カテゴリー別アーカイブ: 政治の役割

行政-政治の役割

文化財買い上げ予算額が3割に削減

10月8日の日経新聞に「日本の美術品どう守る? 「財産」流出で国も買い上げ」が載っていました。

・・・芸術の秋、各地のミュージアムで貴重な文化財を目にする機会もあるだろう。現在、国宝に指定された美術工芸品は912件、重要文化財(重文)は1万910件。「国民の財産」を守るため所有者にはさまざまな義務が課せられる一方、海外流出や所在不明の危険にもさらされている。
「受け継ぐ人がいない」「経営が悪化した」。国宝・重文等の買い上げ事業を担当する文化庁文化財第一課に近年こうした相談が舞い込む。文化財を所有する個人や法人が高齢化や財政難で管理・保有できなくなっているためだ・・・

詳しくは記事を読んでいただくとして。記事と図に、文化庁の国宝や重要文化財買い上げ予算額が載っています。
2000年に34億円だったものが、2024年には10億円になっています。1割削減とかでなく、7割減です。こんなものも、予算を大幅に削減していたのですね。日本(政府)は、財布も心も貧乏になっています。

人気指導者時代の終わり

10月2日の日経新聞オピニオン欄、ジャナン・ガネシュ氏の「「人気指導者」の終わり 危機知らぬ市民、要求厳しく」は、興味深い指摘でした。
西側先進諸国において、かつては時代を代表する政治指導者がいたのに、昨今は人気のある指導者はまれで、在任期間も短くなっています。

・・・では、筆者が推測する原因は何か。何十年も続く平和と豊かさが、期待値を高める予期せぬ結果をもたらしたということだ。戦争の鮮明な記憶がある人は、西側諸国に今暮らしている人たちのごく一部だ。国が抑制できなかった金融危機を覚えている人は事実上誰もいない。
最後に世の終わりに近づいた新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、2年ほどで過去のものになった。
全面的な大惨事をこのように巧みに阻止できたことは本来、政治家に対する信頼を高めるはずだ。だが、人々は高い水準の秩序と進歩に慣れてしまい要求をさらに強める結果になった。

西側諸国の大部分では、もはや人気の高い政府などというものは存在しないのかもしれない。それでも「もっと懸命に働き、もっと良い統治を」というテクノクラート(専門知識を持った官僚)的な決まり文句は消えない。この世界観の伝道師は、市民の怒りに対する答えとして「有効性」を挙げるブレア元英首相だ。
ブレア氏は筆者が取材したなかで最も政策に精通した指導者だ。国が人工知能(AI)やその他の技術を習得すれば成果が高まるという同氏の見方は正しい。それ自体、国のためにやる価値があるだろう。
ただ、そうすれば有権者が元気になるという考えは精査する必要がある。選挙で何度も勝利を収めたあらゆる指導者と同様、大衆心理の不合理な面を多少なりとも知っているに違いない同氏にしては、これは奇妙なほど合理的な想定だ。

ブレア氏、オーストラリアのハワード元首相、米国のレーガン元大統領、フランスのミッテラン元大統領。一つの時代を象徴する人気の政治家、あるいは威厳ある政治家とさえ呼べるような大物はかつてはよくいた。
ドイツのメルケル前首相が最後だったのかもしれない。そのような政治家がいなくなったのは、これほど大きく異なる国々で政府の上げる成果が同時に悪化し、それに従って有権者が政治家を罰しているからではないはずだ(後から振り返ると、メルケル氏がどれほどうまく統治したのかも疑問だ)。
西側全体に共通する点が一つあるとすれば、それは政治の需要側だ。こうした国の有権者は皆(第2次世界大戦が終結した)1945年以来ずっと、平和で経済発展が悲惨ではない時代に人としての生涯を送ってきた。その輝かしい偉業がもたらした究極の結果として、我々市民を喜ばせるのが難しくなった・・・

衆議院選挙投票

先日、衆議院選挙の期日前投票に行きました。
東京の小選挙区は5つ増え、杉並区は2つに分割されました。私の住んでいるところは8区のままなのですが、近所の道路で線が引かれ、その先は27区になりました。地下鉄の駅の前では、8区の候補者と、27区の候補者が演説をしていて、紛らわしいです。

期日前投票の投票所に行くと案内人がいて、「8区ですか、27区ですか」と聞いてくれます。同じ建物に、2つの投票所があるのです。これは、案内人がいないと、混乱するなあと思いました。
投票を終えて出てくると、NHKの出口調査員がいました。協力しようとすると、「27区をやっているので、8区の方は残念ですが対象外です」とのこと。

景気対策でなく経済成長を促進する対策を

10月4日の日経新聞経済教室、植田健一・東京大学教授の「日本経済再生の針路、価格・企業活動に介入するな」から。

・・・世間では日本経済再生のために、あれもこれもとかまびすしい。だが多くは必要ない。むしろ障害となる。
とりわけ景気浮揚のための財政・金融政策は、世間で考えられているような効果はない。経済学の研究をまとめれば、景気が悪化した時に下支えするという実績は多少ある。だがあくまでその効果は、経済学的に定義される景気の悪化に関してだ。そうした景気の悪化は、世間で考えられているほど起きていない・・・
・・・安倍政権時には、戦後2番目に長い好景気、すなわちトレンドの周りでの上昇局面があった。それでも世間では景気の良さを実感しないという声が多く、それに応えて政府・日銀は長きにわたり財政赤字を続け、金融政策を緩和したままにしてきた。これは間違いと言わざるを得ない。本来、好景気時の財政・金融政策による景気対策は、不景気時とは逆に、財政黒字を出し、金利を上げるものだ。
ただし金融政策については本務は景気対策よりも物価安定だ。景気にかかわらず、2%程度のインフレ目標の達成まで緩和することは理にかなう。だが好景気時の財政赤字はおかしい。

もっとも、世間の人々の景気に対する不満は、経済学の定義する景気ではなく平均の経済成長を実感してのことだろう。実際、日本の高度成長期やバブル期、中国の2000年代以降の経済成長と比べて、安倍政権時の長い好景気でも平均の経済成長は低かった。
だが発展途上国が先進国にキャッチアップする過程では通常、先進国よりも経済成長が高くなることが経済成長の研究で判明している。その意味で、高度成長期の日本や近年の中国と、先進国になった後の過去30年ほどの日本の比較は本来すべきことではない。

そして経済政策は経済学的な知見、つまり理論と実証研究に裏付けられたものでないと、効果が不明で副作用の危険すら伴う。好景気時には景気浮揚策よりも景気抑制策が必要なのだ。
ただし、本当に必要なのは景気循環における景気対策でなく、中長期的な構造的な経済成長を促進する対策だ。財政・金融による景気対策はそれには役立たないことが判明している。効果があるのはより民間活力を引き出す構造改革だ。構造的問題の所在を確認し、市場経済がうまくいくように改善していくほかない・・・

岸田政権の先送り負担増、年3兆円規模

9月28日の朝日新聞に「先送り負担増、年3兆円規模 岸田政権の置き土産、次期政権は」が載っていました。
・・・自民党の新しい総裁に選ばれた石破茂氏は、岸田文雄政権が決めた年3兆円規模の負担増にも向き合うことになる。防衛、少子化対策、脱炭素化の三つの予算を大幅に拡充して事業が始まっているのに、国民に不人気の負担増は始まっていないからだ。
岸田首相は防衛費を5年間で段階的に増やし、2027年度は22年度比で3・7兆円多い8・9兆円にすると決めた。少子化対策でも、28年度までに国と地方の予算を3・6兆円増額する。さらに、脱炭素社会を実現するためとして、32年度までの10年間で20兆円を投じることも決めた。

これらの予算増は22年度以降、順次始まっている。計画通り進めば、三つの政策の予算は、合計で年9兆円程度増える。ただ、岸田政権は、既存の財源をやりくりするだけではまかなえないため、一部を新たな負担として国民に求めることにしていた。
防衛費増に対応するため、法人税、所得税、たばこ税で計年1兆円強の増税を打ち出した。遅くとも26年度までに始める方針だが、与党の反発で実施時期が決まらず、必要な税法の提出の先送りを重ねてきた。少子化対策では、社会保険料の引き上げで年1兆円をまかなう法律を成立させ、26~28年度に段階的に実施する。
脱炭素投資の財源は、28年度から化石燃料賦課金、33年度から有償の排出量取引制度を通じて集める方針だが、具体的な仕組みは未定だ。50年までに投資20兆円の全額を回収する予定で、単純計算で年1兆円弱の負担増になる・・・

10月3日には「増やした、使った、後は任せた 岸田政権、財源確保は3割」載せていました。
・・・岸田文雄政権が3年の幕を閉じた。この間、物価高対策と称して巨額の補正予算の編成を繰り返したうえ、当初予算も大幅に増やし、将来にわたる歳出増を決定的にした。歴代政権は深刻な財政状況に配慮し、一度増やすと翌年度以降に減らすのが困難な当初予算は、高齢化に伴う年金や医療費などの伸びに抑えてきた。その不文律をも破ったことになる。

朝日新聞は、当初予算のうち恒常的に使われる政策の予算(国債費を除いた政策経費)が、前年度に比べてどれだけ増えたかを検証した。元参院予算委員会調査室長の藤井亮二・白鴎大教授(予算制度)の助言を受け、消費増税対策やコロナ対策の予備費など一時的な要因を除いた。
分析結果によると、岸田政権は2023~24年度に計6・2兆円、当初予算の政策経費を増やしていた。防衛と少子化対策の予算を大幅に拡充したためだ。01年度以降でみると、09~10年度(7・0兆円)に続く規模だ。当時、自民党から民主党への政権交代があり、「バラマキ合戦」になった時期だ。
岸田政権は、別枠の特別会計を用い、年平均2兆円のペースで脱炭素化の支援策を増額した。これを含めれば、政策経費の伸びは09~10年度をも上回ると見られる・・・
・・・積極財政を掲げた安倍晋三政権でも、政策経費の伸びは、最大で19~20年度の3・2兆円にとどまる。高等教育無償化などを進めたためだが、消費増税により、支出増を上回る税収増を確保していた。
一方、岸田政権が打ち出した防衛と少子化対策の強化の財源では、将来の増税や社会保険料の引き上げで確保したのは、増やした予算の3割だけ。残りは、特別会計の剰余金など恒久財源とは言えないものばかりだ・・・