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行政-行政機構

予算重視から結果重視へ

15日の経済財政諮問会議では、ムダ・ゼロ政府を目指してで、民間ベストプラクティスの導入が取り上げられました。有識者提案が、興味深いことを指摘してます。
・・企業と官庁との大きな違いは、企業が結果主義であるのに対し、官庁が予算主義だということである。官庁は予算の獲得に力を入れ、その予算を使い切ることを重視する。国民からすると、結果が重要である。仕事の結果や効果を、国民に「見える化」する必要がある。
・・予算の効果が誰に及んでいるのかを、ホームページで国民にわかりやすくする。
・・政策評価は導入されており、職員の目標による評価も実施されるが、政策と職員の評価が、組織評価につながっていない。民間企業では、企画・管理部門でも目標管理制度が機能している。役所では、多くの組織で年間の業務目標が決められていない。各局各課で年度初めに年間の目標を決め、終了後に達成度を評価すべきである。
原文をお読みください。

省庁間の調整

古なりましたが、4月3日の日経新聞に、「中教審、振興計画で素案」「教育予算増、盛り込めず。財務省が反発、目標設定を断念」が載っていました。この計画は、今後10年の教育政策の針路を示すもので、教育予算の増額を数値目標として盛り込めるかが、議論の焦点だったそうです。計画は閣議決定されるので、各省協議をしたところ、財務省の反発で書き込めなかったとのことです。
審議会委員である片山善博教授は、「省庁間の裏の折衝で決まるなら、審議会はいらない」と、不満を述べられたそうです。
文科省など各省が、予算を増やそうというのは当然のことです。一方、財務省が予算を抑えようとすることも、当然のことです。それぞれ、それが省の使命なのですから。問題は、省の間で対立する案件を、誰がどう調整するかです。今回は、世間に出る前に、官僚同士で話をつけたと思われます。これまでは、それで良かったのかも知れません。しかし、文科省が負ける形で決着すると、審議会員からは不満の声が出るでしょう。何のための審議会か。それなら、審議会を使わない方が、エレガントです。
他方、道路整備計画は、10年間でほぼ道路特定財源を使い切る形で、作られました(もっとも、福田総理が見直す旨を、表明しておられます)。国民からすると、責任ある大臣同士が議論して決めたのなら、それはそれで納得できるでしょう。不満があれば、その政治家と内閣にぶつければいいのです。しかし官僚が、国民から見えないところで調整していると、「なぜ」と疑問がつくと思います。また、理屈や経緯がわかりません。
どのような案件を、官僚同士で決着つけるのか、どのような案件は、大臣が決めるのか。それが問題になります。

IT化

先日の「使い勝手の悪いIT化」の続きです。今度は、民間の方との会話。
民:役所の旅費システムを、作りかえるようですね。
全:そうなんよ。今は役所ごとに違っていて、古いシステムを使っているところ、そもそもIT化していないところなど、バラバラなんだ。それを共通化しようとしたんだけど、失敗している。それを、もう一度見直そうということ。
民:でも、それってムダじゃありません。交通機関って、「駅探」とか「駅スパート」とか、インターネットや携帯電話で、しかも無料で調べることができますよ。最短コースや金額も。
全:そう言われれば、僕も使っている。
民:ね。だから、それを使えば良いんですよ。旅費の申請に、その画面をつけておけば。会計課はそれを基に、旅費を職員の口座に振り込めば良いんです。違う経路を使いたい職員は、別途、理由を書いて申請すればすみますよ。各役所の伝統的手法をIT化しようとするから、複雑になるのです。そうでなくても、民間企業でもやっていることは、どこかのシステムを買ってきたらすむのに。役所の独自性を発揮する必要はありません。
全:その通りだね。前に、地方団体が、地方税など共通業務をそれぞれIT化して、システム開発会社のカモにされたとを書いた。
もう一つ、あの民間議員ペーパーに出てくる企業(年間15万件を一人の職員で)は、IT化の前に、業務の見直し、フローチャートを見直したんだって。簡単に言うと、出張の際の上司のはんこを2つにした。役所だと、下手をすると10個くらい並ぶぜ。その業務の見直しに8割を費やして、IT化は2割だったんだって。
民:そうなんです。IT化って、IT技術者に任せればいいと思っている人が大半ですが、それは半分以下です。どこをIT化するか、人間作業の方を見直すことが大切なんです。
全:そうやね。ところが、官庁には、そのような業務監督者や組織がないのよ。人事課は人事異動と給与計算しかしていない。会計課は支払いしかしていない。「業務見直し課」って、ないんだ。
民:そこが問題ですね。

官僚の事務管理責任

記者さんとの会話
記:4月1日諮問会議の「使い勝手の悪いIT」は、おもしろかったですね。IT化は95%も進んでいるのに、使われていないなんて。笑い話ですよ。
全:うーん、耳が痛いね。
記:各省に聞くと、「進んでいます」と答えるのでしょうね。でも、IT化は進んでいても、IT国家にはなっていない。国民からすると、だまされたようなものです。
全:民間議員だから、言えたのだろうね。でも、マスコミも、気づいていなかったんだろう。
記:私たちも、大本営発表にだまされていたのです。しかし、行政評価局や会計検査院は、何をしていたんでしょうか。こんなこと、民間議員に指摘してもらうことですか。さらに言うと、官僚って何をしているのですか。総理や民間有識者が集まって、経済財政の重要事項を審議するのが諮問会議でしょ。旅費の計算事務ぐらい、官僚たちで簡素化してくださいよ。総理を悩まさずに。
全:ご指摘ごもっとも。反省します。
記:さらに言うと、責任の所在はどこにあるのですか。
全:今日は厳しいね。うーん、考えていなかった。政府のITは、IT本部が進めている。本部長は総理だけど。
記:そこですよ。1日の諮問会議でも、岸田IT担当大臣、増田総務大臣、甘利経産大臣、渡辺行革大臣がペーパーを出して、「これからしっかりやります」と言っています。変ですよね、4人も大臣がいるって。結局誰が責任者なんですか。また、みんな「やります」と言っているけど、「これが失敗でした」と責任と原因を認めた大臣がいないこと。
全:確かに。今日は鋭いね。どうも、内閣を挙げての「本部」というのは、テーマによって向き不向きがあるようや。内閣の重点事項に取り上げて、「全省で取り組むぞ」という意思表示には必要な仕組み。でも、実務作業になると、寄せ集めの部隊より、どこか主管省を決めて、そこで責任を持たせるのが良いね。緊急・臨時の場合は、寄せ集め部隊で良いけど、継続事業になると、一つの省にやらせるべきだろう。そうしたら、責任の所在ははっきりする。また、職員も本気になる。

規制の新設

28日の諮問会議では、規制の新設過程のチェックも議論になっています。現在ある事務事業をスリム化しても、新たに仕事を増やしては、尻抜けになるからです。
新たな規制の新設には、事前の政策評価が義務付けられれています。昨年3月に政策評価法施行令が改正され、項目が追加されたのです。しかし、民間議員ペーパーでは、自己評価であることなどの問題点が指摘されています。
課題の一つは、所管省の評価だけでよいかということです。規制は、いろんな方面に影響を与えます。例えば、過度の安全規制は、経済に悪影響を与えます。伊藤隆敏先生が、3月1日の日経新聞で、空港外資規制見直しについて、次のように述べておられます。
・・市場原理をうまく機能させるためには、規制をすべてなくしてしまえば良いというわけではない。安全保障など国の根幹にかかわる部分を守るために必要な規制もある。その際には、最小限で最も効果を上げられる規制のあり方を、慎重に探る必要がある。
所管省庁だけが縦割りで検討するのではなく、政府の規制改革会議や経済財政諮問会議の場を活用して、省庁横断的に多様な観点から規制の影響を分析・評価して判断すべきだ・・
もう一つは、規制の増殖をどう抑制するかです。
官僚の力は、金・組織と人・権限の3つだと言われます。お金については、財務省主計局が予算査定によって管理しています。組織と人については、総務省行政管理局が組織定員査定で管理しています。権限(許認可・規制)については、統一して管理されていません。もちろん、お金や人と違い、規制は数字で数えることは難しいという性質もあります。
大きな政府と小さな政府が議論になる際、日本は予算と定員では諸外国と比較して、大きな政府ではありません。しかし、この規制の量と範囲、そして国民がどれだけ官に頼るかが、大きな政府イメージをつくるのだと思います。