カテゴリーアーカイブ:行政

日経新聞、大震災復興事業の検証。産業復興

2021年2月10日   岡本全勝

日経新聞の大震災復興事業の検証、2月9日の第2回は産業復興でした。「水産加工の沈下やまず 津波被災地「空白」埋める挑戦

今回の災害復旧復興政策での大きな項目の一つが、産業なりわいの再建支援です。以前の災害では、事業の再建は事業者の自己責任でした。今回、町での暮らしを再開するために、そして地域のにぎわいを取り戻すために、産業再開に国費を投入しました。商店がないと暮らすことができず、勤め先がないと失業します。仮設店舗や工場の無償貸し出し、グループ補助金、二重ローン対策、人とノウハウの支援などです。

これらの支援策も、当初から全体像を持って行ったものではありません。そのときそのときに必要なものを考え、政策として作り上げたのです。従来の「哲学」を変更するには、それなりの理屈が必要です。グループ補助金も、当初は地域の主たる産業を再建するという趣旨(縛り)でした。その後、その条件を徐々に緩めました。
施設設備を復旧しても売り上げが戻らない事業もあり、大企業から人とノウハウの支援をもらいました。これらの支援策を積み上げ、産業なりわい支援を復興の大きな柱の一つとしたのです。参考「復興がつくった新しい行政

これは画期的なことで、関係者からも高く評価されました。ただし、いくつかの課題も見えてきました。
まず水産業では、サンマや鮭といった魚が捕れなくなり、困っています。
グループ補助金では、復旧を目指したので、環境の変化や事業の進化を織り込むことができませんでした。変化の激しい現在の事業環境では、先を読むことも必要なのでしょう。しかしそれは難しいことです。
公共インフラの復旧は、行政が主体になって行うことができますが、産業となりわいは、主体は事業主です。支援はできても、判断は事業主にかかっています。この項続く

女性を直撃するコロナ

2021年2月10日   岡本全勝

2月5日の日経新聞夕刊、白波瀬佐和子・東京大学教授の「コロナ禍、女性の雇用直撃」から。

――コロナ禍は特に女性に影響を与えたといわれる。
「コロナは飲食業など対面型のサービス業を直撃した。誰が働いているかといえば女性だ。非正規雇用の約7割を女性が占め、低賃金で不安定な立場にある。看護や介護、保育などの分野にも女性の働き手が多く、過酷な労働環境にさらされている」

――家庭でも負担は大きい。
「日本は家庭内の性別役割分業が固定的だ。学校が休校になった際、誰が子の面倒を見たか。大抵は女性だ。実態調査で、コロナ禍で『生活に変化があった』と答えたのは男性よりも女性の方が多かった。非常時では、子や親の世話、食事作りなど細かいことまで想定して備えなければならない。多くは女性が担っており、ストレスが増している」

――子どものいる家庭では、母である女性の雇用が危うくなれば、子にも影響が出かねない。
「ひとり親家庭では母親が失職するか、収入が減ったケースもある。子どもの宿題を見る精神的な余裕もなくなってしまう。家庭の厳しい状態は子どもの進路にも関わる」

――暴力の問題も見逃せない。
「ドメスティックバイオレンス(DV)の相談件数は2020年4~11月の期間、前年同月に比べ1.4~1.6倍になった。ほとんどが女性からの相談だ。性暴力の相談件数も急増し、若い世代の予期せぬ妊娠が問題になっている。女性の自殺も増え、事態は深刻だ。一連の状況を見ると、女性に集中した対策がとられてしかるべきだ」

日経新聞、大震災復興事業の検証。予算総額

2021年2月9日   岡本全勝

2月8日の日経新聞1面に大きく「震災10年、空前のインフラ増強 予算37兆円超」が載っていました。「東日本大震災10年 検証・復興事業①」とのことです。
・・・3月11日で東日本大震災発生から10年となる。地震と津波に加え、原子力発電所事故まで起きた未曽有の複合災害に対し、政府は37兆円超の予算を投じ復興を進めてきた。前例のない手厚い支援は功を奏したのか。復興事業を検証する・・・

大震災から10年が経つことで、各紙が検証記事を書いています。良いことです。政府が取った政策がよかったか、どこに問題があったかを、調べてください。そして、今後の教訓として欲しいです。
この記事が取り上げている、予算総額とその使い道も、検証対象の一つです。それぞれの事業は必要性があり、無駄には使われていません。その点では、会計検査では適切でしょう。その上で、次につなぐ教訓として、次のような視点を指摘しておきます。

東日本大震災では当初、どれくらいの復興復旧予算がかかるかわかりませんでした。被害総額は試算されましたが、それが政府の復旧事業対象となるわけではありません。インフラはどの程度復旧するのかの判断があり(今回は復旧以上に、復興道路が造られました)、がれき片付け経費、高台移転経費、産業復興支援などは推計の外だったでしょう。

復旧復興事業を進めて行くにつれて、予算額が確定していったのです。いわゆる積み上げです。
他方で、当初見込みで予算総額が仮置きされ、財源が手当てされました。復興増税を国民にお願いし、政府が保有する日本郵政の株式売却益を当てることとなりました。ひとまず必要な財源を、財務省は手当てしてくれたのです。その後の事業費増加についても、それぞれ財源手当てをしてくれました。だから、これだけの事業を実施することができました。

予算を使って行う事業である以上、予算額が上限になります。そしてそれは、財源裏打ちが必要です。次回このような大災害が起きたときに、この総額と財源をどう考えるかが、一つの要素となります。そして、予算額が無限でない限り、事業に優先順位を付けなければなりません。
それぞれの事業は必要であっても、どれを先にするか、あるいはどの事業はあきらめるかです。
東日本大震災では、その時点その時点で必要性を判断しました。走りながら考えたのです。それを積み上げたのが、この結果です。もし予算額に限りがあり、その中から選べと言われると、市町村長はたぶん、被災者支援、住宅再建、産業再開を優先し、インフラ復旧についてはその中で優先順位を付けると思います。
また、各集落を元に戻すのか、他の方法をとるのかなども、検討されるでしょう。これについては、別途書きます。この項続く
参考「復興事業の教訓

教師の育成、子どもの貧困を学ぶ

2021年2月7日   岡本全勝

1月28日の読売新聞解説欄、古沢由紀子・編集委員「子供の貧困 教師の卵学ぶ」から。
・・・教員養成大学で、子どもの貧困問題や支援の方策について学ぶ機会を拡充する動きが広がっている。学校現場には、困窮家庭の子どもの状況を早期に把握し、地域や福祉の専門家らと連携する役割が求められるためだ。教師を目指す学生らの意識向上とともに、教科指導に偏りがちな教員養成課程のカリキュラムを実践的な内容に見直す効果も期待される・・・

・・・厚生労働省の国民生活基礎調査によると、18年の子どもの貧困率は13・5%に上り、約7人に1人の子どもが、厚労省が目安とする所得の基準を下回る困窮家庭で暮らす。こうした状況を踏まえ、約8割の学生が教師志望の同大では、子どもの貧困問題について学ぶ授業や研究活動を本格化させている。
オンラインによる小学生の学習支援を主体とした授業は、17~19年度に実施された。同大と連携する都内の自治体で毎年度、希望者を募集。自治体からの就学援助を受けており、学習塾などに通わせる余裕のない家庭の児童らを対象に無償で行った。
時間、距離の制約などから、指導にはネットを活用。当初は子どもが騒いで立ち歩くケースもあり、学生たちは雑談を交えるなど、信頼関係づくりに努めてきた。
中学校の数学科教師を目指す男子学生は「回を重ねるうちに集中して勉強する子が増えてきた。自分は子どもの頃、当たり前のように塾に行っていたが、そうでない子と接するのは貴重な体験。教師を目指す上で、いろいろな見方ができるようになるのではないか」と話した。

学習支援には、スクールソーシャルワーカーなどの専門職を目指す学生らも参加。指導後には毎回、学生同士で意見交換し、報告書を提出する。月1回程度、学生の有志と児童らが対面で交流する場も設けた。
担当した入江優子准教授は「教師志望の学生らが、多様な子どもたちと接する機会は大切だ。大学生には比較的学習機会に恵まれてきた人が多いが、学校現場に出れば様々な困難を抱える子どもがいる実情に触れてほしい」と話す・・・
・・・一般に、教員養成大学の授業は教科の指導法に重点を置き、学力水準が高い付属学校での実習などが「学校現場の実態に合っていない」との指摘もあった・・・

これまでの教育が、「よい子」を育てることに重点を置き、漏れ落ちる子どもを視野に入れていないと、連載「公共を創る」で主張しています。選抜された優秀な子どもを相手に教育実習をしていても、現場では役に立ちません。できる子どもは、極端に言えば「放っておいても」勉強します。手のかかる子どもを、どう指導するのか。それを教えないと、教員養成にはなりません。
職場でも同様です。「よい部下の育て方」だけでは、管理職研修になりません。出来の悪い職員をどう育てるのかが、重要なのです。
平成31年度からの新しい教職課程では、「特別の支援を必要とする幼児、児童及び生徒に対する理解(1単位以上修得)」が増えています。

自治体の対口支援

2021年2月7日   岡本全勝

2月1日の日経新聞「東日本大震災から10年、災害支援 自治体連携進む」が、よい解説をしていました。

・・・2011年の東日本大震災では関西広域連合の7府県が支援先を分担して責任を持つ「カウンターパート支援(対口支援)」を始めるなど、地方自治体の組織的活動が注目され「自治体連携元年」とも呼ばれる。それから10年。広域連携支援は地震から風水害にも広がり、国も18年に自治体の対口支援を制度化した。しかし大きな被害が想定される首都直下地震や南海トラフ地震への支援体制は曖昧なままで、事前の備えが急務だ・・・

自治体による被災自治体支援は、東日本大震災で大きく進みました。この記事にも書かれているように、特定自治体が長期的に継続して支援してくれると、ばらばらな人が短期間に来てくれるより、はるかに効果が大きいです。これは、個人ボランティアより、組織ボランティアであるNPOが被災者支援の際には効果を発揮することと、並べることができます。また、支援した自治体も、勉強になるのです。
記事には、課題とその後の充実も書かれています。