カテゴリーアーカイブ:政治の役割

政治の役割13

2008年11月4日   岡本全勝

10日の東京新聞「時代を読む」は、佐々木毅教授の「小泉政権を見送る」でした。
「何よりも、この政権は経済の構造的停滞によって自信を喪失し、すっかり内向きになった日本社会の生み出した政権であった・・・政党政治をほとんど一人で演じ、首相のリーダーシップに対する国民の飢餓感をいやし、それへの手応え感を与えるのにかなりの程度成功した政権であったといえよう。ここに首相と世論との太いパイプの源泉があったと考えられる」
「この政権が最もその精彩を放ったのは、『政府は何をしないか(すべきでないか)』について語るときであった。それは結果として民間部門の構造改革や活性化につながったが、『政府は何をするのか(すべきか)』については青写真も乏しかったし、アイデアも乏しかった」
「三位一体改革が課題を残したと言わざるを得ないのも、結局は中央政府の役割のツメができなかったからであろう。公務員制度改革という政権の最も直接的な所掌課題も、ようやく政権末期になって登場したのであった。かくして、政府はかつてなかったほど極めてあいまいな存在と化したままで、次の政権に引き渡されることになったのである」2006年(9月11日)

(総理の条件)
自民党総裁選に関して、記者さん何人かとの会話です。
(公約の優先順位)
記:総裁・総理は、その人の政策で選ぶんですよね。
全:そうだろう。だから、それぞれ公約を発表しているじゃない。良い傾向だと思うよ。
記:でも、ある新聞が書いたように、項目の羅列だったり、すべてに良いことを言ってます。すべての項目に取り組むというのは、どれもできないということですよ。
全:それはわかるね。総理だって、時間と力は限られている。まず、どれをしたいか。また、時間をかけても、これだけはしたいとかね。小泉さんは、その点はっきりしていたね。
記::そうです。その代わり、小泉さんは他のことを切り捨てました。何かをするということは、何かを切り捨てることです。八方美人は、何もしないという結果になります。
(これまでの言動)
記:もう一つは、これまでの言動との整合性です。
全:お三方とも、問題ないじゃない。それぞれ、信念に基づいて発言しておられるよ。
記:違います。公約は何とでも言えます。しかしこの3人は、新人議員ではありません。小泉政権の中枢におられました。白地ではありません。これまでの実績があるのです。例えば地方分権です。
全:3人とも、分権に積極的なことをおっしゃっている。どなたがなっても進むと、僕は期待してるよ。
記:思い出してください。三位一体改革の時に、3人とも当事者でした。一人は総務大臣として推進派、もう一人は財務大臣で税源移譲に反対、もう一人は官房長官で審判役でした。
全:これからに期待しよう。
(実行力の実績)
記:もう一つは、実行力です。
全:新聞の採点では、それぞれ実行力はあると採点されているじゃない。
記:いろんな政治決定の場で、どのようなリーダーシップを発揮したかです。例えば経済財政諮問会議の場で、どれだけ発言したかです。ただし、官僚の用意したメモを読むのは零点、どれだけ自分の言葉でしゃべったかです。そして議論をリードしたかです。
全:諮問会議は議事録が公開されているから、点を付けたらいいじゃない。
記:そう思っているんですがね。
全:3人とも実行力があると評価されているし、小泉さんを見た国民は、目が肥えているよ。日本の首相像は、間違いなく変わったと思うけどね。
(人を使う)
記:総理や政治主導者には、人を使うという能力も必要です。
全:それは当然。かつて、アメリカのクリントン大統領が、凡庸な大統領と批判されたときに、「そうかもしれないが、私には有能な人を使う能力がある」と反論したことがあった。私はそれを聞いてなるほどね、と思ったよ。
記:そうです。いかに有能な人でも、すべてのことはできません。それぞれの道に優れた人をうまく使うかどうかです。
全:人を使うためには、人の話を聞くことも、重要だよ。
記:ええ、しかし人の話を聞くだけでは、だめなんです。八方美人にならないように、話を聞くけど採用するかどうかは、別なのです。その際には、側近も重要です。政策の優先順位、時間配分の優先順位を、進言できる人です。それは、最初に述べた「何を切り捨てるか」を判断できる人です。そのような側近を持っているかどうかも、重要です。もちろん、最後の決断は、その政治家がするのですが。(9月15日、16日)

9月25日の日経新聞経済教室「新政権への視点」は、田中直毅さんの「政治再設計で成長確かに」でした。
「小泉内閣の5年半で、『回顧の次元』から『期待の次元』へと政策目標は切り替わり、自己統治の理念に発する財政規律の確立が緒についた。安倍政権では費用分担の仕組み作りという行政色の強い政治空間から離脱し、政治関与をリスク制御に絞り込むのではないか」(9月25日)

(小泉改革の評価と継承)
このHPでは、小泉改革を日本の政治の改革として、取り上げてきました。その点から、次の政権が小泉改革をどのように評価し、どのように継承するのか関心を持っています。もちろんどなたがなられても、改革は進められるでしょう。しかし、そのまま発展させるのか、一部修正するのかを知りたいのです。そのためには、小泉改革をどう位置づけ、どう評価するかが必要なのです。今日の安倍総理の所信表明演説では、改革を進めるとの記述はありますが、小泉改革の文字はないようです。(9月29日)

19日の朝日新聞「保守とは何か」で、原彬久教授は次のように述べておられました。戦後保守の特徴は、米国による占領下で生まれ左傾化されたこと、米ソ冷戦構造の下で自民党イコール親米・社会党イコール親中ソという構図になったこと、政権交代が保守と革新の間で行われず社会主義的な政策を採り入れたこと。外交・憲法面では吉田政治が保守本流だったが、経済政策面では岸政治がむしろ主流だった。
保守は、人間への懐疑がその根底にある。その意味で現実主義と重なる。したがって現状肯定に流れやすい。しかし面白いのは、時に保守が大きなパラダイム転換を成し遂げるという逆説だ。ニクソンの米中和解、サッチャーの英国病克服、岸氏の安保改定、佐藤栄作の沖縄返還、田中角栄の日中国交樹立・・保守は行き詰まった現実を前に、その現実に内蔵された矛盾のエネルギーをむしろ逆手にとって現状打破を果たそうとする。(10月21日)

27日の毎日新聞「世界の目」は、クラロス世界経済フォーラム主任エコノミストの「競争力向上へ8つの教訓」でした。自国の競争力を上げ、貧困減少や国民所得向上につながる資産を生み出すにはどうすれば良いか。
1 分不相応はいけない。税収不足、公共支出の統制不能、あるいはその双方による巨額の財政赤字は、競争力上昇のカギとなる教育、公衆衛生、社会基盤への支出を抑制する。
2 低税率は奇跡の治療薬ではない。北欧のように最も競争力の高い国々は、多額の歳入を十分効果的に運用している。
3 汚職は経済成長を止める。透明性が高く、公共の利益のために働き、支持に値すると認知された政府だけが、国民に犠牲を求めることができる。
4 司法の独立は貴重である。
5 官僚主義の弊害。
6 教育は大黒柱。
7 成長の新しいエンジンは、インターネットと携帯電話。
8 女性に力を。競争力とは、人的資源を含む資源の効率的利用のことだ。
発展途上国だけでなく、日本にも当てはまりますね。(10月27日)

(保守主義)
24日の読売新聞、佐々木毅教授のインタビューから。
「日本の場合、戦後は長く保守対革新の構図だったから、欧米の流れとはまたズレがある。自民党が、諸外国であれば社民主義政党がやった利益配分などを、機能的に代行した・・自民党政権の背後には、経済成長とナショナルプライド(国民の誇り)の合致があった。その合致がバブル経済の崩壊でズタズタに切り裂かれて、ナショナルプライドをどこに定めていいか分からなくなった。他国の保守主義とは異なり、いろいろな要素を積み込んだ自民党保守主義は終わった。今、自民党はどこに向かえばいいか分からなくなっている。ナショナルプライド探しをめぐる議論がいろいろ出てくれば、次の保守、非保守のステップにつながるかもしれない」

軍事侵攻の経済的影響

2008年9月15日   岡本全勝
ロシアがグルジアに軍事侵攻して以来、経済が大きな打撃を受けていることが、ニュースになっています。15日の読売新聞は、国外投資家がロシアから資金を引き揚げ、その額は約3兆円になると伝えています。ロシアは1998年に金融危機に陥りましたが、その後、エネルギーの高騰で好調な経済を維持してきました。しかし、今回の事件で、株は半分近くになり、通貨は10%近く下落しました。
軍事力を使うと、どのような影響があるかの例だと思います。(2008年9月15日)
(指導者の育成)
14日の日経新聞「風見鶏」に秋田浩之編集委員が、「短すぎる助走期間」として、次のような主張を書いておられます。
中国では、胡錦涛国家主席の後継者として、習近平副主席(55)と李克強副主席(53)とを競わせている。民主的ではないが、2012年の共産党大会まで、指導者の選抜試験が続く。アメリカでは、大統領予備選挙などを通じて候補者が鍛えられる。
ひるがえって、日本はどうか。公約なら、有能なブレーンを駆使し、体裁を整えられるかも知れない。だが、総裁候補がどこまで首相に求められている胆力を備えているのかは、約2週間の総裁選挙ではわかるものではない・・

政治の役割12

2008年8月22日   岡本全勝

9日の朝日新聞連載「小泉時代とこれから・中」は、竹森俊平教授の経済でした。
景気回復は構造改革の成果だと政府は強調します、との問に「不良債権問題を片付け、『失われた10年』に決着を付けたのが最大の貢献だ・・経済財政諮問会議に情報を集中し、経済政策で指導力をはっきり示したのは小泉首相の功績だ」。
構造改革の評価については、「経済を停滞から脱却させたが、構想力、長期的なビジョンが欠けていた。例えば、国民が安心できる徹底した社会保障制度の改革ができなかった。もう一つはアジアの経済外交だ。経済連携協定(EPA)を中国やインドに広げるなど経済ネットワークを構築できなかった。従来の政治手法や制度を壊すことに存在意義があったから、その意味では過渡期の人と言える」
「格差を是正する所得再分配政策をどうするのかは世界的な問題だ。どの国にも解決策はなく、思考停止状態・・むしろ、小泉政権は再分配政策と決別する方向に動いた・・政府は財政赤字で余裕がないと、再分配を事実上放棄した」
「いまや国内総生産の8割はサービスセクターで生産され、特に金融・情報など都市部で作るサービスが重要だ。他方、製造業はグローバルに展開され、次々アウトソースされる。政府は官主導でなく資本の論理や力を借りて経済の転換、調整をする方向に変えたが、小泉首相でなくてもそうなっただろう」
「首相の指導力が発揮できる政策決定プロセスが意識されてきた。しかし、状況が変われば元に戻る可能性もある」

日経新聞は8日から連載「日本を磨く、小さい賢い政府を」を始めました。第1回は行天豊夫氏でした。
「民にできない仕事は極端にいえばない。国防を民に任せるケースさえある。国民が料金を払い民に任せるか、税金を払い官にやらせるか。どちらが費用対効果に優れているかで、官と民の分担を決めればいい。官の役割は『国民が必要とすることだが、民にはできないこと』に尽きる。今の日本で必要なのは経済、外交、軍事、理念、文化、技術(知識水準)の各分野のバランスを取って、国の競争力を高めることだろう」
「官尊民卑は国民にとって幸せではない。明治以来、あるいは戦後の官僚主導の国家運営に、現状では大きなプラス点は付けられない。政は国民に働きかけ、指導力を発揮する。官は戦略を効率的に実行し、国益を実現するのが望ましい」(2006年8月9日)

10日の日経新聞「小さく賢い政府を」第2回は、佐々木毅教授の「イフ重ね政策に深み」でした。
役所中心の従来型の政策決定でこれからもやっていけますか、という問には「高度成長期のように少々無駄をしても大丈夫という時代ではなくなった。今までは部分最適の積み上げみたいな政策で、体力に任せてなんとかやってこれた。今は目標のはっきりした政策を効果的に出すことが必要になっている。これまでの調整型の決定の仕組みを相当変えないといけなくなる」
「政策を作るには、いろいろなイフ(IF)、もしもを重ねながら、綿密に詰める作業をしないといけない。それを政府も与党もしているように思えないのが、極めて深刻なことだと思う」
「本当の政策論議は思い切った議論をしなければならないのに、外に出すことを前提にすると議論に深みがなくなる。一つの発言の背後に百、二百の発言があるべきだろう。いざという時のいろいろなことを考えているように見えない。だから『想定外』の領域が大きくなる」
「大目標を作ろうとしてもいつの間にか限りなく些末になる。細分化してあちこちに投げ、役所が料理して出しているのが実態だ」

10日の朝日新聞「小泉時代とこれから・下」は、藤原帰一教授の外交・安保でした。
アジアで中国の求心力が飛躍的に高まった間、日本は何をしていたのでしょう、という問に、「空白だったと思う。各国が前より豊かになり、日本の経済協力が行き詰まった。経済援助に頼るアジア外交に代わるものを作らなければならなかったのに、政策の空白が続いた」
「ASEAN諸国との連携強化も必要。日本は債権国として各国の経済に直接的な影響力を持っている。直接投資の規制緩和、日本の労働市場の開放などで主導権を取ることで、ASEANを引き戻せる。ASEANは中国を恐れてもいる。ASEANとのパイプを利用し、中国を牽制する力に使うべきだ」(8月10日)

11日の日経新聞「小さく賢い政府を」第3回は、北城かく太郎さんの「挑戦の機会いつでも」でした。
「ここに至るまでに小泉政権が果たした役割はやはり大きい。財政出動に期待しないでくれ、民自身の努力で立ち直ってくれと発信し続け、民間に覚悟を決めさせて経営改革の背中を押した」
「創業支援では民間がお金を出すのを後押しする税制をつくってほしい・・・国や自治体からもらう税金で出資してもらうのでは、創業者は痛みを感じにくい。一般の個人からの出資ならその人の顔が思い浮かぶので懸命に努力する・・」(8月11日)

12日の第4回は、田中直毅さんの「優先順位国民に示せ」でした。
「先進国の政府の機能に大きな変化が生じている。米国も一国の経済情勢だけで金融政策を決められない。グリーンスパン前FRB議長の市場との対話は、ウォール街との対話ではなく、国際社会の重要な意思決定者に米金融政策の目標や優先順位について伝えることを意識していた・・・日本もグローバル経済のなかで、財政規律や金融秩序でこれだけは満たさなければいけないというものが出てきた」
「政治家も磨かれたが、企業も国民も磨かれている。政府に依存してはいけない、要求してばかりいるといずれ我が身に跳ね返る、という因果関係がわかった・・霞ヶ関が作った案に永田町が粉をふりかけるだけの昔ながらのメニューは、完全に排除されるだろう」
「政府のぜい肉がとれたと国民が認定して初めて、どういう形で政府の規模を決めるのか、どこまでを民間の自助努力に求めるのかの議論ができる」(8月12日)

17日の日経新聞経済教室「回顧・日本経済」は、加藤寛教授の「小泉改革、背後に公共選択。政府の失敗を是正」でした。(8月17日)

先日書いた「30年後の日本」について、ある人との会話です。
「30年後を考える前に、今のおれたちは、何を次の世代に残しているのかなあ」
「まずは、巨額の借金。これはひどい贈り物です。プラス面では、世界有数の工業力、社会資本ですかね」
「うまくいっていないアジアとの関係も、引き継ぐぞ」
「でも、それは僕らの前の世代もでしょ。親父たちの世代から引き継いだ負の遺産です」
「そうだな、お金は出すが人は出さないという評価は、前の世代がつくった。ただし、経済大国、工業国家という実績と評判もつくってくれた」
「そうですね。メイド・イン・ジャパンを、安物でないブランドにしたのは親父たちの世代です。それで言うと、その世代は、二度と戦争をしないといって、実際半世紀の間戦争をしなかったんですがね。アジアからの評価はそう見てくれませんね。そちらの方は、努力の割には、ブランドを作り上げるのに成功しなかったと言うことですかね」
「半世紀の間、戦争をしなかったけど、それは努力の成果ではないと見られているんだな」
「もう一つ前、じいさんたちの世代は、何を残してくれたのですかね」
「焼け跡と孤児、食うや食わずの生活。アジアの人たちを巻き込んだ悲惨な戦争、日本はひどい国だという評価だな」
「どこまで考えて、やっていたのですかね」
「そこが問題だね。でも、次の世代から、おれたちもどう言われるか」(8月18日)

21日の日経新聞経済教室は、青木昌彦教授の「資源・環境対応で世界主導」「技術・価値観を革新、市場・民主制と同時進化へ」でした。
「ここ10年ほどの間、日本の政治、経済、社会には、個々には小さくとも多様な変化が生じ、その累積効果は社会システムの質的変化を予感させうるほどのものとなった。
従来のシステムの下で人々は、生涯帰属する組織、それを業界・職業ごとに包括する団体、関連する監督官庁と族議員とタテに連なる関係に包み込まれて、自分の社会的位置や生活水準の生涯展望にある程度安定した予想を持ちえたのだった。
今、「改革」の政治的宴がおわり、にわかに格差社会の懸念が一部の政治家、マスコミ、学者などから声高に発せられるようになったのも、そういう安定化の仕組みの揺らぎを反映するのだろう」
「従来のシステムが感覚的に保障した安定性はそれなりに好ましいものであったが、それはまた行き過ぎると個人のモチベーションを弱め、外部環境変化に対するシステムとしての適応力を弱める」
「むしろ移りゆく環境に適応する個々人のチャレンジを側面から助け、組織の設計やガバナンスのありかたに関し多様な組織のあいだの自律的な競争を促し、行政府はそうした競争の当事者から一歩退いた公正なレフェリーの地位にとどまるという仕組みが、増大する複雑性と不確定性によって特徴づけられるこれからの社会の一つの行き方だろう」
「そして、政党は、将来世代と現在世代の間の利益裁定という意味合いを持つ財政の再建、中央と地方の間の規律ある関係の構築、競争のルールづくりとセーフティネットのデザインなど、国のかたちづくりのプログラムをめぐって、選挙民の支持獲得を争う役割に徹するべきだろう」。

22日の経済教室は、吉川洋教授の「人間力で不断の価値創造」でした。「新しい付加価値はどこから生まれるのだろうか。情報力といい技術といい結局のところそれを生み出すのは人間である。こうした「人間力」を経済学では「人的資本」と呼んでいる。歴史をふり返っても、人口規模の大きさが国際競争力の源泉になったことはない。重要なのは人の数ではなく、国民一人ひとりの力、すなわち「人間力」なのだ」

政治とは過程

2008年8月8日   岡本全勝
(政治とは過程)
6日の読売新聞「地球を読む」は、佐々木毅教授の「日本外交の課題、対北戦略練り直しを」でした。
「北朝鮮のミサイル発射をめぐる目まぐるしい安保理での外交交渉は、外交についての素晴らしい教材を日本国民に提供してくれた。特に、日本政府の主張がどのような形で取引され、変形され、一定の結果につながるかを如実に実感させられたことに加え、日本だけでなく、どの国の外交力にも可能性と同時に限界があることがはっきりした」
「アメリカにも中国にもできないことがある。その中で各国政府がどのような位置取りを選択するか、目まぐるしい役割交代をどうこなすかに「可能性の術」としての外交の要諦があるが、日本外交はほとんど一つの役割しか果たせなかったこともまた事実である」
「当初の日米案が中国とロシアの反対によって修正を余儀なくされたにせよ、安保理全会一致の北朝鮮非難決議が成立したことの意味は大きい。今や中露も、そして韓国も従来以上に北朝鮮政策の見直しを迫られざるを得なくなった・・・」
(日本の外交デビュー)
「日本の外交論議は長い間憲法解釈論議と混線し、外交は外務官僚を中心とした極めて一部の人間だけが関与してきた(政治家の関心の低い)政策領域であった。ところが小泉政権の下で事態は変わった。「小さな政府」の名の下に利益配分型政治が抵抗勢力と名指しされ、昔日の存在感を失うとともに、外交問題が政治家にとって新たなリソースとして浮上してきたからである・・・」(8月7日)
8日から朝日新聞は、連載「小泉時代とこれから」を始めました。「5年間の小泉政治は日本をどう変え、次の政権にどんな課題を残したのか」。第1回目は、佐々木毅教授の政治と政党です。
「結局、再生したのは民間セクター、今までは民間が困っていたらすぐに手を差し伸べて助けた。それをしないことで、民間セクターの体質改善、強化を促した。これに対し、政府のあり方については規模を小さくする議論はあるが、どう変えるかがない。とりあえず小さくするというだけ。郵政や道路公団の改革には手を付けても、政府本体の構造改革は行われていない」
「言い換えれば、政府の競争力が上がっていない、ということだ。そういう意識が政権にあるのかも疑わしい。ただ小さくするというだけで、競争力に関するアイデアは見あたらない」
「グローバリズム化が進むのに任せるだけでは、国民の支持は得られない。グローバル化を進めるだけでいいのなら、政府は何のために存在するんだ、という問題が出てくる。政府としては『存在する意味があるんだ』ということをいわなきゃいけなくなる」
「5年間で政治家の質は向上したのか、とうことがある。問題は極めて深刻で、政党の責任は重い。新しい人たちが登場することは結構だが、どこでどういうトレーニングを受け、どういう基準で選ばれて議員や閣僚などになるのか、甚だ心もとない状態だ」(8月8日)

 

気になった記事から

2008年8月6日   岡本全勝
7月12日の読売新聞「論壇」、菅野覚明教授の「若者に国を託そう」。
「今日、あらためて国家やナショナリズムが問われているのには、たぶんそれなりのわけがあるのだろう。世間の噂を信ずるならば、戦後日本の体制が根本的につかえなくなってきたからということらしい。だが、もしそうであるとするなら・・国家論の本当の主体は、未だ明確な自己表現を持っていない、20代、30代の人たちであるはずなのだ。明治以来、転換期の国家像に展望を拓いてきたのは、功罪はともかく、幕末の志士にせよ・・いずれも長老たちの理解を絶した若い力であった。たぶん同様に、もし今という時代が本当に転換期であるなら、次の時代を切り拓く力は、今どきの若者のわけのわからなさの内にこそ秘められているであろう」
「次の世代への信頼なしに、国家論など成り立ちようがないのである」
8月6日日経新聞別刷り「あっと、データ」、世界価値観調査2000から。戦争が起きたら国のために戦うかという問に「はい」と答えたのは、ベトナム94.4%、中国89.9%、韓国74.4%、ロシア63.8%、アメリカ63.3%、ドイツ33.3%、日本15.6%。
8月2日の朝日新聞夕刊「文化」、「厳しい若者の対日意識。中国で80年以降生まれ調査」。日本人の一般的なイメージは、勤勉75%、有能69%、強い62%。人間性が良い10%、悪い44%。信頼できるが15%、信頼しがたい53%。日本、米国、韓国、フランスなどの企業に同じ条件で就職が決まった時に、日本企業を選ぶ人は6%、全く思わないが58%、あまり思わないが18%。