「官僚論」カテゴリーアーカイブ

行政-官僚論

官僚制

19日の日本経済新聞が「再編5年目・診断霞が関」で農水省を取り上げていました。「農水省消費・安全局消費・安全政策課長に着任した山田友紀子は、ちょっとしたカルチャーショックを受けた。山田は、国連食糧農業機関の専門官などを務めた食品安全の研究者。国際的には食品安全行政は専門家が担うのが当然なのに、日本にはほとんどいないことが分かったのだ」
「専門性」も、現在の官僚制の問題点です。専門家というと技官(技術系公務員)を思い浮かべますが、それだけではありません。福祉の専門家、教育の専門家、金融の専門家が必要でしょう。しかし現在ではそれらの多くは、法学部か経済学部を卒業した人が、職場で鍛えられて「専門家」になります。もちろん、最先端・高度な技術は外部の専門家を活用することで、官僚はそれを理解できる知識があればいいとも言えます。
しかし、多くの分野で法学官僚が中心を占めていることは、疑問です。

公務員改革

1日のこのページで、「指定管理者制度の公募は公務員の市場化テストである。職員が職場を失うことがある」と書きました。それに関連して、最近の公務員制度をめぐる話題から、いくつかを紹介します。
4月25日の朝日新聞他は、「鳥取県が2年連続で勤務成績が低かった職員のうち5人に自主退職を勧め、3人が退職した」と伝えていました。民間の人からは、「今までは何だったの」と疑問や質問が出るでしょう。かつて、授業を任せられない教員がたくさんいることが、ニュースになったことがあります。
24日の毎日新聞「発言席」では、松井孝治参議院議員が「官僚にも市場化テストを」を主張しておられました。19日には日本経済団体連合会が「さらなる行政改革の推進に向けて-国家公務員制度改革を中心に-」を発表しました。
渕上俊則(前)総務省人事・恩給局参事官が「公務員制度改革の動向を読む」を月刊『地方財務』(ぎょうせい)に連載中です。
多くの人が公務員改革を主張されます。しかし、議論がいっこうに進まないのは、関係者の間に共通理解がないからだと思います。それは、
①まず制度の現状が、十分明らかにされていないこと。制度と運用を解説した本ってないんです。公務員法の解説はありますが、私の言っているのは公務員制度の解説です。1種・2種・3種の職員が、職種別に何人採用され、どのように昇進し、どのように退職しているのか。配置転換や交流はどうなっているのかなどなど。
②百家争鳴だけど、それぞれ断片的で全体像を述べたものがないこと。
③公務員制度と運用の専門家がいないこと。これは霞が関にも学者にもいません。各省の人事課は、人事異動をしているだけです。給与の専門家はいますが。人事院は運用を行っていません。
④よって、議論が集約されないこと。
私も官僚論に関心を持ち、発言もしています。いつか、まとめたいのですが。制度と運用の現状(全体像)を書いた、良い資料がなくて困っています。(5月6日)
日本経済新聞「経済教室」は17日から「公務員改革」を連載しています。ただし、公務員制度の改革全体像ではなく、個別の問題についてです。

伝道師活動余話

かつてこのHPで、私の「副業」=地方財政の伝道師活動に関して、鎌田浩毅京大教授の文章を紹介しました。先生から、メールをいただきました。
鎌田先生は、「科学の伝道師」と名乗っておられるのです。先生の活動は、一般の方や小学生まで、出版物もたくさんです。私の活動とは、比較になりません。私の活動は、「同業者」「関係業界」相手が多いですから。
「自分の講演を録画して、講演術を自らを磨かれた」ことも、尊敬します。私も試みたことがあるのですが(といっても、自分では見たくないのに、撮ってくださる方も多いので)、とても見られたものではありません(反省)。

伝道師活動

私がいそしんでいる「副業」=地方財政の伝道師活動をどう説明したら、みんなに理解してもらえるか。講演会に行ったり本を書いたりすると、「変わり者」といわれるので、考えていました。自分では正しいことをやっていると思っているのですが、どうも今の霞が関では違うようです。
先日、東大出版会のPR誌「UP」2004年12月号に、鎌田浩毅京大教授の文章を見つけました。「基礎科学のフロンティアとしてのアウトリーチ」です。
「理系ではアウトリーチが問題になっている。アウトリーチ(outreach)とは、知らない人に手を差しのべて、情報を伝えることをいう」「アウトリーチの目的は、研究資金の獲得・後継者の育成・一般社会に認知してもらうことの3つである」と書かれています。
そうなんです。私のやっている伝道師活動は、目的が少し違いますが、これなんです。専門分野の研究者が社会で理解を得るためには、これが必要なんです。しかも、社会を変えようとする官僚の方が、科学者よりアウトリーチ活動は重要なはずです。
「寄らしむべし、知らしむべからず」とか「俺がやっていることは正しい。理解できない奴がバカだ」では、通じませんよね。社会での理解を得るためには、理解者を増やさなければなりません。さらに、時代の流れ、流行語になるまではやらせないと、改革は進みませんよね。

1 官僚の発言

1 官僚の発言
(制度の維持と改革と)
官僚には、2つのことが期待されます。一つは、法律などで決められた制度の運用です。もう一つは、その制度の問題点や漏れ落ちている事項を見つけ、改革あるいはその提言をすることです。
その点、最近の官僚は「発言」が少ないと思います。それも、自分の名前での発言が少ないと思います。書かれている多くの「論文」は、制度の解説であって、未来に向けた改革論議は少ないです。時には、「文中、意見は私見である」と書いてあっても、文中に「意見」が出てこない「論文」もあります。

(発表の場)
官僚が自説を述べる場所も、案外ありません。各省が出す白書は、匿名です(この点、新聞の社説とよく似ています)。
各省が出版・関与している雑誌(政策情報誌)には、2種類有ります。私が面白いと思っているのは、「外交フォーラムESP」です。その他の多くは、提言や分析でなく、単なる解説が多いようです。
もう一つは、専門の商業雑誌です。これは「業界向け」ですので、読者の面から制約があります。改革論議よりは、制度の解説や予算の紹介が多くなります。一定の読者(購買層)が必要です。
私が専門にしている地方行政では、地方団体や地方公務員、大学などの研究者の需要があり、いくつもの雑誌があります。しかも、その性格上、予算の紹介ではなく、制度の解説と議論を内容とすることができます。
しかし、他の官庁では、そう多くはないのです。国家公務員制度や公務員管理、国の行財政改革について、これはという発表の場、あるいは発表している論文は見あたりません。
もう一つは、総合雑誌例えば「中央公論」等でしょう。
富山県庁にいるとき、「デルクイ」という、県職員による政策情報誌を創りました。実名・写真入りで、職員が自説を書くのです。かつ、市販しています。「デルクイ発刊趣意」(『デルクイ』創刊準備号1996年)に、私の意図を書いてあります。