カテゴリー別アーカイブ: 災害復興

行政-災害復興

原発被災地での農業再開

6月29日の福島民報が1面トップで、原発被災地で米の作付け面積が大幅に増えることを伝えていました。「今年産米作付け964ヘクタール 12市町村の旧避難区域

・・・東京電力福島第一原発事故で十二市町村に設定された旧避難区域などの2019年産米の作付面積は計約964ヘクタールで、昨年より約176ヘクタール(約22%)増える見通しになった。農地集積が進む楢葉町、農業法人が進出した浪江町では昨年の三倍以上となる。住民の帰還などに伴い生産者数が増えた市町村がある一方、一部では高齢化による担い手不足が顕在化している。各市町村は農家確保や荒廃を防ぐための農地集積に力を入れる・・・

楢葉町では、町が農地の利活用に関する農家の意向調査を実施した上で、農地を貸し出す意向を示した農家と営農希望者を仲介しました。JA福島さくらと連携して集積を進めた結果、営農面積が大きく伸びました。
浪江町では、仙台市に本社がある農業生産法人が大規模な作付けを始めたほか、各地区の農家が営農再開計画に基づき栽培に乗り出した成果、とのことです。
大熊町や双葉町でも営農再開に向けて、町役場が積極的に乗り出しています。
他方で、高齢化による担い手不足が、問題になっています。

震災遺児の支援

6月22日の日経新聞夕刊が「災害遺児ケアを世界に あしなが育英会、米で活動報告」を伝えていました。あしなが育英会は、交通事故遺児支援で有名ですが、震災孤児の支援もしています。

・・・自然災害などで親を亡くした子供のケア施設「レインボーハウス」を運営する「あしなが育英会」(東京)が、初めて米国の学会で活動内容を報告した。阪神大震災を機に始まった取り組みは、東日本大震災の被災地でも根付く。同会は「遺児の成長から得た知見を世界に発信したい」と意気込む・・・
・・・神戸だけでなく東日本大震災後に東北で開設した3カ所のレインボーハウスにも生かした。東北では年間のべ1千人ほどの親子が利用している・・・

遺児の支援と聞くと、育英資金を思い浮かべる人も多いでしょう。それだけでは、子供たちへの支援にならないのです。
震災で親を亡くした子供の、心の傷は大きいです。しかし、それをうまく伝えることができません。寄り添って話を聞き、つらさを小さくしてあげる必要があります。学校にもスクールカウンセラーを配置しているのですが、それだけでは十分な対応ができません。お金だけは解決できない問題です。
行政の手の回らないところを、支援してくださっています。

原子力事故の伝承

6月23日の読売新聞科学欄が「原子力事故 教訓の伝え方は」を詳しく解説していました。東京電力が、福島県富岡町につくった「廃炉資料館」です。

・・・原子力関連の事故が起きた現場近くには、事故に至った経緯などを伝えたり、現場の一部を保存したりする展示施設がある。事故の教訓を風化させず、社会と共有することが目的とされているが、説明が不十分と思われる部分もあり疑問を感じる点は多い。同じ惨事を防ぐためにも事実をしっかりと伝えていくべきだ・・・
・・・事故の記憶を風化させないため、資料館の意義は否定しない。だが、違和感を覚える点も少なくない。
入り口付近の「ごあいさつパネル」には、「事前の備えによって、防ぐべき事故を防ぐことができませんでした」と東電の反省の弁があった。何をどう防ぐべきだったのか・・・
・・・東電の子会社は2008年、「15・7メートルの津波が襲来する」と試算。東電幹部は事故を予見したが対策を怠った、と訴えられている。幹部は「試算は試行的なものに過ぎない」と主張しているが、こうした事故の核心部分を巡る議論が十分に説明されていない・・・

事故を起こした企業がすべてを説明できないなら、国が後世に伝えるべきだという主張もあります。津波被災地では、いくつか震災遺構が残されています。原発事故は、どうなるのでしょうか。

原発被災地の復興

今日は、川内村を視察してきました。村は、阿武隈高地にある盆地の村です。
比較的早く避難指示が解除され、住民が戻りつつあります。発災前に比べ、人口は8割になっています。このうち2割が、新住民です。

新しい人が入ってくれることはうれしいのですが、課題は子育て世代が戻らないことです。避難先で学校に通った子供は、村に戻らずそちらで育つことも多いのです。
また、村内に高校がありません。隣の富岡町の中心部まで車まで30分もあれば行けるので、そちらに通っていました。しかし、富岡町の復興はまだ緒に就いたばかりで、高校も再開していません。すると、中学まで村に戻って学んでも、その先はまた村を出なくてはなりません。
そのほかの商用サービスも含め、富岡町は地域の中心でした。村が単体で復興することは難しいのです。双葉郡全体での復興が必要です。

村が元に戻る指標は、人口だけでなく、若い者、子育て世代の戻りが重要です。村は、工業団地を整備し、企業を誘致して、働く場をつくっています。進出企業も次々決まっています。課題は、働く人に住んでもらうことです。

若い人が減っている、都会に出て戻ってこないという課題は、津波被災地でも、そのほかの日本の多くの過疎地域でも同様です。違いは、原発被災地は、原発事故で政府が住民を避難させたことです。その原発事故は、東電と経産省が引き起こした人災だという点です。だから、政府が責任を果たすために復興に取り組んでいるのです。

雨の中の村は、緑がきれいでした。ヤマボウシの花や栗の木の花の白色が目立ちます。ナツツバキの花もきれいでした。

福島の水は安全

ふくしま木戸川の水」が、霞が関のローソン5店舗で販売されています。
双葉地方水道企業団がつくった、500mlのペットボトルです。水道水への不安払拭と復興のシンボルとするため、つくりました。

阿武隈山系の木戸川を原水とする浄水場の水道水を、詰めたものです。この浄水場の水は、広野町、楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町の住民の飲料水にもなっています。もちろん厳格に、放射性物質検査を行っています。
安全です。このような試みが、福島が安全だという理解者を増やしてくれればうれしいです。