返る内部資料「口述筆記」を情報公開請求で得た。大蔵幹部の「悔恨録」は未来への警句でもある・・・

詳しくは原文をお読みいただくとして。私は、「官僚の責任」を考え続けています。不祥事もありますが、政策の失敗です。政策の失敗は、国民に与える影響が大きいのです。もちろん、大きな政策の失敗は、大臣や内閣の責任です。しかし、それを支えた官僚の責任はどうなのか。また、責任の取り方はどうするべきかです。
振り返ると、水俣病などの公害を防げなかったことや被害拡大を止めることができなかったこと。近年では、血液製剤事件で厚生省薬務局が廃止になりました。BSE牛処理・牛肉偽装事件に関して、農水省畜産局が廃止されました。原発事故を防げなかったことで、経産省原子力安全・保安院が廃止されました。
責任の取り方は別としても、政策の失敗は検証するべき課題です。何をもって「失敗」とみるかも含めてです。

朝日新聞に登場しました、官僚の役割

2017年3月1日   岡本全勝

今朝3月1日の朝日新聞政治面に、登場しました。「民主党政権後に加速した官邸主導 省庁の発信消えた」。
・・・麻生官邸で首相の日程調整を切り盛りした総務省出身の岡本全勝氏は、各省庁の発信と報道機関の取り上げ方に注目。「役所が発信しなくなった。新聞の1面に個別の省庁が発表した記事が載ることは、統計資料を除いてほとんどない」と分析する・・・。

補足すると、私は首相官邸と各省とで、そして政治家と官僚とで、役割分担があると考えています。もちろん、総理の指示で各省大臣が動き、大臣の指示で官僚が動きます。それを前提としつつ、官僚には政治家にない役割があります。
各省の役人は、それぞれの分担している政策において専門家です。その経験と知見で課題を発見し、対策を考える。また、総理や大臣から指示のあった課題について、対策を考えます。それを大臣と議論しつつ、政策を練っていくのです。官僚、特に幹部はもっと政策を世に問うべきであるというのが、私の持論です。
官僚が、官邸や大臣の意向に反して意見を公に発言するのは、よくないことです。よほど政治家が間違っているならともかく。上司を批判するなら、直接申し述べるのか、職を辞して行うべきです。
もっとも、私が主張しているのはそのような事態ではなく、自分の所管の行政について課題を整理し、将来への方向性を示すことです。

ミャンマーの民主化

2017年2月21日   岡本全勝

2月17日の朝日新聞オピニオン欄はテインセイン・ミャンマー前大統領のインタビュー「軍政に幕を引く」でした。詳しくは原文を読んでいただくとして。
軍事政権を平和裏に民政に移管しました。2003年に、軍事政権が民主化への行程表を発表し、憲法策定のための国民会議の再開、憲法の基本方針の審議、憲法草案の起草、国民投票、総選挙実施、国会召集、大統領選出の道筋を示しました。民主化には紆余曲折があり、2016年に、アウンサンスーチー氏率いる野党に政権を渡しました。
インタビューでは、民主化の前提として経済発展を進めたことが述べられています。
・・・ただ、すぐに民主主義体制になる、というわけにはいきません。経済面で課題がありました。車道もない、橋もない、教育施設もない。インフラが貧弱ななかでは、民主化はすぐには達成できません。まず経済を発展させ、インフラを整え、教育を立て直すことが必要だったのです。
「経済の基礎がなければ民主化が進まないと考えていた、と?」
・・・そうです。だから、まずはインフラを整え、経済を発展させる必要があると思っていました。
経済を立て直し、教育も推進するため、2003年にロードマップ(行程表)7点を策定しました。それをステップ・バイ・ステップで進行させていったのです・・・
・・・繰り返しになりますが、民主化の移行のためには基本的に必要な『土台』があります。経済発展です。経済がしっかりしないまま民主化に突き進み、失敗した例は海外にたくさんあるではないですか。橋や道路、大学を整えるのには時間が必要だったのです・・・

国づくりを進める際の、苦労がでています。指摘されているように、民主化だけを進めても、国民の不満が出て政情が不安定になった例は、最近のイスラム圏にも見られます。経済、インフラ、教育などを整える必要があります。いろいろな問題があることを認めつつも、暴動や流血なしに民主化した例、軍政幹部が指導して民主化した例として、高く評価されるべきだと思います。

中国、官僚の不作為

2017年2月17日   岡本全勝

2月15日の朝日新聞「核心の中国」は、「反腐敗に軟らかな抵抗、違反扱い警戒「何もしない」江蘇省泰州の官僚」でした。
工場の建物が完成したのに、周囲の道路が手つかずだった。市の幹部が、仕事を進めなかったとのこと。
・・・こうした「不作為」が、静かに広がっている。
かつては企業を誘致さえできれば、手段はなんでもありだった。だが、今は違う。2015年5月、共産党機関紙・人民日報は地方官僚たちの本音をこう伝えた。
「(習近平指導部の)反腐敗が厳しく、無理をすれば規則違反に問われる。何もしなければ、違反に問われることはない」
習国家主席も、手を焼いている。「不作為の問題を重視し、解決しなければならない」。昨年1月に地方の幹部を集めた党の会議でも、強調してみせた。だが、自らが旗を振る反腐敗が国中に行き渡るにつれて、皮肉にも手足が動かなくなり始めているのだ。
昨夏、一つの言葉が中国のネット上で瞬く間に広がった。「軟らかな抵抗」。中国人民大学の金燦栄教授が広東省広州での講演で語った言葉だ。金教授の専門は国際関係だが、国内政治の現状をこう論じた。
「15年ごろから、習主席は全国で軟らかな抵抗に遭っている」。地方のエリートや政府幹部の不作為は普遍的な現象だという。「彼らは守れと言われた規定は非常にまじめに守る。上に反対はしない。だが、誰も仕事をしないから、あらゆる政策は無意味になる」・・・