カテゴリー別アーカイブ: 災害復興

行政-災害復興

大熊町の避難指示一部解除

原発事故被災地の大熊町で、避難指示が一部解除されることになりました。
避難指示が出た市町村では、放射線量の低下、除染、生活環境の再開によって、順次避難指示が解除されています。全町避難が続いているのは、原発に最も近い双葉町と大熊町です。そのうち、大熊町の一部で、避難指示が解除されます。

町の中心部は放射線量が高く、今回解除するのは、そこから外れた地域です。町長が、町の中心部は放射線量が低下し復興するには時間がかかると判断され、早い段階で大川原地区での復興を先行することを決断されました。そこで、田んぼであった地域に、町役場や住宅をつくることにしました。役場や住宅も、ほぼ完成しています。来月には、役場も開所します。
現在は、約100キロ離れた、会津若松市に避難しているのです。
8年前を思い出すと、こんなに早く一部解除ができるとは、思いもできませんでした。

もっとも、今回の避難指示解除は、ごく一部地域でしかありません。町の中心部の復興には、まだ時間がかかります。また、意向調査では、住民の6割が「戻らない」と答えています。
お隣の双葉町は、まだ全町避難が続いています。来年の今頃には、JR常磐線が開通します。それに合わせて、双葉駅を再開させ、駅前の道路も開通させる予定です。そして、その周辺を復興させる計画です。
放射線の残る地域では、一気に復興とはいかず、順次の進捗になります。

大震災から引き継ぐもの

今年も3.11の前後は、様々な行事や報道がされました。
ある記者によると「去年より多かったのではないですか」とのこと。指摘されると、そのような気もします。
8年という区切りに、例年と違う要素はないのでしょうが。一つには、平成という時代がまもなく終わることについて、平成を振り返る企画が多いことも、関係しているのかもしれません。

さて、復興状況は紹介したので、少し長い視野で考えてみます。
この大震災の経験から、後世に引き継ぐものは何か。次の3つがあると思います。

1 大震災へ対応する「機能」
阪神・淡路大震災では、政府の初動対応のまずさが、批判されました。その経験から、官邸の危機管理体制、自衛隊をはじめとする緊急出動などが強化されました。東日本大震災では、その訓練が生かされました。
そして今回は、広域の支援、プッシュ型の支援などのほか、借り上げ仮設住宅の活用、全国に避難した人たちへの支援、孤立防止、新しいまちづくり、産業再開支援など、これまでにない暮らしの再建に向けた対応が取られました。NPOや企業による支援もです。
この「機能」を、次の災害に活用するべきです。すでに、熊本地震などでは、活用されています。

2 防災・減災「意識」
国民の防災、減災意識も、重要です。
まずは、逃げる。防潮堤は、すべての津波を防いでくれるわけではありません。
どこに逃げるか、事前考え、訓練しておくこと。数日は生き延びることができるように、生活物資を備蓄しておくことです。
我が身は、自分で守らなければなりません。
この意識を、伝えなければなりません。

3 大震災の「記憶」
災害遺構や、アーカイブ、書物などによって、この災害を語り継いでいかなければなりません。
この地域は、かつて大きな津波災害に遭っています。しかし、時代が経つとともに、忘れ去られていたのです。

災害遺構を残し、この災害を後世に語り継ぐことも重要ですが、私は、上の1と2が重要だと考えています。

復興住宅での介助・共助

日経新聞が、「復興の実像」を連載しています。3月16日は「東北3県、復興住宅の高齢化率42.9% 介助・共助、需要高まる」でした。

住宅が再建されただけでは、暮らしは戻りません。孤立を防ぐために、つながりを取り戻さなければならないのです。
集会所などを作りましたが、それで、つながりが戻ったり、できたりするものではないのです。催し物をしても、参加してもらえないと、効果がありません。

生活支援員の助けを借りて、見回りをしてもらっています。
このような「支援」は、被災地で顕著になりました。しかし、被災地に限らず、多くの地域、特に都会の集合住宅で必要です。

福島県内市町村の復興状況

3月12日の朝日新聞福島県版に、県内被災15市町村長のアンケートが載っていました。15市町村には、津波被災地と原発事故被災地が含まれています。復興完了を100点とした場合の点数が、出ています。

80点が、新地町長、相馬市長、広野町長
70点が、飯舘村長、田村市長、川内村長、
60点が、川俣町長、葛尾村長、楢葉町長
50点が、浪江町長、大熊町長、
30点が、双葉町長、
点数をつけられないが、南相馬市長、富岡町長、いわき市長

復興の進捗状況と、市町村長の思いが表れています。

被災市町村長の復興見通し

3月10日の読売新聞に、被災地42市町村長のアンケートが載っていました。
それによると、岩手、宮城両県では、完了したが2人、1年以内に完了するが4人、2年以内に完了するが15人です。ほとんどの市町村で、あと2年で完了します。3年以内に完了するが2人、それ以上かかるが、宮古市、陸前高田市、石巻市でした。
福島県では、新地町といわき市が2年以内に完了、川内村と広野町が5年以内に完了するでした。その他の原発被災市町村は、5年以上か見通せないでした。