29日夜に官邸で、復興本部会合を開き、「復興の基本方針」を決定しました。この方針は、国の取組の全体像を示すものです。現場での主役は、住民と市町村です。今後市町村が復興計画をつくり、事業を進める際に、どのような事業メニューがあるか、どのように国が支援するか、参考にしてもらいます。
基礎となったのは、復興構想会議(五百旗頭真議長)の提言(6月25日)です。これを、国・県・市町村などが事業として実行するように、「行政用語」に「翻訳」しました。一方で、東日本大震災復基本法を実行する過程です。(本文1基本的考え方)。
この仕事は早さを要求されるので、約1か月で作り上げました。全府省の協力を得てです。なるべく地方団体の意見を反映させるため、文書による調査や、出かけていっての意見交換会も行いました。
「あんこ」の部分は第5章、復興の3つの柱「地域づくり」「暮らしの再生」「経済活動の再生」です。インフラなどの復旧だけでなく、人と暮らしの再建を重視しています。暮らしの安心安全と、それを支える雇用と経済です。いくら道路や住宅が復旧しても、働く場がないと、住民の暮らしと街の賑わいは再生しません。このように明確に書いたのは、新しいことだと思います。このことは、「3実施する施策(イ)」でも、明確にしました。被災地域の復旧・復興と、被災者の暮らしの再生を、並べて書いてあります。
このほかに、防災と、原子力災害からの復興を、別に建ててあります(5(4)大震災の教訓を踏まえた国づくり、6原子力災害からの復興)。
まだ具体的内容が固まっていない項目もありますが、順次固めていきます。各府省は、それぞれの事業について、計画や工程表を公開する予定です(p7第1行目)。
支援の仕組みとして、特区制度や使い勝手の良い交付金も、盛り込みました(p4)。また、あらゆる力を合わせて復興を支援するため、国・県・市町村(官)とともに、民の力もお借りすることを書きました。お金(寄付やファンドなど)・知恵(専門家)・人(ボランティア・NPOなど)です(p4民間の力による復興)。これも、新しい発想だと思います。
事業規模と財源確保についても、書いてあります(p5)。事業規模が(国と地方団体を合わせて)、5年間で19兆円以上と推計されています(原発事故損害を除いてです)。そのために、市町村が安心して事業をできるように、財源を保障することが重要です。「お金がないので事業ができない」では、困ります。
もっとも、この数字は、阪神淡路大震災などを参考に、推計したものです。これから事業が進むと、より確実な数字になります。応急事業は進んだので、ほぼ数字がつかめます。復旧事業も、被害総額からある程度推計できます。しかし、復興事業はどのような事業が行われるか、現時点では不明です。例えば、どのくらいの家族が、集団移転されるかによって、事業費は大きく変わってきます(7月17日の記事)。
今朝の新聞では、財源確保の部分についての与党との調整過程が、大きく取り上げられています。政治的には、政府と与党のあり方、与党での政策決定過程も重要です。しかし、この基本方針の目的・機能は、被災者や被災地に対し、今後国がどのような考え方で、どのようなメニューで支援するかを明らかにすることです。各紙とも、基本方針本文を、かなりの分量で掲載してくれました。これはありがたいことです。しかし、私たちが示した「施策」について、ここが評価できる、ここは足りないという、分析が欲しいです。
政治には、権力(政局)と政策の、2つの要素があります。政治部記者の方には、政局とともに、政策についての報道・分析をお願いします。この基本方針の「宛先」は、永田町でなく被災地です。読者は、国会議員とともに被災者です。
もっとも、昨夜公表したばかりなので、記者さんたちも、時間がありませんでした。これからじっくりと分析してくださるでしょうから、今後の評価を待ちましょう。私たちの欠けている点を補うためにも、期待しています。