カテゴリーアーカイブ:政治の役割

政策の検証

2024年6月26日   岡本全勝

「公的な私文書」の続きです。連載「公的な私文書を生かす」の最終回6月1日の「歴史を糧に、未来へのよりどころに 公文書館、外交史料館が担う重責の記事」に、遠藤乾・東京大学大学院法学政治学研究科教授が意見を書いておられました。

・・・一般に政治家や官僚は、3重の検証をくぐる。かつて英国に3年滞在した際、最も羨ましかったのは、その3重の検証がきちんと作動していたことだ。
第1は、批判ジャーナリズムである。これは、現場から現状と問題点を同時代的に伝える。ときに画一的な報道に陥る米国に比べて、英国の水準は高い。
第2は、半年から数年内に行われる政策検証である。例えばユーゴ紛争の1年後、オックスフォード大学では点検セミナーを開いていた。時の外相、NATO司令官、EUや国連の行政官、NGO活動家などを連続招聘し、問題点を洗い出す。自由闊達な議論は、呼ばれた実務家が嘘をつかず、その発言を研究者が引用しないというルールで可能になっていた。
しんがりを務める第3は、歴史家による検証である。これは最終的な審判といってもよい。英国をはじめ欧米諸国には、政策決定の過程を公文書の形で残し、ほぼ30年の時を経て公開する仕組みが整っている。日本でも、福田康夫元首相が主導し、公文書管理法ができた。

戦後の日本では、ながらく思想(史)系の知識人が時代を括り意味づけてきた。欧州では、歴史家の比重が高い。公文書がひも解かれ、そこから出てくる歴史解釈でようやく、政治家や行政官の評価が定まってゆく。だから歴史論争はいつも激しく戦われ、自然と実務家は歴史の審判を意識する。
日本の政治家や官僚は、この歴史の審判をこそ、意識すべきだ。その場限りでなく、後世に照らし恥ずかしくない行政や外交を展開しているか。その方向に向かうために公文書関連の法律ができた。しかし、法律になることと、それがきちんと整備され、さらにそれを後づけではあれ気にする文化が根付くことのあいだには距離がある。今後、かなりの年月と各方面の努力を要するだろう・・・

この3つの検証は、わかりやすいです。政治家も幹部官僚も、これを意識しながら判断をする必要があります。日本でも、第2の検証がでできませんかね。
私は、「閻魔様の前で申し開きができるか」を行動の指針としていました。

公的な私文書

2024年6月25日   岡本全勝

朝日新聞夕刊連載「現場へ」、6月17日から21日は、藤田直央・編集委員による「「公的な私文書」を生かす」でした。
・・・遺品を片づけていると、段ボール箱に文書がどっさり。とりわけ首相経験者や側近の遺族には悩ましい問題だ。戦後を見つめ直す上で第一級の史料があるかもしれないが、どう扱えばいいのか。
政府の文書ではない、そんな文書を私は「公的な私文書」と呼び、中身を報じてきた・・・

詳しくは連載記事を読んでいただくとして。政治家の日記などは、誰と会っていたのか、どのような話をしていたのか、どのような情報源からどのような情報を得ていたか、どのように判断したのかなど、政治と行政に関わる記録が残っているでしょう。それは、研究者にとっては重要な資料になります。
ところが残った日記や残した資料は、そのままでは扱いに困ります。私生活に関わることなど公務に関係ないことも書かれているでしょう。そして思い違いや、自分に都合のよいことだけが書かれていることもあるでしょう。そのままでは、公文書としては扱えないのです。「公的な私文書」なのか「私的な公文書」なのでしょうか。
保管するとしても、国立公文書館も困るでしょうね。公開するとしても、どのようにするのか。課題はたくさんあるようです。

かつてコメントライナーに、公文書と行政文書との違いを、「「行政文書」は正確か」で書きました。でも、この2つは、行政機関が扱った文書です。個人の私的な記録とは異なります。それをも勘案すると、大まかには次のように分類できるのではないでしょうか。そして、それぞれに扱いを変える必要があります。
「かつての公文書」=役所において決裁を受けて正確性が担保されている文書
「行政文書」=行政関係の文書であるが、中には職員のメモなどもあり、すべてが正確とは言えない
「公的な私文書」=行政に関することも含まれているが、個人が保管している文書。私生活に関すことなど、行政に関係しない内容や不確かな内容も含まれている。どの範囲内を対象とするかも不明。

政府が打ち出すたくさんの経済再生構想

2024年6月24日   岡本全勝

6月17日の日経新聞経済教室は、オックスフォード大学のヒュー・ウィッタカー教授の「日本経済復活の条件 ひしめく構想、相互補完カギ」でした。

・・・Society(ソサエティー)5.0、デジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーントランスフォーメーション(GX)から「サステイナブルな資本主義」「新しい資本主義」「デジタル田園都市国家構想」に至るまで、2015年以降、日本経済の再構築を目指す複数のイニシアチブ(構想)が散見される。
しかし私たちはそれらをどのように理解すればいいのか。単に日本が「失われた30年」から脱出しようとする叫びなのか。それとも日本を新たな道に導き、新しい何かを生み出し始めているのか。さらには2030年代という目標地点までに、首尾一貫した新しい経済モデルを生み出す可能性が日本にあるのだろうか・・・

こんなにいろいろ打ち出していたのですね。私も聞いたことがあるような・・・。国民、経済界の人たちは、どの程度理解しているのでしょうか。

与党から首相への提言の数々

2024年6月23日   岡本全勝

古くなってすみません。このホームページに載せなければと、気になる新聞記事を切り抜いてあるのですが。少し載せるのをサボると、日にちが経つのは早いのです。

新聞には、首相の行動記録が載ります。6月4日の朝日新聞に前日3日の行動が載っていました。その抜粋です。

11時55分から同1時7分まで、同党の大野敬太郎科学技術・イノベーション戦略調査会長から決議文、平将明同調査会フュージョンエネルギープロジェクトチーム座長から提言書受け取り。同8分から同23分まで、甘利明同党経済安全保障推進本部長から提言書受け取り。同24分から同34分まで、同党の中小企業・小規模事業者政策調査会の伊藤達也会長、競争政策調査会の山際大志郎会長から提言書受け取り。同35分から同43分まで、伊藤同党中小企業・小規模事業者政策調査会長から提言書受け取り。同45分から同2時まで、片山さつき同党金融調査会長から提言書受け取り。同1分から同15分まで、松村祥史国家公安委員長。同20分から同30分まで、古屋圭司同党社会機能移転分散型国づくり推進本部長から提言書受け取り。同35分から同45分まで、平井卓也同党著名人にせ広告・なりすまし等問題対策ワーキングチーム座長から提言書受け取り。

翌4日にも、いくつか提言を受け取っています。
私も復興庁の時に、大島理森・自民党復興加速化本部長と井上義久・公明党復興加速化本部長が出してくださる与党提言に関与しましたが。こんなにたくさん提言をもらうと、どのように相互調整、総合調整するのでしょうか。今の日本政治に欠けているものの一つが、総合調整、政策の優先順位付けです。

首相指示の失敗事例?その1の2

2024年6月12日   岡本全勝

首相指示の失敗事例?その1」の続きです。

朝日新聞によると、満額減税を受けられる人は約6300万人、納税額が少なく減税とともに調整給付を受ける人が約3200万人です。そもそも住民税や所得税を納めていない世帯が、約1740万世帯あります。「定額減税「穴埋め」自治体実務ずしり 減税しきれない人 3200万人に調整給付

一番の問題は、給与支払担当者の事務負担です。減税の計算をしなければなりません。給与計算は、ほとんどの事業所でコンピュータを使っています。一度きりの減税のために、計算ソフトを入れなければなりません。そして1度で減税せず、これから毎月に分けて減税します。それを、一人ずつ確認する作業が必要になるでしょう。
次に、減税しきれない(納税額が多くない人)と納税額がない人は、その結果をもらって、市町村役場が差額を給付します。
いかに事務負担をかけるかが、分かってもらえると思います。これらの作業をする人に聞けば、恨みの声がでるでしょう。

さらに記事では、次のようなことも指摘されています。
・・・自治体を苦しめているのが、対象者を絞り込み、給付額を算定する作業だ。さらに政府が給付のスピードを重視したことも、混乱に拍車をかける。今年の所得税額が確定するのを待たずに、穴埋め額を推計して給付するルールにしているからだ。夏以降に給付を始めるが、それでも足りなかった場合は、来年、納めた税額が確定した後に対象者を特定し、追加で給付することになる。
ある自治体の担当者は言う。「算定の前提になる数字が推計値なので、『うちの額は本当にこれで合っているのか』と問い合わせがあっても『わかりません』としか答えられない」・・・

岸田首相がこの減税を指示したとのことですが、自民党、財務省、総務省の関係者が、この事情を首相に説明できなかったのでしょうか。あるいは、説明しても聞いてもらえなかったのでしょうか。
私なら首相に、給付金の方が国民に実感してもらえること、事務作業が格段に軽くなることを説明します。そして、デジタル庁や総務省と相談して、マイナンバーに銀行口座を紐付けた人には直ちに払い込み、紐付けていない人には遅れて支払う仕組みにします。「早く4万円欲しかったら、マイナンバーに銀行口座を紐付けてください」と広報します。「首相に直言 秘書官の役割