『日経グローカル』3月5日号が、災害特集を組んでいます。その中に、磯道真・副編集長による「復興予算はどう使われたか」が載っています。
私の発言も少し載っています。
カテゴリー別アーカイブ: 災害復興
行政-災害復興
原発被災地復興の難しさ
3月4日の朝日新聞社会面は、大きく「復興、ふるさとに違和感 拠点整備、住民感覚とズレ」を伝えています。
・・・福島県の復興も着実に進んでいる。ただ、7年という歳月が経ち、国や自治体が目指す「復興」と、本来は主人公であるべき住民との間で、溝が深まりつつある・・・
復興の苦労を伝えていただき、ありがとうございます。ただし、この文章を読むと「違和感」があります。住民が帰還をためらっているのに、自治体や国が復興を急いでいるようにも読めるのです。
住民の間に、復興を急いで欲しい人と、そうでない人、さらにはもう戻らないという人がいるのです。その住民の意向を集約して、自治体が復興計画を作っています。それを、国が支援しています。
もし住民の意向を「尊重する」なら、復興に手をつけない選択肢もあります。町と復興庁による住民意向調査で、「帰還しない」という回答が6割や5割の町もあります。もしこれが「民意」とするなら、復興はしないことになります。しかし、帰還したいという住民が一定程度おられ、その方の要望に応えるために、復興拠点を作ろうとしているのです。
特に、帰還困難区域は当分の間帰還できないので、土地と建物については全損賠償し、営業損害賠償のほかに、精神損害と故郷損失賠償も払われました。「戻ることができない」という前提だったのです。それが、射線量が下がり、一部ですが復興拠点を作り、5年後の帰還を目指しています。
残念ながら、戻らないという方が多くおられる中で、元通りの町に戻ることはありません。そのような条件の下で、どのような町を作るか。住民も町役場も苦労しています。もちろん、国も。
行政と住民の間にズレがあるのではなく、住民と住民の間に溝があるのです。
この記事の末尾近くには、次のような主張も書かれています。
・・・ただ、駆け足で進む復興に追いつけない被災者は少なくない。地域や住民のつながりは引き裂かれ、地元の風景も大きく変わった。国や自治体が進める復興の針路は「ふるさとの再生」といえるものだろうか。原発事故前の暮らしを取り戻すことを願う被災者との溝は、国などが復興を急げば急ぐほど深まっている・・・
ということは、朝日新聞の主張は「復興を急ぐな」ということなのでしょうか。あるは、「復興をするな」という主張でしょうか。どのようにすれば良いのでしょうか。
全国の避難者数
原発事故避難指示区域での被災者生活再建支援
2月7日に「避難指示区域等における被災者の生活再建に向けた関係府省庁会議」を開きました。「趣旨」
避難指示が、順次解除されています。解除された地域では、除染とインフラ復旧がすみ、各種サービスも再開されています。しかし、それだけで住民の生活が戻るわけではありません。仮設住宅暮らしが長期間だっただけに、帰還と生活再開は難しいです。これまでの役所は、モノをつくることや規制は得意です。国民の生活を支援する際も、生活保護や年金、医療保険のような金銭支援は得意です。しかし、個人の生活再建まで踏み込んだ経験は少ないです。
この仕事は、「原子力災害対策本部」が責任を負っていますが、関係各省が様々な支援に協力しています。資料をご覧いただくとして、特に次の資料をご覧ください。
資料6 被災者の生活再建を巡る現状について
資料7 復興庁資料(各種生活支援。各省にない施策は、復興庁が取り組んでいます。)
日本記者クラブ取材
今日は、日本記者クラブ「福島取材団」の取材を受けました。皆さん、現地視察を終えた後、19時からです。熱心さに、頭が下がります。
マスコミの皆さんは、現状と課題はご存じですが、全体を整理してもらうのに良い機会と考え、私の考えをお話ししました。復興政策を進めるため、国民に現状を知ってもらうことは、重要です。また、国費を使っているので、納税者への説明も必要です。
鋭い質問が、たくさん出ました。しかし、現地では、住民の思いも人によって違います。なかなか、一刀両断的な回答はできません。復興を進めることは、単線的ではないのです。